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万引きロス対策も、DX人材育成も「共創」の時代!小売業の連帯つくるチームK.Oの成果とは

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年4月7日 20時59分

チームK.O

3月15日、リテールテックの会場である講演が行われた。2時間強の講演時間で登壇者は20名近く!有力小売業やメーカー・卸のトップ、幹部など豪華メンバーがゲストとして参加するセミナーにはオンライン参加も含めて数百人が集まった。それがチームK.Oによる「今、会社の垣根を超えて、協調して取り組もう!!~セルフレジ商品ロス対策、DX人材育成、共通商品マスター、SDGs等の課題の整理と事例研究~」と題したセミナーだ。
企業の枠を超え、小売業界をより魅力的で持続的に成長ができ、働きたいと思える産業にすることを目的に、「共創」と「連帯、そして「具体的な行動」を促す「チームK.O」が呼びかける世界へとお連れしよう。

チームK.O
チームK.Oのメンバーたち

デフレからインフレに変わり
豊かさを維持できなくなった!

 「チームK.O」とは何か、その具体的な目的やこれまでの行動については「有力小売から続々参加!生成AIに防犯、小売企業の垣根超え協調を実践する「チームK.O」とは」を読んでほしい。

 チームK.Oの中心メンバーを4人紹介すると、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)経営企画部長の北村智宏氏 、ライフコーポレーション(ライフ)営業戦略本部兼IT戦略部部長の尾崎健氏、パナソニックコネクト エグゼクティブ インダストリーストラテジストの大島誠(マック大島)氏、そして日本マイクロソフト インダストリーテックストラテジスト岡田義史 氏だ。

 このほか企業の枠、業界の枠を超えたスペシャリスト、ゼネラリストたちがすでに総勢20名ほどがチームK.Oに参加している。

 セミナー冒頭では、「チームK.Oが目指す世界」が共有された。

 まずはチームK.Oが掲げる問題点から説明したい。

 小売市場規模は1992年、日本は約129兆円、米国は約123兆円でわずかながら日本が上回っていた。

 しかし、30年経ったいまはどうだろう。米国は約635兆円まで拡大した一方で、日本は約123兆円とむしろ微減している。日米小売市場規模はもはや比較対象にならないほど広がってしまったのだ。

 その要因は、経済成長の指標であるCPI(消費者物価指数)から導くことができる。93年をともに100とすると、米国は202.5となった一方で日本はわずか107.5なのだ。

 米国で物価が倍になったということは、それに合わせ所得も同様のペースで上昇しているはずだ。一方日本は、物価が30年で7.5%しか上がっていないのと同様に、給与もその程度しか上がっていないことが推察できる。

 平成の30年間、日本は経済成長ができない代わりにコスト削減で物価上昇を抑えたのだ。

 とくに小売業による徹底的なコスト削減と売価引き下げ、低価格競争が大きな役割を果たした。だからわれわれは給与が上がらなくても豊かな暮らしを享受できたとも言える。

 しかし令和になり、デフレからインフレへと変わった。

 インフレは一般的に給与を押し上げる働きを持つものの、賃金上昇は実質的な物価上昇を大きく下回る状況が続いているし、企業も利益を上げられなければ、その利潤の分配として給与を引き上げることはできない。特に生産性が低く収益性が低い代表産業である小売業界にとっては都合が悪い。

共創でイノベーションを創出する

 ますます魅力のない産業となり、優秀な人材が来なくなり、結果イノベーションが起こらないという、負のスパイラルに陥る危険があるからだ。

 そこで、自社だけでは完遂できないことを共通課題として、業界全体で「共創」することで解決し、ひいてはイノベーションを創出していこうというのがチームK.Oの基本的な考え方だ。

 チームK.Oがめざす領域は大きく以下の4つ。

 Technology:「デジタルの恩恵をすべての人に」を旗印に、商品データ標準化と産業横断レジストリー構想を掲げる

 Ecology:「次の時代のためにより良く」を掲げ、有価物と産業廃棄物の共同回収モデルを進める

 Anshin&Anzen:「地域とお客様と従業員を護る」ためにセルフレジの商品ロス対策に取り組む

 Manpower:「若者が働きたくなる業界へ」転換するために、小売業界に根強く残る「昭和マインド」を破壊し、これからの小売業の働き方、学び方を教える

 セミナーでは、この4分野ごとに30分ずつ時間を使い、各活動の課題とねらい、成果、ゲストを呼んで今後取り組むべきことへのコミットなどが行われた。具体的には、Manpowerは「人材育成」、Ecologyは「環境」、Technologyは「商品情報」、Anshin & Anzenは「レジ商品ロス防止」をテーマとするセッションで、このうち本稿では「人材育成」「商品情報」「レジ商品ロス防止」を中心にまとめた。

