「私が100歳まで生きないとダメみたい」ワイヤーバッグが若者に再ブレイク世界的デザイナー(69)が語る“これから”
CREA WEB / 2024年4月17日 11時0分
アンテプリマのワイヤーバッグと言えば、1990年代初頭に一世を風靡した最先端トレンドのバッグ。そのワイヤーバッグがブランド設立30年を経て、再度熱いトレンドを形成しています。スマートでファッショナブル、そして今もなおモダンの先端を行くワイヤーバッグが、20~30代の若年層にリバイバルヒット、そしてその親世代である50代の顧客も増やしているそうです。
今回はそのアンテプリマのクリエイティブ・ディレクターである荻野いづみさんにインタビュー。アンテプリマのこれからを聞きました。(全3回の3回目。)
今年で70歳。年齢の壁はまったく感じていない。
――荻野さんは今年で70歳を迎えますが、年齢の壁を感じることはありますか?
あまりないんです(笑)。でも老眼鏡をかけるのはもう嫌だわと思い、ようやく手術を受けることにしました。フィジカルに年齢や不便を感じるものからは少し遠ざかろうかなと。
あとは、皆さまがご馳走してくださる会食が多いので(笑)、レパーサという高コレステロール血症治療薬を2週間に一度打っています。そういった予防医学の情報はキャッチするようにしていて、幹細胞を打ったりもしています。年齢に対しては、お医者様と科学の力に大いに頼っているということですね。
――メンタルの部分で気になることなどはありますか?
能天気なのか、やっぱりあまり感じていません(笑)。周りのお友達は80歳を超えている方が多いんです。彼女たちと話していると、自然に「ヴェネツィアで会おうね!」などと言われるんです。私よりもずっと元気で、行動的な先輩を見ているので、本当にあまり悩みはないですね。
――将来的にアンテプリマをご家族の方に譲られるといったことは考えていらっしゃいますか?
彼らに興味があれば考えますけれど……(笑)。私が結局100歳まで生きないとダメみたいですね。
次世代のアーティストの育成を積極的に行いたい
――まだまだ現役続行という感じですね! それでは、これからの夢をお聞かせいただけますか?
香港にCHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)というヘリテージミュージアムがあるのですが、ファッションブランドとしては初めてCHATと組み、『アンテプリマ×CHATコンテンポラリー・テキスタイル・アート賞』というファウンデーションを昨年7月に立ち上げました。
世界から一流のキュレーターを選び、キュレーターの方々が選んだアーティストにそれぞれアートを作ってもらいます。2024年1月には29名のアーティストの中から最終的にファイナリストの8名が決定しました。
大賞を受賞すると、30万香港ドルが贈られるほか、2024年11月29日にCHATで開催される授賞式で発表され、さらに11月30日からはファイナリストたちの作品を展示するので、来場者の方々にも楽しんでいただくことができるんです。
このようなコンペの取り組みは初めてなのですが、次世代のアーティストの育成は今後も積極的に行いたいと思っています。
――若いアーティストの方にとっては、とても嬉しいサポートだと思います。プライベートでの夢や挑戦したいことはありますか?
プライベートではあまりないかもしれません(笑)。毎日楽しく過ごさせてもらっているので。東京に戻ってきている間は、本当に美味しいものばかりいただいています。
夢は、見たもの勝ち。どんどん世界を目指して。
――最後にCREA WEBの読者にアドバイスをいただけますか?
「夢は、見たもの勝ち」です。例えば、デザイナーになりたいとか、クリアな夢を持っている方は意外と少ないと思っております。夢をもって世界を目指してほしい、挑戦してほしいと思います。そして、もう一つ伝えるならば、お金は絶対についてきます(笑)。きちんとした企画、きちんとしたヴィジョンを持って最大限に努力すれば、それに対して投資したい、手助けしたいという人はたくさんいます。
迷ったときには、どなたの言葉だったかは忘れてしまいましたが、「地球は金魚鉢のよう」という言葉を私は思い出します。地球を汚せば、中にいる私たちにも影響はあるし、世界の動向を見れば、自分がどう生きなければいけないかが見えてきます。
若い人たちには頑張ってほしい。どうぞ夢を叶えてください。
荻野いづみ
アンテプリマ クリエイティブ・ディレクター
東京で生まれ育ち、1980年代に香港へ移住。イタリアブランドのアジア展開を手掛け、リテイラーとして活躍する。「タイムレスなラグジュアリーさと現代のスタイルを持ち合わせたモダンな女性」――ユニークな洞察力を持ち合わせた荻野いづみは、地球の反対側のミラノで、1993年自身のブランド”ANTEPRIMA”を立ち上げる。アンテプリマのクリエイティブ・ディレクターとして世界を飛び回りながら、ファイン・アート、文学、音楽、ダンスや演劇などの様々なアートに対しての情熱を持ち続け、宝飾デザイン、生け花、メイクアップなどの幅広い知識などからインスピレーションを得ながら、クリエイションに生かしている。ファッションの才能のある次世代の若者を、スポンサーとしてサポートする活動にも意欲的に取り組んでいる。
文=前田美保
写真=佐藤 亘
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