三池監督も認めたiPhone 15 Proの実力『ミッドナイト』制作秘話
ASCII.jp / 2024年3月7日 7時30分
アップルが手塚治虫氏原作の漫画『ミッドナイト』を実写映画化。全編iPhone 15 Pro/iPhone 15 Pro Maxで撮影した約20分のショートフィルムを、Apple JapanのYouTube公式チャンネルから全世界に向けて公開しました。
手塚治虫の隠れた名作が初の映像化
『ミッドナイト』は手塚治虫氏が1980年代後半に「週刊少年チャンピオン」で連載していた作品です。深夜の街を走る無免許のタクシードライバー、自称“ミッドナイト”が出会う、奇妙な乗客の姿を描いた大人のヒューマンドラマ。今日まで映像化されてこなかった漫画が、三池崇史監督によるアクション満載の短編映画になりました。
百聞は一見にしかず。iPhone 15 Proのカメラが“プロレベル”の実力を見せつけた、迫力の映像をまずはご覧ください。
三池監督が語る「プロ用カメラとしてのiPhoneの魅力」
3月6日には都内で「iPhoneで撮影 「ミッドナイト」プレミア試写会」が開催され、舞台挨拶のステージには三池監督をはじめ、メインキャストの賀来賢人さん、加藤小夏さん、小澤征悦さんが登壇しました。撮影監督の北信康氏が製作秘話を語るトークセッションも開催されました。
iPhone Proシリーズのカメラは、年々大きな進化を遂げてきました。最新モデルのiPhone 15 ProシリーズはApple ProResコーデックで最大4K/60fpsのLog撮影に初めて対応しました。
Log撮影とは通常の撮影よりも、被写体が持つ色や明るさの情報をより多く記録できるエンコーディング技術です。情報量を豊富に持つ映像をベースに、ポストプロダクション処理(後処理)によってさまざまな情報を加えられることから、Log機能はプロのクリエイターにとって必須といえます。iPhone 15 Proでは、プロにとってまた大きな飛躍を遂げているのです。
本作『ミッドナイト』は、三池監督にとっても初めて全編をiPhoneで撮影した作品です。三池監督はLog撮影に対応するiPhone 15 Proシリーズにより、夜のシーンが続く映像が明るく色鮮やかに撮れたことや、iPhoneのサイズでしか出せないアングルで「手塚治虫先生のパワフルな構図を映像に再現できた」ことについて、会心の笑みを浮かべながら壇上で振り返りました。
iPhone 15 Proには、手持ちでビデオを撮影する際に“手ブレ”を強力に抑える「アクションモード」があります。また特定の被写体にフォーカスを合わせて、ほかの箇所に美しいボケ効果をつける「シネマティックモード」に代表されるクリエイティブな撮影機能もあります。『ミッドナイト』の映像には、これらの機能による効果がさまざまなシーンで活きています。6.7インチのiPhone 15 Pro Maxが搭載する5倍光学ズームもダイナミックなシーンを撮る際に活躍したそうです。
みんなが持っているiPhoneでプロ品質のビデオが撮れる
三池監督はiPhoneによる映像制作の可能性に対して、大きな期待を膨らませていると語っています。
「私の周りにいる多くの映像クリエイターが、すでにいろいろな使い方でiPhoneを活用しています。今回の制作を通じて、私もプロのフィルムカメラとはひと味違う魅力がiPhoneにあることを実感しました。プロ用のシネマカメラとiPhoneが、それぞれに高め合いながら違う方向に進化して、映像制作に関わるクリエイターを支えてくれることを頼もしく感じています。何よりこれほどパワフルなiPhoneのカメラを、今は子どもたちが持っていることにも感銘を受けます。『ミッドナイト』に刺激を受けた若い方が、iPhoneのカメラによる映像制作に挑戦してもらえたら嬉しいですね」
キャストの俳優各位も、それぞれに「おすすめしたいiPhone 15 Proの使い方」があるとコメントしています。
賀来さんはiPhoneの「シネマティックモード」で愛する子どもたちや家族を撮ることにはまっているそうです。「何気ない日常の場面がドキュメンタリー映画のような雰囲気の映像になるのでおすすめです」
加藤さんは愛猫家。「ふだんはiPhone SEユーザーなので、iPhone 15 Proのアクションモードの実力に驚きました。ペットの猫を捕るときにも便利だと思います」