昭和マインドはびこる古い業界
働き方、学び方を変える新しい人材育成とは

「昭和マインドをぶっ壊す!これからの小売業の働き方、学び方を考える」セッションの一コマ
「昭和マインドをぶっ壊す!これからの小売業の働き方、学び方を考える」セッションの一コマ

 まず最初に行われたのが、Manpowerの分野。「昭和マインドをぶっ壊す!これからの小売業の働き方、学び方を考える」を旗印に行われた。

 ゼクシィ産みの親で、大手企業向け新規事業開発コンサルティングを手掛けるアーレア代表の渡瀬ひろみ氏、イオン九州の柴田祐司社長、ライフコーポレーション営業戦略本部長の田岡庸次郎氏がゲストとして登壇した。

 冒頭では、就職不人気度や「知り合いや若い世代、家族友人に職場としてお勧めするか?」というアンケートの残念な結果が発表された。

 その背景として、「生産性の低さ」とそれゆえ「給料を上げられない」ことがあるとチームK.Oでは規定。どうすれば生産性を上げられるか、そして給料を上げ、働きたくなる魅力的な産業にできるかが話し合われた。

 セミナーで槍玉に挙げたのが「チェーンストアというビジネスモデル」だ。①規格に当てはめる新人教育、②尖った人材を許さずできるだけ中庸であることを求める評価・処遇システム、③他者との交流が少ない環境と情報の閉鎖性の3つがその結果として生まれたと主張する。

 それでも経済と産業が右肩上がりで成長していた昭和時代は、成功パターンさえ構築できれば、それを横展開することで全員が「売上を上げる」という小売業の醍醐味が実感でき、企業も成長し、働いている人にとっても魅力的な産業だった。

 しかし、店数が増えて競合は激化し、商圏も狭まり、個店ごとの要件が業績要因の大部分を占めるようになると、1つの事例を横展開することでは成功は得られにくくなっていった。

 そうしたなかでチームK.Oでは「生産性が高く働く人がワクワクするモデルに」するため、①脱ロボット化の人材育成、②副業も可能にし、成果と報酬の関係性の見直し、③社内外ネットワーク構築を促す仕組みや環境づくりを提案した。

 この提案について渡瀬氏は「食の安全を守る小売業は、鉄道会社と同様、『オペレーションエクセレンス』が求められる業界。人材育成においても、ルール遵守に集中する人を育成するあまり、『思考停止』になる恐れがある」と指摘。

 「ただし、全員がクリエイティブである必要はない。全従業員のうち1%の人でもよいので、創造的破壊ができる人のために実験店舗をつくり、チャレンジさせることが重要。その際失敗を許容することが最も大事だ」と説明した。

イオン九州の柴田祐司社長
イオン九州の柴田祐司社長

 イオン九州の柴田社長は「巨大組織であるイオンでは(一つの社会ともいえる)『イオン村』ができている。そのイオン村からどうやって外に出てもらうかを率先してやらせている」と自立的な人材を増やし、オープンな視点で企業の新たな成長に目を向けられる人材育成に注力していることを説明した。

 ライフの田岡氏は「90年代までは大店法があり、休日も営業時間も規制されていた反面、従業員同士が顔を合わせコミュニケーションを取る機会も多かった。大店立地法施行により店舗の営業時間や休日が自由化され、小売企業にとって急成長のきっかけとなった一方で、24時間営業店舗なども増え、従業員同士のコミュニケーションが減少していったのではないか。部長クラスの管理職は昭和マインドのままで、現場の変化に合わせて(仕組みやコミュニケーションのあり方を)変えきれなかった部分があるのでは」と語り、柴田社長も「当時組合にいたが、法律変更により正月休みがどんどん短くなるなかで、組合としてどう変えていけばいいかまで考えは及んでいなかった」と同調した。

