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ユニクロに負けずに利益を上げる!アパレル2024年「5つの論点」解決策とは

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年1月8日 20時59分

triocean/istock

「SHEIN(シーイン)」のショッピングバッグを持つ女性
2022年11月、東京都渋谷区(AFP時事)

先週の5つの論点 この解決策を提言する

  新年あけましておめでとうございます。

 一年の計は元旦にあり。私は、毎年11日に都内の某神社に参り、631日に半期報告をしに神社に行き、1231日は年度の目標に対する自分の評価を神社で行う。毎月1日はその月の方針を決め、毎週月曜日に一週間のスケジュールを確認して付加価値のでることは何なのかを見極め、毎朝7時にその日1日に高い付加価値を上げられることを決める。私は特に信心深いわけではないが、狙いを定め付加価値を出すためには何をすべきかを、最初に考えて行動する「習慣」を持っている。これを20年以上続けているわけだが、3年も経てば人間も変わってくる。すでにやっている人もいると思うが、ぜひ取り組んでいただくことをお勧めする。

 さて、12日に公開された論考は2023年最終週に書いたものだったが、多くの人に読まれ、なんとトップ5に私の過去の論考含め3つが掲載されるという不思議な体験を得た。新年最初に執筆した今回の論考では、その先週公開された論考に対する私の「答え」を書こうと思う。

 私の論考に対して、「なるほど」と納得せざるを得ない批評がX上で上がっていたからだ。それが「悪いところは分かった。コンサルならどうすればよいのかまで書いてほしい」というものであった。

 端的に言えば、「世の中は激しく変わっている。そのため昔の教科書が通用しなくなってきた。そこは分かったが、新しい教科書はなんなのか」が知りたいということであろう。

 単なる妬みややっかみで、「てにおは」の間違いを突いてくる“アンチ”とは違う、まともな批判だったため、これに答えたいと思う。

 読者の方はぜひ前回論考を読み返した上で、本稿を読み進めて欲しい。

  なお、前回論考で上げた論点は以下の5つであった。

  1. 中国、韓国アパレルにいかに戦い競争勝ちするか
  2. SPAは古い。80%失敗しているマッチング事業を自社内で作り上げる方法
  3. OMO戦略を効率よく動かす組織設計は何か
  4. ディスカウンターと価格競争を避け利益拡大を実現する方法は何か
  5. 日本としてSDGsとどう向き合うか。個社としてSDGsをどのように位置づけるか

  1つずつ、その具体的な回答を挙げ、解説していきたい。

 1つ目は、「シーイン型ビジネス」は世界ではいまや常識、日本は周回遅れという衝撃的な事実を受け止めることから始めよう。

「シーイン型ビジネス」は世界ではいまや常識
日本は周回遅れ

シーイングローバルサイトより
シーイングローバルサイトより

  上記の、論点12はともに、中国、韓国のD2Cビジネスモデルに対する競争戦略となる。

 韓国アパレルの経営者と話をして驚いたのは、「日本のビジネスのガラパゴス化」だ。

 日本のサプライチェーンは、アジアの縫製工場から商社が商品を買い取り、商社が海上、あるいは空路で日本に商品を運び、アパレルの倉庫に入れる。アパレルは、そこで仕分けを行って各店配送をして販売する。

 これに対して、例えば、日本にある大手韓国アパレルは、ECで受注したら、東大門にある工場へ指示をだす。東大門の工場は「個配」で、商品をクーリエ便で最終顧客にダイレクトに届ける。当然、小口なので輸入税の多くは無税となり、また(小売、アパレルの)在庫はゼロだ。さらに、流通コストも商社などが入らないために中間マージンもゼロになるし、そもそも仕入・売上は帳合い(同時に仕入と売上を計上すること)のため、在庫評価損や評価減もゼロとなる。

  勘のよい方はお気づきかと思うが、まさにシーインのビジネスモデルと同じで、これを日本市場に向けて再構築したものだ。私はこのモデルを日本の尾州でやればよいと発破をかけていたが、すでにこれが世界の常識であり、私自身も周回遅れであったと認めたい。そして日本の企業は周回遅れどころかデタラメで、そもそもD2Cなどとよべる状況ではない。これが、8割失敗の和製D2Cの真相である。

  私が「先進的なD2Cモデルですね」とその韓国企業に言うと、はてな?という顔をし「日本では違うのか?」と逆に聞かれたものだ。

 中韓から学ぶ気のない、ガチガチになった日本の古い頭からは生まれないどころか理解されない発想なのかもしれない。いずれにせよ、過去の「DCブーム」時代に儲かって仕方なかった日本仕様の、世界で日本だけがやっている高コストサプライチェーンに今も頼っているのが日本企業の現状なのである。韓国企業はk-ポップとk-ファッションをつなげ、「真のD2C」で、圧倒的な低コストでZ世代を掴んでいる。その結果、10代、20代の女子達のファッションのお手本の80%は韓国、ということになっているわけだ。

