「依存症患者の多くが選ぶ」と医師も指摘のストロング系酎ハイ 一部メーカーが撤退の動き、厚労省ガイドラインで注目集まる
J-CASTニュース / 2024年2月25日 12時0分
アサヒビール販売のストロング系缶チューハイ
アルコール度数9%などと高く酔いやすい低価格のストロング系酎ハイについて、大手メーカーの一部が撤退の動きを進めていると報じられ、ストロング系とアルコール依存症との関係がネット上で注目されている。
厚労省の検討会では、医師が「依存症患者の多くが選んでいる」と明かしており、健康障害の温床になっている可能性もある。国は、今後どのようにストロング系に対処していくのだろうか。
アルコール度数や飲酒量より「純アルコール量」に着目
産経新聞が2024年2月19日にウェブ版で報じたところによると、アサヒビールとサッポロビールが1月に入って、アルコール度数8%以上の缶酎ハイの新商品を販売しない方針を示し、キリンビールもストロング系の販売方針について検討を始めた。
若者の飲酒離れなどから、ストロング系の市場が徐々に縮小していることを主な理由に挙げた。そんな中で、厚労省がこの日に飲酒のリスクや体への影響をまとめた初のガイドラインを発表したことで、今後は、キリンとともにストロング系のシェアが多いサントリーの対応にも注目が集まっているとしている。
厚労省が公式サイトで発表したのは、「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」だ。
そこでは、アルコール度数や飲酒量などよりも、「純アルコール量」という指標に着目した。アルコール度数と飲酒量、アルコール比重0.8の3つを掛けて算出する値だ。例えば、大腸がんの発症リスクを高める目安は、1日当たりビールのロング缶1本に当たる約20グラム以上などとしている。
ストロング系のお酒は、ロング缶1本だけで約40グラムに達するものもあるとされており、これを毎日飲み続ければ、かなりの高リスクになるわけだ。
ストロング系酎ハイは、2010年ごろから需要が拡大してきたが、ガイドラインをまとめた厚労省のアルコール健康障害対策推進室は2月20日、J-CASTニュースの取材に対し、需要拡大した数年後にストロング系が社会問題になったことも作成のきっかけになったと明かした。
「メーカーの意識や判断になるので、特にコメントはない」
「ストロング系だけにこだわって作ったわけではありませんが、飲み会などに使われるなどして健康障害が発生していたのは事実です。ただ、お酒自体が悪いのではなく、あくまでも飲み方の問題だと考えています。適切に飲酒行動をしてもらおうと作ったのが、今回のガイドラインです。純アルコール量のグラム数に着目して、健康管理につなげてほしいと考えています」
21年3月に閣議決定され、ガイドライン作成も盛り込んだ国の第2期アルコール健康障害対策基本計画には、メーカーが容器に純アルコール量を表示することを速やかに検討するとなっていて、大手ビールメーカー各社が表示する取り組みを順次進めていると報じられている。
ストロング系から撤退の動きが一部で出ていることについて、アルコール健康障害対策推進室では、「メーカーの意識や判断になりますので、こちらからは特にコメントはありません。最近は、微アルやノンアルなども出て来て、流れが変わって来ていることもあると思います」と話した。
医師らは「何とかしないと」「非常にリスク高いことは実感」
ストロング系酎ハイについては、基本計画を巡って議論した厚労省のアルコール健康障害対策関係者会議で、医者らの委員から厳しい声が相次いでいた。
議事録によると、20年9月4日の会議では、ジュースのような缶のストロング系酎ハイはコンビニで 200 円あれば買えてしまうとして、「これは何とかしないと」と危機感を訴える声が出た。また、別の声として、依存症を診ている医者と話をする機会があり、ストロング系は「ノックアウトされる」という表現を患者たちが使うとの報告も出ていた。
23年7月5日に行われた厚労省の飲酒ガイドライン作成検討会では、座長の松下幸生国立病院機構久里浜医療センター院長が「依存症の患者さんは多くの方が9とか、かなり高いアルコール度数を選んでいらっしゃるので、非常にリスクが高いということは我々もふだんから実感しているところです」などと述べていた。
アルコール依存症患者との関係がクローズアップされたことで、今後さらにストロング系のあり方が議論になりそうだ。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)
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