iPhone 15 Pro Maxのユーザーである小澤さんは、ふだんから望遠カメラの5倍光学ズームをよく使うそうです。「今まで大きなカメラとズームレンズを持って旅行に出かけていた方も、iPhone 15 Proがあれば少ない手荷物で、手軽に良いビデオや写真が撮れるはず」
撮影監督が語る「ミッドナイトの映像の見どころ」
プレミア試写会の後には、撮影監督である北信康氏が『ミッドナイト』の撮影秘話を語りました。
北氏は「映像を全編iPhoneで撮る」という条件を課した映画の制作には、「チャレンジングな環境で新しいことをしてみたい」という思いを持って参加したと語っています。北氏は撮影を開始してから、ビデオカメラとしてのiPhone 15 Proシリーズが持つさまざまな可能性を発見したと振り返りました。
「映像のフォーカスが合ってないと、誰にでもわかる“NGテイク”になってしまいます。初めてのiPhoneによる撮影だったので、フォーカスあわせには特に気をつかいました。iPhoneはアクションシーンのフォーカス合わせも正確で、移動する被写体を迅速に追従します。通常、撮影現場にはフォーカスあわせ専任のアシスタントが付くものですが、iPhoneによる撮影は優秀なアシスタントがいつも側にいるような感覚で、カメラを回すことに集中できました」
北氏はコンパクトなiPhoneの「圧倒的なアドバンテージ」を活かして、今までにない映像が撮れたと語ります。例えば加藤小夏さんが演じる「カエデ」が全力疾走するシーンでは、iPhone 15 Proを手に持ったカメラマンがカエデの隣を全力で併走しながらビデオを撮っています。アクションモードで手ブレを強力に抑えた映像も驚きですが、カメラが走るカエデの横から前方へ自然にパン(移動)して、カエデの表情を正面から捉えるシーンは要注目です。
「シネマカメラの場合、役者が走るシーンは事前に決めたコースにレールを敷いて移動車を撮ります。カメラはその位置しか走れません。ハンディサイズのiPhoneだからこそ、カメラが役者の正面に回る斬新な映像が撮れました」
「シネマティックモードがドラマへの没入感をグンと高める」と、北氏はその可能性を高く評価しています。
「人間の目では『フォーカスを合わせたところの他がボケる』という見え方はしません。被写界深度調整は、フレームの中に登場する人物に対して意図的に注目を寄せるためのいわばデフォルメ効果です。フォーカスは物語の核になる表現手法で、効果的に使えばドラマへの没入感が高まります。ボケ効果をカメラワークだけで付けるためには技術が必要です。またドキュメンタリー映像のような作品の場合は、全体にフォーカスを合わせて撮る場合が多くありますが、iPhone 15 Proのシネマティックモードでは後処理でフォーカス調整ができます。撮影時にフォーカスの受け渡しが上手くいかなくても後処理で付けることができたり、ドキュメンタリー映像に物語性を足せる、とても魅力的な機能だと思います」
iPhoneはコンパクトで軽く、取り回しがよいことから「映像クリエイターによる感覚的な表現を助けるツールになる」と北氏は可能性に期待を寄せています。プロの映像クリエイターの間では、もはやiPhoneが撮影前段階のロケハン(ロケーション・ハンティング)にも欠かせないツールになっているそうです。
アップルのコンテンツサービスによる「コラボ展開」も続々
全編の映像をiPhoneでつくった「Shot on iPhone Movie」は海外でも続々と発表されています。アップルのYouTube公式チャンネルに追加される作品もぜひご覧ください。
短編映画『ミッドナイト』の公開に合わせて、Apple TVでは「ミッドナイト」のショートフィルムと「ミッドナイトの舞台裏」を無料で配信しています。
Apple Musicには今後、遠藤浩二氏が手掛けた9曲収録のサウンドトラック『ミッドナイト』のドルビーアトモスによる空間オーディオ版が独占配信される予定です。
App Storeは『ミッドナイト』の制作現場で使われたアプリのコレクションを紹介しています。
Apple Booksでは手塚治虫氏による『ミッドナイト』の原作・全6巻が読めます。アップルには今後も本作のほかのストーリーも映像化してほしいですね。
筆者紹介――山本 敦 オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。
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