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米共和党に「変節漢」続々、予備選圧勝のトランプ氏に露骨な接近 義理人情外れた振る舞いに冷ややかな視線【ワシントン報告⑮米大統領選】

47NEWS / 2024年4月23日 10時0分

1月23日、米ニューハンプシャー州ナシュアで演説するトランプ前大統領(AP=共同)

 バイデン米大統領とトランプ前大統領の再対決が確定した11月の大統領選は、共和党側でトランプ氏にすり寄る動きが露骨だ。トランプ氏の強さが昨年以降、世論調査で示され、それが予備選の圧勝で証明されたことで、求心力は加速した。権力に近づこうとするのは政治家の常だが、その「変節漢」ぶりは日本以上にあっけらかんとしているように見える。ドライな米国とはいえ、主義主張の一貫性や義理人情を外れた振る舞いには冷ややかな視線が伴う。(共同通信ワシントン支局長 堀越豊裕)

 ▽「裏切り」の議員

 「米国は南部の国境を閉じてくれる大統領を必要としている。国をまとめてくれる大統領を求めており、だからトランプが必要なのだ」

 南部サウスカロライナ州選出のスコット上院議員は1月、トランプ氏の支持者集会に参加し、支持を表明した。自らも共和党の指名候補争いに出馬し、ライバル同士の関係だったが、討論会などではトランプ氏への批判を慎重に避け、昨年撤退を決めた。今ではトランプ氏の側近のように振る舞い「最大の代弁者」(ウォールストリート・ジャーナル紙)と呼ばれる。副大統領候補の一人とされる。


トランプ前米大統領(左)と集会に登壇したスコット上院議員(右)=2月、米サウスカロライナ州(ゲッティ=共同)

 もともと下院議員だったが、トランプ氏と党指名を最後まで争ったヘイリー元国連大使がサウスカロライナ州知事だった2012年、欠員となっていた州選出上院議員にスコット氏を任命した。恩をあだで返された形のヘイリー氏陣営は「(裏切りの)ユダ上院議員」とこき下ろした。

 任命された当時、スコット氏は南北戦争後に南部から選出された初めての黒人上院議員だった。サウスカロライナは人種が大きな意味を持つ。バイデン氏が2020年選挙の民主党予備選を制したのは、序盤のサウスカロライナ州予備選で勝って勢いを付けたためで、背後には黒人の有力下院議員クライバーン氏の力が大きかった。トランプ氏も本選での黒人票を見込み、スコット氏を副大統領候補に置く可能性はある。


米テキサス州の選挙イベントで演説するヘイリー元国連大使=3月4日(AP=共同)

 ▽「毎日が選挙活動」

 同じサウスカロライナ選出で、スコット氏の同僚に当たるグラム上院議員の動きも複雑な受け止め方をされている。共和党はウクライナ支援より、不法移民を防ぐ国境警備の強化を訴える意見が強い。外交に明るいグラム氏は本来、ロシアが侵攻したウクライナ支援に前向きな立場だったが、トランプ氏が支援に消極姿勢を示すと、急きょ同調し「(メキシコとの)国境警備に目を向けるべきだ」と節を曲げた。


トランプ前米大統領(左端)と共に集会に登壇した(右から)グラム上院議員とスコット上院議員=2月、米サウスカロライナ州(AP=共同)

 グラム氏の転向は、今に始まったことではない。2016年大統領選でトランプ氏が勝利した頃は、国際協調に後ろ向きなトランプ氏をたしなめる発言もあったが、次第に取り込まれ、最近はトランプ氏との距離の近さを自らの政治力としている。見通しが立たないウクライナ支援協議が一時、大詰めを迎えた際も、「トランプ氏は断固支援に反対している」とメッセンジャー役を務め、支援策を頓挫させた。

 スコット氏やグラム氏を批判することはたやすいが、選挙が最優先という議員一般の行動原理を考えればやむを得ない面もある。連邦議会議事堂を歩くと、議員はまことに多忙だ。週末地元に帰り支援者を回るため、平日は予定をびっしり詰める。有権者の動向には極めて敏感。特に任期2年の下院議員は「毎日が選挙活動」(下院スタッフ)と言われ、共和党議員にとってトランプ氏の支持票は死活的に重要である。


米ワシントンの連邦議会議事堂(ロイター=共同)

 ▽筋を通す

 それでも無節操な態度は見透かされる。共和党の指名争いに加わったニュージャージー州のクリスティー前知事は2016年選挙でトランプ氏を支持したのに、今回は批判に転じた。だが支持は広がらなかった。党上院トップのマコネル院内総務も、トランプ氏支持を表明した。口も利かない仲だっただけに意外感を持って受け止められたが、「トランプ氏が圧勝したという予備選の結果を踏まえ、党の結束を優先した」(民主党系の選挙アナリスト)とみられている。


米上院本会議場を後にする共和党のマコネル院内総務(左)=2月28日、ワシントン(AP=共同)

 すり寄りが目立つ中、議会襲撃事件でトランプ氏と決別したペンス前副大統領の3月の不支持表明は、筋を通した形で逆に目を引いた。


トランプ米大統領(左奥)を前に話すペンス副大統領(肩書はいずれも当時)=2020年3月、ワシントン(AP=共同)

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