激安で欧州旅がしたいなら、キングオブLCC「ライアンエアー」の“お作法“を知っておこう!
ASCII.jp / 2024年5月15日 7時30分
スペイン・バルセロナで開催されていたMWC Barcelona 2024のため、日本からはスリランカ航空を利用したと以前の記事(欧州までカレー三昧できるスリランカ航空の旅)でお伝えしましたが、欧州内の移動には、格安航空会社LCC(Low cost carrier)を使っています。
費用節約という面もありますが、ヨーロッパはLCCのほうが路線や便数がFSC(Full Service carrier)よりも多く、大手航空会社のFSCをを選ぶよりスケジュールの調整がしやすいという利点があるから。例えばバルセロナ発→ロンドン着で検索すると、結果にはLCCがずらりと並びます。
ルールが厳しいと言われる欧州LCC Ryanair、Vueling、easyJetの3社に乗ってみた
それだけ手軽な移動手段としてLCCが欧州に根付いているわけです。日本でもすっかりLCCが普及し、「シートピッチが狭い」や「預け荷物は別料金」、「チェックイン時間に厳しい」といった「お作法」も認知されてきていますが、欧州のLCCでは日本以上に「LCCらしさ」が突き詰められています。
バルセロナの旅では、ロンドン(イギリス)からセビリア(スペイン)行きを「Ryanair(ライアンエアー)」、セビリアからバルセロナ行きを「Vueling(ブエリング航空)」、バルセロナからロンドン行きを「easyJet(イージージェット)」とという、3つのLCCを使って移動しました。そこで今回は、ひと味もふた味も違う欧州のLCC事情を搭乗レポートとあわせてお伝えします。
(次ページ:欧州LCCは預け荷物だけじゃない!機内荷物棚への持ち込み荷物も別料金)
欧州LCCは預け荷物だけじゃない! 機内荷物棚への持ち込み荷物も別料金
Ryanair、Vueling、easyJetの3社の中でも、Ryanairはひときわ"LCCらしさ"に全振りしており、個人的に「キングオブLCC」の称号を与えているエアラインです。
参考までにRyanairがどれくらい安いかというと、ロンドン発バルセロナ着のチケットを検索すると、原稿執筆時では18ドル(約2820円)というチケットがヒットします。バーゲンがあるとさらに激安のチケットが販売されたりしますが、そこはLCC。この運賃だけで飛べるほど甘くはありません。
まずLCCというと、「預け荷物は別料金」が大きくフィーチャーされます。今回利用した3社とも、当然ながら預け荷物は別料金でした。それに加えて、今回利用した3社は「機内への持ち込み荷物も別料金」です。
これはどういうことかというと、機内に持ち込む荷物のうち、座席の下に入れられる小さなサイズは無料。座席下に入れられず頭上の荷物棚(オーバーヘッドビン)に入れる荷物は有料となっているのです。つまり、最安の価格で購入したチケットでは機内へ小さなカバンしか持ち込めないわけです。
日本や東南アジアのLCCも、機内に持ち込む荷物のサイズや重量には厳しいところは多いですが、今のところ、頭上の荷物棚に入れるサイズが有料というLCCはないと思います。欧州のLCCはそんなところまで別料金にして、チケットを安く見せるのかと感心しますね。
ちなみに今回は3社とも機内持ち込み手荷物に別料金を支払っています。料金はそれぞれ下記のとおり。
Ryanairは想定する荷物に対してオトクな組み合わせのプランがなかったので、それぞれ追加購入。VuelingとeasyJetは航空券購入時に預け荷物がセットになったプランがあったので、そちらを選択し、別途機内持ち込みのぶんを追加購入しました。
料金を見てもらうとわかるとおり、荷物の追加がかなり高い。それでもトータルではFSCで予約するより安いんです。最近ヨーロッパのFSCも、いちばん安い料金は預け荷物なしというケースも増えていますので。
安いとはいえ、預け荷物の重さが3社共に違うので、都度荷物を入れ替えての調整が少しめんどうです。基本的には機内持ち込み10kg、預け荷物20kgで調整はしていたものの、展示会取材は資料やグッズを現地でもらうことも多く、荷物が増えてしまうんですよね。
ちなみに頭上の荷物棚が有料のため、搭乗時の列も「荷物料金を払っている人」と「払っていない人」で分けられ、料金を払っている人の列から先に搭乗できます。そのため、頭上の棚がいっぱいで入れることができないというケースは防げます。
あとから乗ってきた人が空いたスペースに入れているケースも見受けられましたが、中には荷物料金を払っている人が搭乗したら、頭上の荷物棚は閉じてしまって入れにくくするという対応もあるようですので、頭上の棚に入れたい場合はきちんと課金しておいたほうが確実です。
(次ページ:チェックインはオンラインが基本 空港カウンター利用がとんでもなく高い)
チェックインはオンラインが基本 空港カウンター利用がとんでもなく高い
チェックインのお作法も厳しいです。VuelingとeasyJetはオンラインチェックインができ、特にeasyJetは搭乗券もアプリやQRコードが使えるので、預け荷物がない場合はカウンターによる必要がありません。