 その上で柴田氏は「(流通第一世代と言われる)大手小売の創業者たちは定期的に会い、意見交換し、業界をどうやって良くするかを話し合ってきた」と指摘、企業という視点ではなく、その上のレイヤーである「産業」という視座を持つことの重要性を指摘した。

 昭和マインドを令和マインドに変える1つの成功体験として、イオンDXラボの事例が共有された。社内外のデジタル化に関する取り組みや考え方を共有し、「自分事化」する場として、いまやグループ4000~5000人が参加する大イベントだ。

 その大きな課題は、店舗で働くスタッフやミドル世代の参加が少なかった点だ。理由は、現場の人にとっては参加する時間がない、ミドル世代にとっては「理解できなくてついていけなかったら恥ずかしい」というものだった。

 そこで、時間がない人でも参加できるように30分程度の勉強会を新たに立ち上げた。内容も、初参加の人でもわかるように平易なものにするよう心がけた結果、今では400人程度が参加し、うち80%以上が40代以上となったという。

 北村氏は「これをイオンだけでやるのはもったいない。業界全体で、学べる場をつくっていきたい」と語り、セッションをまとめた。

非効率な産業を改革する
商品マスター問題を解決する!

 「商品情報」のセッションテーマは「本音で議論!なぜ業界で商品マスターの標準化が進まないのか」。

 商品マスターとは、JANコードや商品名、内容量、商品パッケージ画像など、小売業が店舗やECで扱っている商品情報をデータにまとめたものだ。

 商品マスターには「取引に関わる情報」と「お客のために開示すべき情報」の2つが含まれる。2つを明確に分けることを前提としたうえで、前者は競争領域、後者は協調領域として後者を共通利用すべきだとチームK.Oは説く。

 小売企業別に商品マスターを作成することが、どのような弊害や非効率をメーカー・卸・小売に与えているのか。商品パッケージ画像を例に考えていきたい。

 商品パッケージ画像は、同じ商品パッケージを撮影するので、微妙な撮影角度の違いこそあれ、ほぼ一緒だ。だが小売業は「独自のデータ」であることに固執し、メーカーに画像データ作成を要請する。そのためメーカーでは各社の求めに応じて都度撮影、納品する必要がある。

 では、苦労して各社ごとに画像データをつくったからと言って、アマゾンなどのEC専業と比べてコンテンツが充実しているかといえばそんなことはない。むしろ貧相だ。アマゾンは原材料やアレルゲン表記などの裏面情報も含まれるが、SM各社の画像データはほぼパッケージ画像のみだ。かけた労力が、まったく価値へと転換されていないのだ。

 それならば、小売で共通化しリッチコンテンツ化を図ったほうが、消費者、メーカー・卸、小売にもメリットが大きいというのがチームK.Oの主張だ。

左から、U.S.M.H経営企画部長の北村智宏氏、国分グループ本社の品田文隆常務執行役員、Mizkanの吉永智征社長
左から、U.S.M.H経営企画部長の北村智宏氏、国分グループ本社の品田文隆常務執行役員、Mizkanの吉永智征社長

 登壇したMizkanの吉永智征社長は「小売各社向けにカスタマイズする必要があり、膨大な人件費がかかっており、これを価格に転嫁している。(このムダがなくなり)適正価格で(お客に)ご提供できたらいい」と語る。

 卸からは国分グループ本社の品田文隆常務執行役員が登壇。「一部小売企業では競合他社より一歩でも早く商品情報を入手すべしとして、『競争領域』にしているところがある」と指摘、お客のための情報と、取引に関する情報を切り分け、後者については小売業主導でガイドラインを見直すべきだと説明した。

U.S.M.Hの山本慎一郎副社長
U.S.M.Hの山本慎一郎副社長

 これを受けて小売業の観点からは、U.S.M.Hの山本慎一郎副社長が「小売はなんでもタダでもやってもらおうという根性があったが、ようやくカネがかかるということを理解するようになった。今後、取引条件も変わってくるとなれば、一生懸命取り組むように変わると思う」と説明した。

 ここで、そもそもなぜ商品マスターの統一が必要かを説明したい。

 働き手の高齢化と減少が進むなか、産業効率を高めるためロボットの活用が想定されている。だが、商品棚の在庫状況の確認や補充でロボットを使おうにも、商品情報や画像が統一されていなければ、結局非効率なままだ。だから、商品マスター問題を解決することが重要なのだ。

