超個性派、コンサバへ転進? それでも輝くは失わず【アルファロメオ ジュリエッタ試乗記】【レビュー:アルファロメオ】
CORISM / 2012年2月9日 18時18分
ジュリエッタは、八方美人になったのか?
ふと気がつくと、ブレラや159がラインアップから姿を消し、アルファロメオのディーラーで扱っている車種が最新のミトだけになっていたときには、正直、これでアルファロメオは日本から撤退間近か? と、本気でそう思った。しかし、約30年振りに3代目ジュリエッタが、日本に上陸すると聞いて、なんだかホッした気持ちになったのを覚えている。
しかし、3代目ジュリエッタをひと目見た時、ちょっと愕然とした。アルファロメオ、ひよったな!! そう思ったくらいアクがない・・・。あぁ、アルファロメオも八方美人になったもんだ。アルファロメオのデザインは、好き嫌いのある強烈なメッセージをもつデザインだった。それが、ボクにとってはとても輝いて見えた。そんなアクの強く、多くの人に好きと言われなくても、分かってくれる人が少数であったとしても大好きと言わせればそれでいい、そんな割りきったデザインに共感が持てた。
それには、ワケがある。やっぱり、ヨーロッパでも個性が強過ぎるデザインだと売れないそうだ。シトロエンもコンサバにしたC4がヒットした。同じクラスのジュリエッタも八方美人化するのにも理由があったのだ。ただ、シトロエンがエライのは、より個性を求めるユーザーに対してDSという新しい車種を用意していることだ。万人向けはC4、個性派はDS4を選んでね、ということになる。
八方美人になったと思ったジュリエッタだが、VWゴルフに代表されるような究極のコンサバ派には、十分にアヴァンギャルドな感じらしい。試乗時に同乗していた60歳代の自動車評論家は「あの人をバカにしたようなブレーキランプのデザインは何だ!」とご立腹。いやいや、そこがカッコいいんですから、と話しても意見は徹底して平行線のまま。多少、八方美人になったとはいえ、アルファロメオのスピリットは健在だった。
超円高なのに強気の価格! 高級車としてなら、装備の満足度が高いコンペティツィオーネがベスト
そんな新型アルファロメオ ジュリエッタに搭載されるエンジンは2タイプ。ヨーロッパのトレンドに習いダウンサイジング化された1.4Lターボエンジンと、1750と呼ばれる1.74Lの直噴ターボエンジンを搭載している。
まずは、1.4Lエンジンを搭載したエントリーモデルのスプリント。スプリントの価格は318万円。戦略的価格で、ゴルフなどの競合と比べ安いとアルファロメオ側はいう。しかし、どこのインポーターもそうなのだが、比べる対象は必ず同じ輸入車。そのため、全般的に超円高なのにもかかわらず価格は高めだ。この価格帯では、さすがに身近に感じることができないので、まだまだ輸入車は趣味のクルマ、もしくは高所得者向けとして日本マーケットでは見られてしまう傾向にある。
スプリントは、エントリーモデルだが安全装備など基本的な装備は充実している。ただ、ファブリックのシートの質感がどうにも安っぽく見える。これで、318万円と言われると悩んでしまうだろう。そうなると、40万円高価になるがコンペティツィオーネのレザー/ファブリックのシートが欲しくなる。
さらに、コンペティツィオーネにはキセノンヘッドライト、ヘッドライトウォッシャー、アルミスポーツペダル、パワーシート、シートヒーター、17インチアルミ、スポーツサス、ブレンボ製キャリパーなどなど、装備が格段とよくなり価格差の40万円以上の価値がある。こうなると、満足度が高いグレードはコンペティツィオーネになり、オススメのグレードだ。コンペティツィオーネの価格は、358万円だ。
ドラマちっくな低燃費エンジンは、アルファロメらしさを表現
走りだすと、やはりアルファロメオはいいなぁ、と思う。スペックを見ると最大トルクの発生回転数は2,250と高め。ちなみに、VWゴルフは1,500回転だ。たぶん、このちょっと高めの回転で最大トルクを出していることが影響しているのだろう。エンジンを少し回して走ろうとすると、プーンと気持ちよくエンジンが回ると同時に、回転と比例してトルクの盛り上がりを感じるのだ。それほど速くないのだが、エンジンにドラマがあって気分がよい。論理的で合理的なVWゴルフとは、ちょっと違う点のひとつ。きっと燃費には良くないのだろうが、趣味のクルマとしての情緒的満足感は高い。