Ryanairも事前のオンラインチェックインが可能ですが、もしオンラインチェックインをせずに、当日空港カウンターでチェックインをすると有料となります。その料金はなんと55ポンド(もしくは55ユーロ)で日本円だと約1万8000円と運賃より高くなってしまうことも。
最近は公式アプリの電子搭乗券が有効になっていて、モロッコやトルコ、アルバニアなど特定の国の空港発着以外はプリントアウト不要ですが、 搭乗券をプリントアウトする場合、こちらもチェックインカウンターでお願いすると20ポンド(もしくは20ユーロ)で約3900円。A4用紙1枚を印刷するのに4000円近くかかる計算です。
オンラインチェックインは、座席指定を購入していれば搭乗の60日前から、座席指定を未購入の場合は24時間前から2時間前まで可能。Ryanairを使う際は、スマートフォンに公式アプリをインストールして、絶対にオンラインチェックインを忘れないようにしてください。
運航コストを下げるため 羽田から成田くらい離れた空港を案内
また、Ryanairは運航コストを抑えるため、大都市のメイン空港ではなく使用料の安い第2、第3の空港を使う路線が多く、今回のロンドン→セビリアもロンドン発の空港はロンドン・スタンステッド空港。ロンドンと冠がつく空港は6つありますが、ロンドン・スタンステッド空港はロンドン中心部から3番目に遠い空港で、ロンドン・ヒースロー空港からバスで1時間半ほど離れています。直線距離で約66kmなので羽田空港と成田空港くらいですね。
運航にコストをかけないということに関して、Ryanairはさらに細かな点にも注力しています。例えば飛行機に搭乗する際は、使用料がかかるボーディングブリッジは使いません。ターミナルから徒歩でアクセスします。搭乗時のロンドンは雨が降っていましたが、そんなことはお構いなしです。またセビリア空港では、空港のかなり端っこに駐機。当然使用料のかかるバスなど用意されておらず、結構な距離を歩いて移動する必要があり、空港見学でもしているのかと思ったくらいです。
(次ページ:シートにリクライニング機能がない……そのぶん閉塞感もなし)
シートにリクライニング機能がない でも迫ってこないから閉塞感もなし
シートはもちろん狭いです。シートピッチは29〜30インチ(約73〜76cm)で成人男性だと足を組んだりなどは厳しい。ですが以外と閉塞感はありません。というのも、シートにはリクライニング機能がなく、前の座席が迫ってこないためです。つまり搭乗中は皆平等に背筋を伸ばして、お行儀良くしています。このリクライニング機能がないのはVuelingもeasyJetも同じでした。
座席にはテーブルこそありますが、シートポケットはありません。なので緊急時の脱出について描かれた安全のしおりは、シールで座席の背面に貼り付けてあります。またシートポケットがないため、機内誌などもありません。機内誌って座席ぶんすべてあわせると結構な重量になるので、そのぶんの軽量化で燃費向上につながりますからね。
ちなみにシートポケットがないので、モノを入れたまま忘れて降機してしまうというミスも防げます。Ryanair側とすれば忘れ物対応のサポートも減らせるわけです。
機内エンタメや機内Wi-Fiサービス 毛布のサービスはなし
もちろん機内エンターテイメントはありません。機内での時間つぶしは各自で用意。搭乗した機材には機内Wi-Fiを使ったインターネット接続サービスもありませんでした。そのための機材を乗せなければ、やはり軽量化につながり燃費が良くなるわけです。
枕や毛布の無料サービスもありません。これは日本や東南アジアのLCCでも同じ。また機内販売での軽食や飲みものも販売していますが、飲食物の持ち込みは特に禁止されていないので、そのあたりの融通が利くのはありがたいポイント。ただし保安検査を通るのでペットボトルの飲料水などは制限エリアで購入する必要があります。
というわけで、色々と「お作法」が多い欧州のLCC、特にRyanair。快適かと聞かれると返答に困りますが、コストをかけずに移動するという点でいえば十分といったところ。3つの航空会社とも、事前に荷物を購入していたり、チェックイン作業を済ませておけば特にトラブルもなくスムーズでした。
ヨーロッパ内を効率良く移動する場合、どうしてもLCCの利用は避けられませんので、記事を参考にしてチケットを購入してみてください!
訂正とお詫び:表組みを一部修正しました。(2024年5月21日)
この記事を書いた人──中山智(satoru nakayama)
世界60ヵ国・100都市以上の滞在経験があり、海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。
- 「旅人ITライターさとる」(IT系メイン)
- 「さとる・たべる・あそぶ」(旅行・エンタメ系メイン)
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