 それに関して、今後の統一の方向性についてはGS1 Japan(流通システム開発センター)の森修子理事がタイムスケジュールを含めて説明。最後に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の赤羽根亮子氏が「小売業界の課題解決のカギとなる商品情報データベースの研究開発」について、撮像装置とロボットの研究開発の最先端などについて解説した。

 1回の情報入力であらゆる企業が活用可能な、シングル・インプット、マルチ・アウトプットが実現できれば、小売産業のムリ・ムラ・ムダを減らすことができる。製配販が効率化され、等しく利益を享受できれば、それが取引条件の改善と消費者利益につながることに、小売側は早く気付くべきであろう。

セルフレジ普及で緊急対策必須
レジ商品ロス問題

左から三菱商事・北村圭吾氏、イオン九州・川村泰平氏、ライフ・尾崎健氏、U.S.M.H北村智宏氏

 セルフレジの普及によりレジでの不正が増えており、食品スーパーの経営に大きなインパクトを与えている。そこでセッションでは「レジ商品ロス防止」をテーマに「待ったなし!!セルフレジの商品ロス対策。傾向と対策!」というタイトルでセッションが行われた。

 売上比073~0.75%。

 これは、ある国内メーカーと小売企業がカメラ映像とレシート情報を突合した結果算出された、セルフレジにおける「推定商品ロス率」(売上比)だ。

 ゲスト出演したイオン九州デジタルトランスフォーメーション担当の川村泰平上席執行役員は「(イオン九州では)正確に算出できているわけではないが、売上比で0.7~0.8%程度が”悪意のある”数値だが、セルフレジの場合は(うっかりミスもあるため)さらに高い商品ロス率となる」と明かす。

 単純に利益率1%未満の企業であれば、その利益がほぼ吹き飛ぶ計算になり、事態は深刻だ。

 対策として従業員による監視の目も強めているものの、その「正義感」がかえって「誤認」を増やすこととなり、従業員に後悔を、お客に不快感を与える「悲劇」の温床となっている。

 しかし現実的には、人手不足の観点からセルフレジなど決済作業の無人化・省人化はもはやスーパーマーケットにとって不可欠だ。

 そうしたなかチームK.Oでは小売業のみならずセルフレジ開発企業も巻き込んで、どんな対策を打つべきかを話し合い、ノウハウと実践の共有を進めている。

2月22日に開かれた、セルフレジの不正防止についての意見交換勉強会の一コマ
2月22日に開かれた、セルフレジの不正防止についての意見交換勉強会の一コマ

 2月22日には37社、123名が参加し、セルフレジの不正防止についての意見交換勉強会を開いた。現場を取り仕切るレジ担当者も参加。「レイアウトで抑止力を高める方法」などセルフレジ運用面でのノウハウやさらなる課題が共有された。

 「業界みんなが困っているのなら、社外の人同士で集まり意見を交換し合えばいい。実際にやってみたところ、非常に大きなニーズがあることがわかった」とライフの尾崎氏は語る。

 このように、セルフレジの商品ロス対策は喫緊の問題だが、その前提には「従業員とお客の安全の確保」がなければならない。

 だからこそ「現場でセルフレジを担当する『アテンダント』を(防犯に目を光らせる)『ポリス』にしてはいけないというのが小売の思いだ」と尾崎氏は強調する。

 そこでチームK.Oでは、①データの目(画像確認や購買、レシート分析)、②人の目、③機械の目(カメラやモニター)に加えて、社内への通報制度、警察との連携、業界で一丸となることなどを骨子としたさらなる「目」をつくることで、改善させたいという。

  「海外は小売業主導のロス対策に関する勉強会があるが、日本にはまだない。小売主導でセルフレジの商品ロス対策を考える勉強会をつくっていきたい」と尾崎氏は抱負を述べた。

 

 このように小売業界はいまさまざまな課題を抱えている。それらは、一社では解決できないことや、個社単位では「疑問すら持たないような」大きな課題だったりする。

 チームK.Oはこれら課題を解決するために、そして小売業界を魅力的で持続的成長できる産業にするために、企業の枠を超えて共創し、具体的に行動する集団だ。自分たちの企業を内側から変えたいという意思ある人も、業界や自社の将来に漠然とした不安を抱える人も、このチームK.Oに参加し社外の知見を得るだけでも有益なはずだし、その知見を社内に広めたいという行動を起こしたくなることだろう。

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