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【写真家レビュー】iPhone 15 Pro Maxは買えばきっと多幸感が得られるモデル

ASCII.jp / 2023年11月17日 8時30分

今回レビューしたのはiPhone 15 Pro Max

 今年も新しいiPhoneが顔を揃えた。世間的なトピックはついにLightning端子と決別し、USB-C端子を備えたことだろうか。実は妻がiPhone 15(つまりベーシックモデル)を購入したのだが、側から見るとやはり便利そうである。またiPhone 15 Pro/Pro Maxは、外装に火星探査機に使われているものと同じチタニウム合金が採用されるなど、モノとしての魅力も高い。そのiPhone 15 Pro Maxのカメラ機能(静止画)を今回、深掘りした。

選べる解像度 - 12MP、24MP、48MPの使い分け

 メインカメラが48メガピクセル(4800万画素)なのは、iPhone 14 Pro/Pro Maxと変わらないが、記録画素は4画素をひとつに束ねた12メガピクセル(1200万画素)のほか、新たに24メガピクセル(2400万画素)も選択できる。これはiOS 17.0.1にアップデートすることでiPhone 14 Pro/Pro Maxでも可能だ。形式はProRAWかHEIFになり、容量も食うが48メガピクセルのフル画素での保存もできる。レタッチで理想の仕上がりに追い込んだり、あまりないと思うが大きくプリントをするのに適している。ちなみに広角カメラや望遠カメラで撮影時は12メガピクセルで記録される。

24/28/35mmそれぞれのオン・オフや、どれをデフォルトにするかは設定画面で選択できる

 そのメインカメラの焦点距離は、従来通り24mm相当。そこにiPhone 15 Pro/Pro Maxはオプションとして1.2倍の28mm相当と、1.5倍の35mm相当を追加できるようになった。「1x」のボタンをタップすると、「28mm」「35mm」に切り替わる。

メインカメラの1x(24mm相当)で撮影。レトロで重厚なビルを、遠近感を生かした構図で切り取ってみた

 この機能が使えるのは24メガピクセルを選択時で、もちろん光学ズームではなくデジタルズームなのだが、28mm相当や35mm相当でも画質の劣化はまったく感じられない。この28mm相当や35mm相当でもスナップ撮影に使いやすく、写真愛好家が常用することの多い焦点距離でもある。僕は35mm派なので、もしiPhone 15 Pro/Pro Maxを購入したら本来の24mm相当をオプションで残しつつ、デフォルトは35mm相当に設定しようと思う。というかこの機能だけでiPhone 15 Pro/Pro Maxが欲しい。

35mm相当で撮影。壁をこの構図で切り取ると、24mmでは遠近感で歪んでしまうが、35mmでは素直に切り取れる
レンズを28mm相当、縦横比を1:1、フォトグラフスタイルを「ドラマチック(暖かい)」にしてみた。画角は少し狭まり35mmに近く、ややレトロなトーンに仕上がった

「ここぞ」というシーンで望遠を使うなら iPhone 15 Pro Maxを選ぶべき

 望遠カメラはProこそ従来通りの3倍だが、Pro Maxは「テトラプリズム」という蛇腹式の反射機構により5倍(120mm相当)にスペックアップ。端末のスペースを有効活用することにより、画質につながるセンサーサイズもiPhone 14 Pro Maxより25%大きくなっているという。120mm相当は交換レンズの世界でいえば“中望遠”にあたり、ポートレートやスナップで扱いやすい焦点距離だ。実際5倍で街角などを切り取ってみたが、私物のiPhone 13 Proに搭載されている3倍よりハマる状況が多いように感じた。画質もメインカメラにひけを取らず、センサーサイズの大型化が生きている印象を受けた。ProとPro Maxで悩む人も多いかもしれないが、望遠を使う機会が多い、あるいは「ここぞ」という場合で欲しいという人は、Pro Maxを選ぶべきだろう。

