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アングル:H&Mやザラ、ブラジル森林破壊に関連の綿花使用か NPO指摘

ロイター / 2024年4月12日 18時42分

 4月11日、 ファストファッション大手H&Mやザラに衣料を供給する工場が、ブラジルのセラード地域での環境破壊や土地収奪と結びついた綿花を購入していることが、非営利団体(NPO)アースサイトの調査で明らかになった。写真はザラの買い物袋を提げた女性。スペイン・ビルバオで3月撮影(2024年 ロイター/Vincent West)

Jack Graham Andre Cabette Fabio

[ロンドン/リオデジャネイロ 11日 トムソン・ロイター財団] - ファストファッション大手H&Mやザラに衣料を供給する工場が、ブラジルのセラード地域での環境破壊や土地収奪と結びついた綿花を購入していることが、非営利団体(NPO)アースサイトの調査で明らかになった。セラードは森林破壊が急増し、貴重な生態系が危機に瀕する「生物多様性ホットスポット」だ。

世界の関心は、アマゾン流域での牛の畜産や大豆栽培による森林伐採に集中している。しかしブラジル国立宇宙研究所(INPE)のデータによると、比較的知名度の低いセラード熱帯サバンナでは、衛星により森林破壊を検知する「森林破壊アラート」が2023年に44%急増した。

アースサイトの調査によると、ブラジルが世界最大の綿花輸出国を目指す中、綿花が森林伐採の「主犯」となっている。報告書は「欧州と北米の企業と消費者は、新たな方法で破壊を進めている。何を食べるかではなく、何を着るかによってだ」と指摘した。

<ベター・コットンに欠陥>

アースサイトの研究者らは、セラードでの土地収奪と違法な森林伐採に関連しているとする2つの綿花生産業者と、H&Mやザラなど世界主要ブランドに衣料品を供給するアジアの製造業者との間で交わされた数千件の出荷記録を追跡した。

こうした衣料品工場はバングラデシュやインドネシアなどの国々にある。

報告書によると、持続可能な綿花生産を目指すファッション業界の団体「ベター・コットン」の持続可能性基準には「根本的な欠陥」があり、環境犯罪に関与するブラジル農場から消費者が綿花を買っていないことを保証するものになっていない。

ベター・コットンは、持続可能性と労働慣行に関する基準を満たした生産者を認証するもので、世界の綿花生産の22%をカバーしているという。

H&Mはアースサイトの調査結果について「非常に心配だ」とし、ベター・コットンに第三者機関による調査を求めたと明らかにした。ベター・コットンの広報担当者は、調査結果を分析中だと述べた。

ザラを所有するインディテックスの広報担当者は、ベター・コットンは土地収奪や森林伐採などの行為を「厳しく禁止」していると説明。ベター・コットンに関する今回の指摘を「極めて深刻に受け止めている」と述べ、調査結果を見守ると約束した。

<セラードの綿花ブーム>

ブラジルはセラードでの生産急増を背景に、綿花輸出が過去10年間で急激に増加した。セラードは、自然の植生の約半分が農地に変わり、森林破壊を制限する法律がアマゾンに比べて緩い地域だ。

セラードのサバンナはメキシコよりも広い面積を持ち、炭素を吸収・蓄積して地球温暖化を抑制するのに不可欠な森林その他の植生を抱える。ハイイロオオカミやオオアリクイといった絶滅危惧種も生息する。

この地域は南米の大部分にとって重要な水源でもあるが、環境研究者らによると大量の水分を必要とする作物の栽培が広がったことで、伝統的な地域社会への水供給が脅かされている。また地域住民は何世代にもわたる放牧地から追い払われた。

セラードの農地拡大は、バイーア州の一部を含むマトピバ地域に集中している。ここは綿花、大豆、トウモロコシなどさまざまな農家を擁する巨大地所アグロネゴシオ・エストロンドの拠点だ。

エストロンドは過去に、武装した警備員による検問所を設置し、村人の移動や活動を制限していたとアースサイトは指摘している。バイーア州検事総長はエストロンドを土地収奪容疑で提訴し、現在係争中だ。エストロンドは、所有地での操業はブラジルの環境法に従っていると主張した。

近隣に住む村人らは、高原に農地が広がり、保存状態の良い川縁でしか放牧ができなくなったと訴え、長年にわたり不満を抱いてきた。

代々この地域に住む農民のアダン・バティスタ・ゴメスさん(62)はトムソン・ロイター財団に対し、2019年に甥がエストロンドで働く男に足を撃たれたと語った。警備員に捕まえられた牛を取り戻そうとして農地に踏み入った後だという。

「やつらは私たちを怖がらせ、土地をあきらめさせるためにやったのだ」とゴメスさんは言う。

<農薬の大量使用>

自然保護団体ネイチャー・コンサーバンシーの農業ディレクター、デービッド・クリアリー氏は、綿花が水源に与える影響や、近隣コミュニティが保護されていないことが大きな懸念事項だと言う。

綿花栽培における農薬の大量使用も、水供給に対する脅威のひとつだ。ブラジルは世界最大の農薬購入国で、他国で禁止されている化学物質の使用を許可していることで悪名高い。

一方でクリアリー氏は、農業事業主導の開発は、この地域に重要な経済的利益をもたらしてきたのも事実だとし、ブラジルで最も貧しい農村部における乳幼児死亡率の低下を指摘した。

アースサイトは、「エシカル・サプライ・チェーン」(倫理的な供給網)に関する法律の拡大と強化が必要だとしている。例えば欧州連合(EU)の森林破壊規制では、綿花がカバーされていない。

また民間の取り組みであるベター・コットンが機能していないと批判。「バイーア州での土地の権利侵害や環境破壊と結びついた綿花に、ベター・コットンのラベルが貼られていた」とした。

ベター・コットンの広報担当者はアースサイトが提起した問題に対処する上で、「政府の支援」と法の執行が急務だと述べた。

しかし村人にとって、農地拡大による被害は既に取り返しのつかないものだ。ゴメスさんは「農作物だらけになり、森林は全て伐採された」と嘆いた。

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