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転職先で「休日でもすぐ電話に出るように」と言われました。これって「休日勤務」ですよね? 休みの日くらい、のんびり過ごしたいです…

ファイナンシャルフィールド / 2024年5月18日 2時10分

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休日は、労働者が終日休みを保障される日であり、「休日でも連絡が取れるように」と会社側に言われたら疑問を持つのは当然でしょう。仮に「それなりの手当を出すから我慢しろ」と言われても、納得できない人は多いかもしれません。法的な問題はないのでしょうか。   そもそも、休日でも急な電話に出るようにしなければ仕事が回らない、という会社の体制にも疑問がありそうです。法律上の問題と仕事のやり方の問題、それぞれについて検討してみましょう。

6割近い従業員が業務時間外の連絡へ即時対応を求められている

テレワークやスマートフォンの普及で、勤務時間外でも容易に連絡が取れるようになり、勤務時間外の業務連絡が多すぎるという問題が出てきました。図表1のように6割近い従業員が業務時間外の連絡への即時対応が求められている、という調査もあります。
 
図表1

図表1

パーソル総合研究所 「第八回・テレワークに関する調査/就業時マスク調査」
 

電話の待ち時間が休日勤務に該当するかどうか見解は分かれている

まず、労働法上の問題です。休日でも会社から電話があり、それに回答したり、指示された業務を行ったりすれば労働時間になることは間違いありません。
 
問題なのは、「電話待ちの時間」が労働時間に該当するかどうかです。「使用者(会社)の指揮命令下にある時間」と考えられるかどうか、で判断することになります。
 
弁護士など専門家たちの見解は次のようにさまざまです。
 
「呼び出しがない時間の過ごし方が基本的に自由なら、拘束性が弱く、使用者の指揮命令下に置かれていたとはいえない 」
 
「会社から指示を受けたらすぐに業務を開始しなければならないなら、『業務から解放されている』とはいえず、休憩時間や私的時間ではなく、労働時間(いわゆる『手待ち時間』)として扱わなければならない 」
 
「電話待機時間について、外出なども自由なら労働時間に当たらない可能性が高い。一方で、電話対応を会社から厳命されていた場合は、労働時間に該当する可能性が高い」
 
電話待ち時間については、結局は実態に応じて労働時間に当たるかどうか判断することになるでしょう。
 

働く人の健康確保・私生活の確保の視点からの検討も必要

休日の「電話待ち時間」は、労働法上の「労働時間」の問題のみでなく、従業員の健康確保、私生活の確保などの視点も考えておく必要があります。
 
1つには心身の負担です。休日は本来リフレッシュをする日です。仕事から解放されず、緊張状態が続くことは心身に負担を与えます。
 
また、家族団らんの時間が削られるなど家族関係の悪化も懸念されます。育児・介護時の急な電話への対応は、家族を危険にさらす恐れすら考えられます。
 
さらに、必ず携帯がつながる場所にいることを強いるのは、移動の自由の不当な制限ともいえるでしょう 。状況によっては、休日の電話への返信を強いるのは、パワハラにも該当しうるでしょう 。電話に限ったことではありません。メールでもLINEでも、同様の問題が起こり得るでしょう。
 

「つながらない権利」などの新しい動きにも配慮が必要

海外では、いわゆる「つながらない権利」すなわち、勤務時間外に仕事やメールの連絡が来た場合に、労働者が応答を拒否できる権利が法制化されてきています。
 
わが国でも厚生労働省が出した「テレワークガイドライン」で次の趣旨の記載もあります。
 
「テレワークの長時間労働防止には、役職者、上司、同僚、部下等から時間外等にメールを送付することの自粛を命ずること等が有効である」
 
働き方の注意点として従業員も会社も気をつけるべき問題でしょう。
 
また、厚生労働省の「新しい時代の働き方に関する研究会」報告書にも、次の記載があります。
 
「時間や場所にとらわれない働き方の拡大を踏まえ、労働者の心身の健康への影響を防ぐ観点から、勤務時間外や休日などにおける業務上の連絡等の在り方についても引き続き議論がなされることが必要である」
 
この研究会は、企業環境や労働市場の変化のなかで、働く人が希望する働き方を実現し、能力を開発・発揮できる環境を構築する労働基準法制のあり方を検討したものです 。時間外や休日の業務上の連絡のあり方は、報告書の趣旨も踏まえて慎重に検討すべきでしょう。
 

社内で適切な業務運営のルールを設けよう

会社は「休みの日でも電話やLINEに返事くらいできるだろう」といった安易な考え方は禁物です。それでは従業員はゆっくり休むこともできません。労働法上も問題になりかねません。
 
そもそも、その人がいなければ仕事が回らないなら、適切な業務運営体制ができていない、と疑わざるをえません。特定の人がいなくても、他の人で対応できる体制を構築するのは、企業が組織として行動する以上当然のことなのです。
 
マニュアルを整える、業務引き継ぎルールを明確にする、普段からお互いの仕事を助け合う。努力と工夫の余地はいくらでもあるはずです 。
 
従業員は、職場の上司や仲間と相談して、休みの人がいるときに他の人でどのように仕事をカバーしていくか話し合ってみましょう。自身のためだけでなく、職場の仲間のためになり、会社全体の適切な業務運営体制の構築に役立つはずです。
 

出典

パーソル総合研究所 「第八回・テレワークに関する調査/就業時マスク調査」
厚生労働省 テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン
厚生労働省 新しい時代の働き方に関する研究会 報告書
 
執筆者:玉上信明
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー

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