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虐殺への無関心の恐ろしさを描く「関心領域」ジョナサン・グレイザー監督、ミカ・レヴィらがティーチイン

映画.com / 2024年5月16日 13時0分

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 A24製作、第76回カンヌ国際映画祭グランプリ、第96回アカデミー賞国際長編映画賞&音響賞を受賞した「関心領域」の試写会イベントが5月15日に都内であり、ジョナサン・グレイザー監督、音楽を担当したミカ・レヴィ、プロデューサーのジェームズ・ウィルソンがオンラインで登壇するティーチインが行われた。

 映画は第2次世界大戦中、アウシュビッツ強制収容所と壁一枚隔てた屋敷に住む収容所の所長とその家族の暮らしを描く物語。まずは司会から、サーモグラフィを用い、人間の姿ではなく体温が視覚化されるシーンの意図について問われたグレイザー監督は、「倫理的にも、ビジュアル的にもその他のシーンとは対照的なものとしたい狙いがあり、サーモグラフィがこのシーンを映し出すのにふさわしかったのです。1943年が舞台ですので、自然光のみで撮影したく、この他のすべてのシーンはすべて自然光です。そうなると、夜のシーンが映せませんから、一つの方法としてサーモグラフィを用いました」と明かす。

 観客のひとりが、本作では被写体を引きで映したり、カメラが近づいたとしても登場人物の表情が見えずらく、敢えて映さないようにしたのか? と質問。その理由を「仰るように、意図的にそういう演出をしています。観客には役者の芝居や映画的な心理表現で引き込むのではなく、壁に止まっているハエのように、登場人物たちをひたすら観察するような作品にしたかったのです。キャラクターたちの行動、やりとり、体の動かし方であったりをひたすら見つめてもらうという狙いです。批判的な距離感を保ち、何より私自身が監督として役者の芝居を見るのではなく、あたかも実在する人物をドキュメンタリーを撮るようにして撮りたい。そういう気持ちがありました」とグレイザー監督。

 そして、登場人物たちのリアルな行動を映すため、本作では隠しカメラのように、小型のカメラをセットの中に複数台設置し、同時に撮影するという方法がとられた。

 プロデューサーのウィルソンは、「資金的にも時間的にも結構難しいことだろうとはわかっていました」と前置きしつつも、「しかし、それがリスクであるとは思いませんでした。現場では、例えば1日の前半に撮影をして、後半は次のシーンの俳優の動きなどのプランを綿密に立て、そして次のシーンの撮影に入る、という進行でした」と振り返り、「10台のカメラを同時にまわすのはもちろん大変で、かなり計画的にやらなければなりませんでした。ギミックとして用いたわけではなく、あくまで作品のテーマをしっかりと描くために、こういった撮り方をひとつの方法として用いました。この家族が今ここで生きていて、そしてそれを我々はこの間近で見ている、そういった感覚を観客に味わってほしかったのです」と狙いを明かした。

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