都心に残る印象的な路地で、望遠カメラによる圧縮効果を狙った。映画のワンシーンのような一枚にしたくて、フォトグラフスタイルを「ドラマチック(暖かい)」にした
こちらも望遠カメラ。こういう場面ではiPhoneの被写界深度(ピントの合う範囲)の深さが生きてくる

 またデジタルズームはiPhone 14 Pro/Pro Maxの15倍(360mm相当)から、iPhone 15 Pro Maxでは25倍(600mm相当)まで伸びた。25倍では直線などは解像するものの、拡大すると人物の顔などはかなり崩れてしまう。しかしiPhoneの画面サイズで鑑賞するぶんには破綻も目立たず、たとえばスポーツの試合における選手やライブのステージを撮り、SNSに投稿するといった目的ならアリだと思う。

左は望遠カメラ、右は同じ位置から25倍で撮影。25倍ではさすがにディテールも崩れ気味だが、よくぞここまで解像するなぁとも思う

 一方、13mm相当の超広角カメラはiPhone 14 Pro/Pro Maxとスペックに変化はない。iPhone 14 Pro/Pro Maxやそれ以前のモデルでは、逆光時のフレアが気になっていた。太陽が画面に写り込みやすい超広角では、とりわけそれが顕著だった。そこでiPhone 15 Pro/Pro Maxでは新たなナノスケールコーティングによってフレアを抑えた……とのことだが、角度によってはやはり影響が出てしまう。スマートフォンのレンズとしては優秀だと思うが、いずれAIでフレアやゴーストは自動処理されるようになるのだろう(と希望的観測)。

超広角カメラは構図を作るのが難しい画角だが、被写体に一歩二歩寄るのがコツ。あと構図の端まできっちり意識することだ
同じ位置から13mm(0.5倍)、24mm、28mm、35mm、48mm(2倍)、120mm(5倍)で撮影。10倍近いズームレンジをカバーできる。この写真は13mm(0.5倍)で撮影
24mmで撮影
28mmで撮影
35mmで撮影
48mm(2倍)で撮影
120mm(5倍)で撮影
これぞまさに「次世代のポートレート」。まるでミラーレスカメラ+大口径レンズで撮ったような、自然なボケ味だ。以前のポートレートモードは背景からピントを合わせる範囲を切り抜くような印象だったが、まったく違うアルゴリズムなのだと思う

人物や犬・猫を認識すると深度情報を自動取得 「次世代のポートレート」が大きなトピック

 カメラ機能の大きなトピックは、通常の撮影でも人物や犬・猫を認識すると深度情報を取得。自動的にポートレートモードと同じ効果が得られることだ。しかも背面カメラだけでなく、フロントカメラも同様。アップルでは従来、機能説明の中で「ポートレートモード」という言葉を使っていたが、今回はその部分を「次世代のポートレート」としている。一応モードの中に「ポートレート」の項目は残っているが、あえて手動で選ぶ必要はないし、アップルもそう考えているフシがある。

これも「次世代のポートレート」で撮影。ピントとボケをかたちで切り分けるのではなく、距離で処理しているのがよくわかる
あえて「ポートレートモード」を選ぶとすれば、エフェクトが欲しいときだろうか。何の変哲もない公園の花壇を「ステージ照明」でまったく別世界のように仕上げてみた

実写結果には本当に驚いた! 静物撮影でも深度情報

 また静物で自動的にポートレート撮影にならない場合でも、深度情報があれいれば画面に「f」マークが現れる。これをタップすると前後がボケたポートレート撮影になり、ボケ具合をコントロールすることができる。従来のポートレートより焦点距離の選択幅も広く、後から効果のオンオフが選べるのもいい。以前のiPhoneシリーズはポートレートモードを選んでも、適用できる距離が限られており、被写体とボケの境界も不自然になりがちだった。初期の頃などは“クソコラもどき”を連発していた記憶もある。なので今回の実写結果には本当に驚かされた。

