75歳の祖父が「孫の教育資金」として「100万円」援助してくれるそうです。税制が改正されて厳しくなったと聞いたのですが、何か注意点はありますか? 課税されてしまうのでしょうか…?
ファイナンシャルフィールド / 2024年4月11日 2時20分
教育資金の援助を祖父母から受けられるのは非常にありがたいですね。一方で贈与については税金面で注意すべき点もあります。「毎年110万円までであれば非課税」という点は認識できている人も多いでしょうが、他にはどのような注意点があるのでしょうか。 本記事では、祖父母から孫への教育資金の贈与について解説します。
暦年贈与の注意点
「毎年110万円までであれば非課税」というフレーズは、暦年贈与の非課税枠のことを指しています。暦年贈与とは、1年間(1月1日~12月31日)の贈与合計額が110万円以下の場合、贈与税が非課税となる制度を活用して行う贈与のことです。
この方法であれば、資金使途の制限がないため、教育以外の生活費や娯楽費などに使っても全く問題がない自由度の高いお金を贈与することが可能です。
この暦年贈与の注意点は、贈与をした側の人が亡くなり相続を開始する際、一定期間分の贈与について「持ち戻し」が発生する点です。
「持ち戻し」とは、生前に被相続人から特別受益を受けたものがいる場合に、その特別受益を相続財産に加えて相続分の算定を行い、相続人間の公平を図る制度です。「持ち戻し」が発生すると、亡くなる前の持ち戻し期間中の贈与額が相続財産に加算されるため、相続税の課税対象になってしまいます。
2023年まではこの「持ち戻し」の期間は3年間でしたが、2024年1月1日以降は段階的に7年間に引き延ばされることが決定しました。例えば2031年1月1日に亡くなった場合には、2024年1月1日以降に行った暦年贈与の金額が全て「持ち戻し」となり、相続税の課税対象となってしまいます。
しかし、「持ち戻し」が適用されないように贈与を行うことは可能です。次項にて確認しましょう。
孫への贈与の場合には「持ち戻し」が適用されない
持ち戻しの対象となるのは、子や配偶者をはじめとする法定相続人に贈与する場合です。そのため、孫への贈与の場合には原則「持ち戻し」は適用されません。
しかし、「孫の教育資金」として子(孫の親)に贈与を行う場合には、「持ち戻し」の対象になってしまいます。その場合は、暦年贈与ではなく、次に解説を行う「都度贈与」や「教育資金の一括贈与」を利用した方がよいでしょう。
「都度贈与」の場合には「持ち戻し」が適用されない
都度贈与とは祖父母が孫の教育費や生活費のうち、通常必要と認められるものを、その都度贈与する方法のことです。生活費や教育費の名目で受け取った財産のうち、その都度渡されたものには、税金を課せられないことが法律で定められています。
ただし、教育資金として使われたことを明確にしなくてはいけないので、領収書を保管しておく必要があります。また、贈与額や贈与日も明確にしておくことが望ましいです。現金の手渡しではなく、金融機関へ振り込みをしてもらうことによって、記録を残すとよいでしょう。
また、この方法においては、「未来に発生する教育費用」のための贈与は、非課税対象外となるケースがあるため、注意が必要です。
都度贈与は暦年贈与と比較した場合、資金使途の制限や領収書の保管が必要といった注意点もありますが、「持ち戻し」を心配しなくて良い点は最大のメリットでしょう。
贈与金額が大きい場合には「教育資金の一括贈与」という方法も
「教育資金の一括贈与」とは、親や祖父母から30歳未満の子や孫へ、受贈者1人につき教育資金1500万円までを非課税で贈与可能な制度です(塾や習い事、留学などの費用の場合は内500万円まで)。この方法では、前項にて紹介した都度贈与や暦年贈与よりも、大きな金額をまとめて贈与できます。
手続きについてですが、親や祖父母が金融機関(銀行や信託銀行など)と贈与資金管理の契約を結んだ上で、一括で子や孫名義の口座に入金します。受贈者である子や孫は教育資金であることを証明できる領収書などを金融機関に提出することで、その相当額を非課税にて引き出すことができます。
ただし注意点がいくつかあります。一括で入金された金額を使い切る前に、贈与した祖父母や親が死亡した際、受贈者が23歳以上の場合には残額が相続税の課税対象となるケースがあります。また、受贈者が30歳を超えてしまった場合にも契約終了となり、残額が贈与税の課税対象となります。
贈与方法については慎重に検討を
祖父母がせっかく好意で贈与をしてくれるにもかかわらず、後に税金を納めないといけなくなる事態は何とか避けたいですね。「都度贈与」や「教育資金の一括贈与」といった贈与方法を事前に把握し、適切な方法を選びましょう。
また、税改正は定期的に行われており、現状の非課税制度がいつまで利用できるかは定かではありません。加えて、贈与を行う側の祖父母や両親の意思判断能力が低下してしまった場合には、贈与が認められないケースもあります。祖父母などから贈与の話が出た場合は、可能な限り早めの行動を心がけましょう。
出典
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
財務省 令和5年度 税制改正の大綱
国税庁 祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート
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