脱サラして起業し個人事業主になりました。資金繰りとキャッシュフローの違いを詳しく教えてください
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月11日 9時20分
事業を行っている方の悩みといえば、売上の確保や新規顧客の開拓、新製品の開発等業種業態によっていろいろあると思いますが、共通した悩みとしては資金繰りではないでしょうか。 特に起業したての時は資金繰りが非常に重要です。今回は、資金繰りとキャッシュフローを軸に事業資金に関する公的支援についても見ていきます。
資金繰りとは、キャッシュフローとどう違うの?
資金繰りとは、会社の収入と支出を管理し収支の過不足を調整することです。この場合の資金とは、会社としてすぐに支払いに利用できる現金や、当座預金、普通預金、通知預金、定期預金等を指し、上場株式や貸付金、売掛金、不動産等はこれには該当しません。
お金の流れという点でいうと「キャッシュフロー」というものがあります。
キャッシュフローは、資金の流れを表すものですので似たようなイメージかもしれません。しかし、キャッシュフローが、過去の資金の流れを把握するためという目的に対し、資金繰りは今の資金と数ヶ月後のお金の出入りの予定を把握するという違いがあります。
資金繰りがうまくいかないとどうなるの?
「勘定合って銭足らず」や「黒字倒産」といった言葉があります。これはもうかっているにもかかわらず、手元の資金がないといった意味です。つまり、会社として利益を上げることは大事ですが、それと同じくらい手元の資金を維持することも会社を存続させる上では大切なことです。
逆にいうと、赤字であっても手元資金があることによって、会社の維持あるいは発展につなげることは可能だということになります。
どうして資金繰りが悪化するの?
上記のとおり、黒字であっても資金繰りに窮する会社は一定数あります。なぜそのような状況に陥るのかという原因には、主に下記の2つが考えられます。
1つ目は、継続的な赤字です。
売上が減少しても家賃や人件費などは毎月必ず出ていきます。そうなれば当然資金は足りなくなります。金融機関からの資金調達が難しい場合も同様です。赤字であっても融資を受けることができれば倒産のリスクは下がりますが、実際には赤字の会社が融資を受けることは困難なので、資金繰りの悪化につながります。
2つ目に、売上が急激に伸びる場合です。
売上が伸びれば当然利益も上がりますし、困ることはと思うかもしれませんが、一般的な商売の場合、先にモノを仕入れ、外注費の支払いがあり、売れた後に入金ということになります。つまり、先に仕入れ等の費用を払いすぎれば、入金までの間資金繰りが苦しくなるといったことが起こります。
そのようなことにならないように、普段から資金繰り表の作成を行いつつ、資金が不足しそうなのかを把握して資金調達の計画を立てる必要があります。
また、上記の「売上が急激に伸びる場合」には、あらかじめ支払いサイトを変更するなどの対策が考えられますし、もし遊休資産(事業で利用するために得たものの稼働していない資産)があれば、その売却等も考える必要がありますね。
資金繰りをよくするための公的支援は
市中の金融機関からの融資という方法が一般的に考えられますが、与信や金利の問題があります。そこで公的支援を活用する方法があります。方法としては次の3つがあげられます。
1.日本政策金融公庫からの融資
個人や小規模企業向けの小口の資金を融資している国民生活事業と、中小企業向けの長期事業資金を扱っている中小企業事業があります。
国民生活事業には、商工会議所や商工会で経営指導を受けている会社が無担保・無保証人で利用できる「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」、中小企業事業にはIT活用、海外展開等を対象にする企業活力強化貸付や経営多角化や事業転換を支援する新企業育成貸付、売上減少に対応するセーフティ貸付といったものがあります。
2.自治体の低金利制度融資
自治体によっては、低金利の制度融資を設けている自治体もあります。また、信用保証協会の保証料や金融機関の利息の一部を補助する制度がある自治体もあります。
3.補助金や助成金の申請
補助金や助成金を活用することによって、設備投資や人材育成への資金が調達できます。ただし、全額ではない場合もありますので、自己資金が必要なので注意が必要です。
しかし、補助金や助成金が採択されることは、その事業または事業体自体に一定の「お墨付き」をもらったとも考えられますので、取引先や金融機関等の外部への信用力の向上というメリットもあります。
また、補助金や助成金を受けたときに、専門家による経営診断や販路開拓等のコンサルティングを行って補助金等の受給者が成果を上げられるように、経営支援を行ってもらえる場合もあります。
日頃からのウォッチが大切です
ある日突然資金繰りが悪化して倒産、という事態は考えづらいです。普段から資金繰りがどうなっているかを確認することで、何か違った資金の動きがあればそれを見逃さず、上記のような方法で資金調達をする等、適切な手を打つようすることを日々考えるようにしましょう。
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表
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