あまり活用している例を聞かないフォトグラフスタイルだが、ポートレートがここまで進化すると、仕上がりを追い込んでいく手段として生きてくると思う。これは「ノアール」で撮影
ちょっと意地悪というか、処理能力が問われるような状況も撮ってみた。左が通常撮影、右が「次世代のポートレート」。拡大すると不自然なところもあるが、一見するとわからない
下弦の月がきれいだったので、望遠カメラで撮影。「ナイトモード」で露光時間は3秒だったが、驚くほどシャープに撮れた

秒単位の撮影でも三脚を使って撮影したかのよう シャープな「ナイトモード」

 「ナイトモード」も今回驚かされた機能のひとつ。レンズが明るいためか、よほど暗くないとオンにならないのだが、強力な手ブレ補正のおかげで秒単位の撮影でも、まるで三脚に立てて撮影したようにシャープだった。たとえば函館山からの夜景のような、暗い遠景の中に街明かりが点在するような場面で威力を発揮すると思う。函館山に行かれる方は僕に代わってぜひお試しください。

これも「ナイトモード」……というつもりで撮ったのだが、ふつうにシャッターが切れた。ちなみに2倍(48mm)相当、つまりメインカメラの中央部を切り出しているのだが、画質にはまったく不満がない

 操作面でのトピックは、従来側面にあった「着信/サイレントスイッチ」が、Pro/Pro Maxは「アクションボタン」に変わったこと。長押しで着信音のオンオフができるのだが、これに好きな機能を割り当ててられる。その中に「カメラ」もあり、ワンプッシュでカメラを起動できるのだ。

選べる機能はアクセシビリティ、ショートカット、サイレントモード、カメラ、フラッシュライト、フォーカス、拡大鏡、翻訳、ボイスメモの9種類。海外に行ったときは翻訳が役に立ちそう
側面の一番上に見えるのがアクションボタン。ケースを装着すると押しにくい気もするが、魅力的な機能ではある

取り回しの良さもiPhoneシリーズの魅力 買えばきっと多幸感が得られるモデル

 お借りした端末を返却するにあたり、撮影した写真をAirDropで自分のMacBook Proに転送したのだが、こうした取り回しの良さもiPhoneシリーズの魅力。というわけで身の回りがどんどんアップル製品で占められていくのだが、それはともかくMacBook Proで写真を開くとシャープネスとディテールのバランスが絶妙で、意味が伝わるか心配だが「写真らしい写真」という印象を受けた。スマートフォンによってはレンズやセンサーの小ささを補うため、シャープネスをかけすぎて輪郭などのディテールが荒れる機種もある。撮った写真はどこかCGっぽさや、いかにもデジタル処理をした感じがしてしまうのだ。

 しかしここ最近のiPhoneシリーズは、写真としての美しさや見やすさをよく研究しているように感じる。以前はHDRがやや効き過ぎ、写真としての力強さや深みが足りないと感じるときもあったが、今回iPhone 15 Pro Maxを使って、iPhoneシリーズの絵づくりの巧みさを改めて感じた。それだけで記事が1本書けてしまうので割愛したが、ProRAWからレタッチで細かく追い込むと、ミラーレスカメラや一眼レフで撮影したような深みのある写真に仕上げることもできる。

 静止画だけでも魅力を紹介しきれないiPhone 15 Pro Maxだが、動画はさらに多彩な機能を搭載。プロの撮影でも十分通用するスペックを備えている。ドローンやジンバルの普及もあり、たぶん多くの現場で導入されていくだろう。18万9800円~という価格が高いか安いかは人それぞれだと思うが、外装やカメラ以外の機能も含めて、買えばきっと多幸感が得られるモデルだと思う(欲しいなぁ)。

 

筆者紹介――鹿野貴司

 1974年東京都生まれ、多摩美術大学映像コース卒業。さまざまな職業を経て、フリーランスの写真家に。広告や雑誌の撮影を手掛けるかたわら、精力的にドキュメンタリーなどの作品を発表している。

 写真集に『山梨県早川町 日本一小さな町の写真館』(平凡社)など。公益社団法人日本写真家協会会員。

 

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