エンジンのパワーは、1.4L車が170馬力230Nmを発揮するので、このサイズには十分なスペック。このエンジンに組み合わされるミッションは、ツインクラッチの6速アルファTCT。ミトに搭載されたデビュー当時は、かなりギクシャク感があったが、ジュリエッタに搭載されたものは、洗練さが一段と増して、ストップ&ゴーを繰り返す都市部の走行モードでもスムースに走ることができるようになった。
また、アイドリングストップ機能もあり、燃費を向上させている。都市部の走行モードでは、やはりアイドリングストップ機能は燃費に有効だ。余談だが、昔のアルファのイメージのままジュリエッタのアイドリングストップが作動すると、慣れないと、壊れたのかアイドリングストップなのか不安でドキドキする。
1750エンジンは、235馬力&300Nmと、かなり速過ぎ。最高速は242km/h、0-100km/h加速は6.8秒。1.4Lが最高速218km/h、0-100km/h加速7.7秒という数値を比較しても、超ビュンビュン系FF車であることが分かると思う。この俊足エンジンには6MTが組み合わされている。低燃費ターボゆえに、最高回転数が5,500。低速トルクもあるので、アッというまにレブリミットに入る。そのため、6MTは忙しい。このエンジンこそ、ミッションをツインクラッチのアルファTCTにしてくれないかと思ったほどだ。
イケイケ、グイグイ曲がる爽快なフットワーク!
ハンドリングも結構イケイケな感じがアルファっぽい。かなりグイグイとくる。ちょっとステアリングを切っただけでも、敏感にクルマは反応。そんなに軽くないボディなのに、機敏にノーズをイン側に向ける。さらに、スタアリングを切り足しても、グリグリとイン側に切れ込んでくるシャープさを持っている。一般道だったので、最終的にどうなるかは分からないが、爽快感のあるハンドリングだ。
タイヤやサスペンションの違いによるものもある。スプリントにはないスポーツサスを装着したコンペティツィオーネ、そして専用サスを装着したクアドリフォリオと、微妙にグイグイハンドリング感が強くなるイメージがあった。どのグレードも、カタメの足だが乗り心地が悪くないのも特徴だ。フロントサスのナックル部分やリヤサスのサブフレームをアルミ製にするなどの軽量化が効いているのだろう。
クルマは機能! と、割りきるのなら、やはりドイツ車がいい。でも、それだけではなく好き嫌いが出てもハートに響くデザインや走りという情緒的な要素もクルマを楽しむ上で必要だと考えるのなら、まさに新型アルファロメオ ジュリエッタは最高のパートナーになる。
少し前のアルファロメオは、いろいろあって中級以上のクルマ好きにしかオススメできなかったが、新型ジュリエッタの完成度はドイツ車に限りなく近くなった。しかも、情熱的な魅力は消失していない。気になる信頼性も、3年間の無償メンテナンスプログラムイージーケアや、4年目以降も有償で延長保証されるエクステンデッドワランティプログラムなど、サポートも厚くなっているので安心だ。新型アルファロメオ ジュリエッタ、クルママニアだけでなく、国産車からでも安心して乗り換えてもいいクルマになった。残るハードルは、国産車とも競合できる価格だけだろう。
代表グレード | アルファロメオ ジュリエッタ スプリント |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4350×1800×1460mm |
ホイールベース[mm] | 2635mm |
トレッド前/後[mm] | 1555/1555mm |
車両重量[kg] | 1400kg(DIN) |
総排気量[cc] | 1368cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 170ps(125kw)/5500rpm |
エンジン最大トルク[N・m/rpm](ノーマル) | 230N・m/2250rpm |
ミッション | 6速アルファTCT |
タイヤサイズ | 205/55 R16 |
欧州基準の郊外モード<MT車> | 約21.7km/L |
定員[人] | 5人 |
税込価格[万円] | 318万円 |
発売日 | 2012/2/4 |
レポート | 大岡智彦 |
写真 | 編集部 |
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