スズキ新型「GSX-S1000GX」の相手は世界。スズキが出したクロスオーバーへの解答
バイクのニュース / 2024年5月18日 11時10分
スズキの新型「GSX-S1000GX」は、排気量998ccの水冷直列4気筒エンジンを搭載する、アドベンチャースタイルのスポーティなツーリングバイク、いわゆる「クロスーバーモデル」です。一体どのような乗り味なのか、試乗しました。
■熟成ユニットに充実装備の組み合わせ
国内では2024年1月に販売が開始された「GSX-S1000GX」は、スズキのモデルラインナップの中でもスポーツツーリングセグメントで「Hayabusa」と双璧をなすバイクです。最新の電子制御技術を駆使したライダーサポートの数々を投入するのはもちろん、「GX(グランドクロスオーバー)」というジャンルを打ち出したことも大きなポイントだと思うのです。
スズキ「GSX-S1000GX」(2024年型)に試乗する筆者(松井勉)
いま、排気量1000ccクラスのスポーツバイク、アドベンチャーバイク、スタンダードバイクなど合わせると、2021年に世界では20万台程の販売がありました。
その中で「GSX-S1000GX」が属するスポーツクロスオーバーカテゴリーのモデルは3万台と、10%超えのシェアを持つそうで、そのセグメントへのスズキの回答が、「GSX-S1000GT」と「V-STOROM 1050」の良さを併せ持ち、「GSX-S」シリーズのシャーシ、エンジンを活用して造り上げたクロスオーバー、それがこのバイクなのです。
国内でもお馴染みな、BMW Motorradの「S 1000 XR」(271万3000円~)、カワサキの「ヴェルシス1000SE」(204万6000円)、ヤマハの「トレーサー9GT+」(182万6000円)など、前後17インチのスポーツツアラーと同種のタイヤを履き、パワフルな多気筒エンジン、そして所有欲を満たすスタイルや、電子制御セミアクティブサスペンションを含む最先端の装備を併せ持つバイク達です。それぞれ装備や価格で特徴がありますが、「GSX-S1000GX」はどんなバイクなのでしょうか。
スズキ「GSX-S1000GX」(2024年型)車体色は写真のパールマットシャドーグリーンのほか、トリトンブルーメタリックとグラススパークルブラックの全3種類
まずはその価格が199万1000円です。これは「Hayabusa」の215万6000円に次ぐ価格的ポジションです。むしろ、ベースとなっている「GSX-S1000」が143万円、「GSX-S1000GT」が159万5000円であることを考えると、装備充実度が想像できます。
羅列するだけでも、クルーズコントロール、クイックシフター、TFTダッシュパネル、コーナリングABS、勾配に応じてブレーキ配分を適宜変化させる仕組みも含まれています。
パワーモードセレクターでは、パワー特性とトラクションコントロールやABSの介入度を一括して変化させるパラメーターを設定。さらに電子制御セミアクティブサスペンションの特性も変えてくれます。
またサスペンションもソフト、ミディアム、ハードのダンピングはもちろん、ライダーが1人、1人プラス荷物、2人といったように、高荷重時に車体姿勢を補正するプリロードを自動で変化させるオートモードを含む、お好みで調整できるのもウリです。
さらに、不要な姿勢変化を抑えつつ快適性を保ってくれるセミアクティブサスペンションの場合、タンデムライダーが「ピッチングが少なくとても快適!」という印象を聞いたことがあります。これもツアラーとして大切な性能だと思うのです。
ライダーがよりタイヤの接地感を使いやすいよう動かす領域はしっかり設けるサスペンションECUマップを、スズキ独自で作り込んでいるという、その拘りこそこうしたバイクに欠かせない物語だと思うのです。
■各種モード切り替えでその違いを実感
その「GSX-S1000GX」に乗ってみると、「GSX-S」シリーズはじめ「GSX-R」に搭載されてから磨き続けられているエンジンユニットが高いツーリング適性を持つこと、同時にパワーとトルクで加速の悦び、優れたシャーシにより優れた旋回性の楽しさなどが充分に備わっていることがすぐに解ります。「ああ、やっぱり4気筒っていい」と、何度もヘルメットの中でつぶやきます。
直4エンジンユニットにツーリングの快適性と力強さをあらためて実感。電子制御サスペンションの充実したモード設定により、お好みの乗り心地を選択できる
サスペンションのソフトモードを選択した時、道路がまるで舗装したての滑らか路面になったかのような乗り心地の快適さ。タイヤが発するノイズで接地面のザラつきが想像できますが、その接地感はあるのに魔法の絨毯の如き浮遊感なのです。
ミディアムでは普通のサスペンションのようでありながら適度に動き、引き締める部分はダンピングで抑えるような制御で、これまた上質なサスペンションを味わえます。
ハードにシフトすれば車体反応が鋭くなり、乗り心地は相対的に硬くなります。運動性はその分上がる、という解りやすいもの。
高速道路を巡航中、時折、延びたリアサスペンションが戻る時にやや硬く感じる場面がありましたが、気になったのはそんな点ぐらい。結果的にアダプティブダンピングコントロールというハード、ミディアム、ソフト、のデフォルト3つに加え、調整可能なユーザーモードがあることは大きな武器なのです。
また、プリロードも自動調整してくれるオート、デフォルト設定で1人、1人プラス荷物、2人と、合計4つのモードが選択出来ることも大きなポイントでしょう。オートを選択すれば自動で車体姿勢も整えてくれます。
いずれにしても、わからなくなったら減衰もプリロードもすぐにデフォルトにボタンひとつで戻れる機能があるから、その点も安心なのです。
「GSX-S」シリーズのどのモデルもそうであるように、コーナリングが得意でありつつ、しっかりと大らかさも併せ持つような、オトナな走りをするのです。
排気量998ccの水冷直列4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載。双方向クイックシフトシステム標準装備し、クラッチ操作なしでシフトアップ/ダウンが可能
じつは今回、装備を触って体験するのに忙しく、300kmほど走ってもその全てを味わい尽くすことは出来なかったかも知れません。
そのなかで見つかった数少ない気になるポイントは2つ。フロントブレーキのマスターシリンダーの操作感がもう少し上質になれば嬉しいな、という点です。好みのレバー位置にセットすると無効ストロークがやや気になる、というものです。
そして多くのライバルが採用するハンズフリーキーが欲しい、という点です。手動でのウインドスクリーン調整、ハンズフリーキーはコストの兼ね合いで採用しなかったそうですが、他所が採用しているものが全部揃って価格が安い、はお値打ちですが、200万円寸止めの価格からすれば期待は高まります。
ウインドスクリーン(取り付け位置の変更で高さ変更は可能)は快適性が高いのでまだしも、装備で勝負というプレミアムゾーンに向けたグランドクロスオーバーというセグメントだけに、今後の進化にも期待したいバイクです。
いや、それほどすでに素晴らしい乗り味だからこそ、のお願いなのです。
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