 いま、コロナ明けの反動と円安・インバウンド効果で多くのアパレル、百貨店も潤っているが、5年後はそうはいかない。ネクスト・コロナではフェアな戦いが繰り広げられ、中国・韓国企業によるM&Aが日本で起こる可能性もある。そして、商社などの中間流通を排除したD2Cが、次世代のZ世代、α世代を根こそぎ取り込んでゆく可能性が高い。もはや「これは日本製だから品質が違う」などといえないのである。今、衣料品の99%は中国、東南アジアなど海外で製造されている。商品力からいえば論理的にイーブンだ。流通構造がシンプルな分だけ、中・韓企業のほうが有利である。

 この脅威に打ち勝つ方法はただ一つ。日本のアパレルも同じビジネスモデルに転換すればよいのである。まずは日本の産地、中国の北・南、東南アジアなどの工場からのダイレクト配送だ。実際、韓国企業が東大門でやっているのだからできないはずはない。東大門といえばギャルブランドの聖地で、とことん日本向けの製造をやっているため、いまや日本製よりよほどよい。

 

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キーはTOKYO GIRLS MARKETにある

 以上も踏まえるかたちで論点2の回答に移りたい。

 さて、某業界専門誌がとってつけたように韓国企業の取材をしているが、その分析の甘さは情けなくなるほどだった。「K-ファッションとKポップの融合」ともっともらしいことを書いてはいるものの、具体的に融合してどんなビジネスモデルなのかは全く書かれていない。Tokyo girls marketとは、私の過去の論考に詳しくかいてあるので読んでいただきたいのだが、Dholicと東京ガールズコレクションがコラボレーションして開設した、いわゆる「インフルエンサー・プラットフォーム」といえる試みである。

  日本の女子達がファッションサーチのために使っているのがInstagramでその存在は圧倒的だ。だが、「推し女子」を見つけたはいいものの、タグ付けしたその人のライフスタイル全般を見ることができないのが、インスタの最大の欠点である。それを可能にしたのが221月より本格的にスタートしたECサービス「TOKYO GIRLS MARKET」である。「TOKYO GIRLS MARKET」は、推し女子を軸に、その人が着ている服や雑貨を逆サーチできる。ちょっとしたことだが、インスタを使っている人からするとこれは非常に便利なツールだ。これが、K-ポップとK-ファッションの融合である。

 ここまで分析できれば、ECの弱点であるAcquisition (個客の獲得)の強化ができる。あとは、Tokyo girls marketのコンテンツの問題次第だからだ。韓国企業であれば、ここにKポップを載せてくるだろう。だから、日本はそれぞれのブランドが手を組み、  「Tokyo contemporary fashion」を載せてみてはどうか、というのが私の提言である。 

 Tokyo contemporary fashionというのは、私がかねてから提案している「Tokyo」をブランド化するという試みだ。近代的でモード、ミニマルで細かく丁寧なディテール。Tokyo が醸し出すブランドのイメージはいくらでもある。もはや日本で服を売っても売れないのだから、もっと高額な高級品をだすか、さらにアニメやゲームの主人公などをコラージュした低価格商品を逆D2Cで日本に投入するのもおもしろい。

成功するOMOの戦略組織とは?

  ここからは3つ目の論点、「OMO戦略を効率よく動かす組織設計は何か」を解説したい。

 ある著名コンサルタントと話をしたときだった。「河合さん、ECは市場がどんどんのびていて、毎年ZOZOTOWNのような企業が生まれている。攻めるべきマーケットはここだ」と云っていたのだが、残念ながらそれは、全くの誤解である。

 町に出て世の中を見ないから、ECが伸びて新しい市場ができているように見えるのだ。

 服を買っている人は減っているし、売れているのはやはりリアル店舗で売れているアパレル品だ。別に、EC専門の服の市場が拡大しているわけではない。「買い方が多様化している」にすぎない。だから、市場全体でみれば、やはりアパレル市場は毎年縮小していて、相対的にECへの移行が加速しているから、ECが伸びているように見えるだけなのだ。

 しかし、ECといってもスマホをもって消費者が町を徘徊している今、「EC イン・ザ・ポケット」、つまり、ECは決済手段になってゆくだろう。例えば、Appleストアをみてもらいたい。レジというものが存在せず、Appleの従業員がそれぞれ端末を持ちAppleストアの中を歩き、接客をしながらカード決済を行って、その場で領収書もe-mailでおくることができる。

