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お金を普通預金に放置する“悪手”…原因は“正常性バイアス”のせいだった!?

Finasee / 2023年10月3日 11時0分

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Finasee(フィナシー)

デフレが終焉しインフレに突入――世界各国の経済が転換を迎えている今、“銀行預金だけ”を持つ危険性が語られています。ただ、適切にリスクを分散させた資産運用をすれば、インフレ下にあっても自分・家族の生活や資産を守ることはできると日銀出身の政策アナリスト・池田健三郎氏は説きます。

話題の書籍『「新しい資本主義」の教科書』では、日本や世界を取り巻く状況から、投資をはじめとする資産運用の意味について分かりやすく解説しています。今回は本書の『はじめに』、第1章『「5年後の世界経済」を予測したうえで投資を!』の一部を特別に公開します。(全4回)

●第1回:「経済の安定は政府・日銀が何とかしてくれる」の楽観は禁物といえる“これだけの理由”

※本稿は、池田健三郎著『「新しい資本主義」の教科書』(日東書院本社)の一部を再編集したものです。

値動きの予測が難しい今、投資が抱えるリスク

2022年、政府は「新しい資本主義」、「資産所得倍増計画」を打ち出し、「資産所得の倍増とはいったい何か」、と話題になりました。

現政権では、「新しい資本主義」の中身として、「企業部門に蓄積された325兆円の現預金を、人・スタートアップ・GX・DXといった重要分野への投資につなげ、成長を後押しするとともに、我が国の個人の金融資産2000兆円を投資につなげ、家計の勤労所得に加え金融資産所得を増やしていくこと」と定義しています。これは、ごく簡単に言えば「お金の働きをより活発にして、より多くの付加価値を生み出す」ということです。

無論、所得や資産が倍増するのは悪いことではありませんが、投資による資産増には相応のリスクが伴います。また、せっかく所得や資産が倍増しても、同時に物価も2倍になったのでは実質的には増えたことになりません。

ただし、投資で倍増とまではいかなくとも、数割程度ならば増やすことができる可能性があり、体感的に「そろそろ何か手を打たなければ……」と考える人も徐々に増え、投資に注目が集まってきているのも事実です。

投資における収益は不確実性(リスク)をある程度、受け入れなければ実現できません。例えば2022年の11月11日、前日まで146円台半ばだった米ドル/円が一気に一時138円46銭台にまでドル安/円高が進みました。

為替の世界では1日で1円でも動けば「下落」、「高騰」という言葉が使われるくらいですから、かなりの値動きです。

一晩で1ドルが6円も動くというのは滅多にないことで、FX取引などで資産の多くを失った人も少なからずいたのではないでしょうか。かく言う筆者自身も、長期保有を前提としながらごく短期的にはドル建ての含み損を被ることとなり、その間は想定外のモヤモヤ感に苛まれました。

このような例を挙げるまでもなく、為替や株式の相場など、未来の値動きを予測することは非常に難しく、誰にも分かりません。

「専門家」の声に惑わされすぎない

現在、世の中には、「日本は財政破綻状態となり日本円は紙くずになる」という悲観的なものから、「まったく心配ない。金融緩和と財政出動の継続で日経平均が4万円程度まで上がるだろう」といった楽観的なものまで、実にさまざまな意見で溢れています。

率直に言って、誰も将来を正確に予測することなどできません。しかし、どのようなことが起きようと、自分の生活や資産を守り、できれば幾分増やす。そのためにどのような方法があるのかをオーソドックスな理論で考えてみました。

この「オーソドックス」というのが極めて重要で、世の中の「専門家」と称する人たちの中には、説得力に欠ける根拠をもとに極論を振りかざして自陣を固める方や、難しい専門用語を多用して煙に巻いてしまう方も少なくないのです。

彼らは皆、自己の利益のために戦略的に行動しているので、その動機自体は否定いたしませんが、筆者は、極端な主張をして話題作りするつもりはありません。さらに、特定の政治勢力の思想に紐(ひも)づいた主張もいたしません(ただし、私は「小さな政府」の下での自由経済と市場機能の維持・強化と、そのための必要最小限の公的部門の介入を重視しており、「大きな政府」による統制強化や生産手段の共有化という立場はとりません)。まして特定の金融商品を売ろうという意図もまったくありません。

ですから、何者からの影響や圧力も受けず、自身の中央銀行や民間シンクタンクでの経験をもとに、金融や公共政策の学会等で幅広く共有されている知見に加え、金融関連の実務家ならば当然そう考え行動するであろうという「常識的なスタンス」に立脚して、私見を率直かつ具体的に述べます。

混迷期の日本を生き抜くために行動する必要性

一般的に日本人は「正常性バイアス」が強いといわれます。正常性バイアスとは、自分に都合の悪い情報を無視したり過小評価したりして、不安や心配を減らす心のメカニズムのことを言います。

迷ったら動かない、何もしなくても大丈夫だ、下手に動くと危ない――そういう性質が日本人のDNAに強く刻みつけられているのかもしれません。しかし、緊急時にあえて動かないということは、その場所に居続けるということを積極的に選択しているにほかなりません。隣家で火事が起きているのに、「そのうち消えるだろう」と避難しないのは危険であるばかりか、愚かとさえいえるでしょう。今の日本には、まさにそれに近い状況も散見されます。

「国と地方の公的債務(借金)が1200兆円を超えた」、「年金受給開始が70歳以上になるかもしれない」といわれているのに、まだ多くの人が「何とかなるだろう」と考え、行動を変えようとしていません。筆者は、今「何もしない」という選択は、積極的な不作為への強い拘りであり、これはあり得ないと考えています。

「人生100年時代」と言われる昨今、少しでもゆとりある生活を送りたいなら、資産の多寡にかかわらず、「今」この瞬間から考え方を変え、そして実際に行動する必要があります。

以上から、筆者は「あえて行動しないで、成り行きに任せる」考えには否定的であり、「あえて行動し、成功・失敗の両面を経験しながらも教訓を得つつ前に進んでいく」ことを強く推奨します。

例えば、現時点である程度の余裕資金を持っているとして、それを利息がほとんど付かない普通預金に放置しているというのであれば、それを積極的に選択していないにせよ、まさに悪手と言わざるを得ないと思っています。

日本銀行は破綻するのかしないのか、ドル/円は高くなるのか安くなるのか、株価は上がるのか下がるのか、台湾有事は起こるのか――「専門家」といわれる人の意見もまちまちです。

ぜひ自分で考え行動する力を身につけて、勇気を持って混迷の時代に立ち向かいましょう。

●第3回(タンス預金は非常識に…デフレ→インフレの転換が資産運用にもたらす“大きすぎる影響”)では、バブル崩壊から30年つづいたデフレの終焉によって、どのように“かつての常識”が通用しなくなっているのかを解説します。

『「新しい資本主義」の教科書』

池田健三郎 著
発行所 日東書院本社
定価 1,760円(税込)

池田 健三郎/経済評論家、政策アナリスト

1992年日本銀行入行(総合職)、一貫して金融経済の第一線で研鑽を積み1999年6月円満退職。以降は個人事務所(シンクタンク)を設立し、「政策職人」として活動。現在、経済評論家・政策アナリスト、TVコメンテーター、シンクタンク代表のほか、ビジネス・コンサルタント、企業経営者として活動中。撮影:今津勝幸

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