  私は、NEW STORE(https://www.newstore.com/) というオーストラリアのOMOツールを販売している企業cの仕事を手伝ったことがあるのだがこれが、まさにAppleストアの中でおきているOMO戦略の中核をなすソリューションである。おそらく、日本では私の会社が最もしっかりと実装支援ができるため、興味があるかたはぜひご連絡いただきたい。このソリューションは決済ソリューションを組みあわせることで、ECを決済に集約し、また、在庫移転を店舗別にできるツールだ。欧州で爆発的に導入企業が増えており、やがて日本でも広がるのは時間の問題だ。以上が、論点3の私の回答だ。

価格の安いユニクロ、しまむらに負けずに利益を上げる方法とは

winhorse/istock
winhorse/istock

 次に論点4である。

 論点4は、はじめから売れないことを前提に売れ残りや値引きを織り込んだ高額な値段をつけ、最終的に粗利率を60%程度とるか、値引きせずに売れる前提で前者の半額ほどの値段をつけ、最終的に粗利率を60%稼ぐかの違いだ。不況の日本経済下では後者が圧倒的に有利であり、しまむら、ユニクロ、ハニーズなどはみなこの方法をとっている、という話だった。

 「ならば、同じことをすればよいではないか」というのは、あまりに安直である。なぜなら、いきなり価格を半額にすれば、それはもはや消費者にとって違うブランドとなるからだ。

 ここで提案したいのは、最終価格を100%とすると30%が値引きか評価損・減なのだから、逆に考えてみるというものだ。

 例えば、価値を高めるというのも検討しうる方法だ。例えば、ユニクロはカシミヤを1万円弱から12500円に価格を上げたり、他ブランドとのコラボレーションで、さらにデザイン料として値段をあげている。

  ディスカウンターは、これまで低価格で売ってきたため、なかなか値段を上げつらい。しかし高価格帯のブランドが、そのブランドを「プライス・アンブレラ」(価格基準値)としてお手頃商品、つまり絶対価格は高いが、価値はそれ以上に高いものをつくる、ということである。

 例えば、ユニクロはウールのエクストラファインの梳毛セーターを3000円前後で売っているが、これを肉厚にして5000円で売るという戦略だ。ユニクロのエクストラファインは薄く、おそらく150 ~ 200gぐらいと思われるが、これを250gぐらいの目付で、5000円で売るわけである。上代を下げられないなら、コストを上げることで同じコスパを実現するという戦略だ。

  くどいようだが、ディスカウンターの価格が安いのは損益分岐点が低いからではない。「値付けに歩留まり分を織り込んでいるのかいないのか」という点が違うのである。だから、冒頭に上げたD2Cとあわせて、コストを上げれば論理的にいって利益率は増えるはずだ。コンサルという職業上、実際のアパレルの名前を挙げられないのが無念だが、実際に最近手伝った高価格ブランドは、欠品だらけではあるものの、値下げをせず(歩留まり分を価格に転嫁していない)に、プロパー消化率は80%を超えていた。また、上にあげたディスカウンターのプロパー消化率も、あまねく80%を超えている。

 これも、実際の訴求価値をどこにおくかはご自身で考えてもらいたい。もちろん、私と一緒に考えてくださるという方がいらっしゃれば、いつでも飛んで行く。これが、私の回答である。

論点5SDGsの“残念な”解決策とは

 最後に論点5SDGsである。

 これは、はっきりいって国の責任であり、個社でどうにかできる話ではない。例えば、バングラデッシュでおきたラナプラザ倒壊事件について考えてみよう。日本には建築基準法があり、また、義務教育制度がある。私たち日本人はこうした国が定めた法規制の中で生活しているわけだ。だから、その基準にしたがって建物を建てるし、未就学児童がいないよう義務として教育を受けなければならないわけだ。これを、倫理や「ひどいことするな」というような感情論で閉じ込めようというところに無理がある。

 これについて「ファストファッション企業など製造を委託していた大手アパレルの責任である」と断じるのは、間違ってはいないがシステム、仕組みとしては不十分だ。これは、国が国に対して言うべき産業政策とも言えるもので、一企業がどうにかできる問題ではない。

 いわば、企業はアクセル。法規制がブレーキの役割を果たして我々人類を正しい方向へ導いてもらわなければならない。例えば、タンパク質のような、何度も再生可能な繊維を使う場合、輸入税を免除するなどである。そうやって、経済合理性と企業の進むべき方向を官民が歩調をとりあってゆくべきなのだ。

 すでに、フランスでは、洋服を捨てるとペナルティが科せられるなど、「国」がSDGsに介入している。私は、2年前からずっと同じことを言っているのだが、日本政府は放置プレイを続けている。SDGsはスーパーブランドにとって、ブランドエクイティ(ブランド価値を形成するもの)だが、一般アパレルにとってしてみれば、コストでしかないということをまずはしっかり合意することである。

 「神の見えざる手」では、今後マスボリュームを形成するであろう超低価格アパレルに対して、SDGsが通用することはない。

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プロフィール

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

 

筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/index.html

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