森保監督が漏らした「これが現実」の言葉の意味 五輪代表の“最強布陣”が実現困難な訳【コラム】
FOOTBALL ZONE / 2024年5月5日 6時50分
■五輪はインターナショナル・ウィンドーではないため海外組の招集が困難
森保一監督が五輪代表への海外組招集の難しさについて、「現実」を語る一幕があった。
森保監督は5月3日、J1リーグ第11節FC町田ゼルビアvs柏レイソルを視察し、試合後取材に応じた。「町田の狙いどおりの試合で、柏はなかなか自分たちの形を作らせてもらえなかったという展開だった」と感想を述べ、その後はロングスローについて「戦術として取り入れることは考えているところ」だと明かした。
最後に「パリ五輪出場が決まったが、海外組の招集は非常に難しそうだ。東京五輪の時はどうしたのか」という質問が出た。東京五輪には吉田麻也(サンプドリア/イタリア)、中山雄太(ズヴォレ/オランダ)、板倉滉(マンチェスター・シティ/イングランド)、冨安健洋(ボローニャ/イタリア)、橋岡大樹(シント=トロイデン/ベルギー)、遠藤航(シュツットガルト/ドイツ)、久保建英(レアル・マドリード/スペイン)、三好康児(アントワープ/ベルギー)、堂安律(PSV/オランダ)、田中碧(デュッセルドルフ/ドイツ)と10人のヨーロッパでプレーしていた選手が招集されたのだ。
「(大会の)1年前、2年前から、前もって選手たちの移籍等々の動きを聞き、常にチェックしながら、早め早めに所属クラブや、移籍するであろうというクラブ、代理人さんと連携を取りながら五輪に出られるような状況作りを早めに動き出せたことで、五輪本大会に思った選手を招集できたと思います」
「我々がラッキーだったところは、東京五輪という日本で開催される大会だったので、クラブもそこは自国開催の五輪であれば選手も出たいだろうということをより理解をしてくれたところはあるかとは思います」
試合と関係ない質問だったのであっさりした返答になるかと思われたが、どうやら森保監督の胸の中には溜まっていたものがあったようだ。そこからさらに監督の熱弁が始まった。
「オリンピックは『IW(インターナショナル・ウィンドー)』の開催とは違うので、選手の招集はかなり難しくなってくると思います。特に移籍が絡む時には、予想が立っていれば移籍先のクラブとも話し合いで招集という方向に交渉ができるかと思いますけど、なかなか移籍先も分かる状態ではないと思います。今後、大岩(剛)監督は海外組、オーバーエイジも含めて、最強のチームを作っていくことを考えられると思いますけど、そこの交渉は簡単ではないかと思いますし、日本の総力を上げて交渉が必要かと思います」
■2016年のリオ五輪では久保裕也がクラブの派遣拒否で参加できず
2003年、各国代表チームと所属クラブチームとの活動調整のためにFIFA(国際サッカー連盟)カレンダーが生まれた。3月、5月または6月、8月または9月、10月、11月、および各大陸連盟主催の公式戦(アジアカップ、ユーロなど)に定められている「IW」期間内は、クラブは招集された選手をリリースしなければならない。逆に言えば、この「IW」期間外に行われる試合には、クラブは選手をリリースする義務がない。
過去、日本にも実際に招集を拒否された例があった。2016年リオ五輪のメンバーに選ばれていた久保裕也(当時ヤングボーイズ/スイス、現シンシナティ/アメリカ)は、クラブがほかの選手の負傷離脱を埋めるため大会直前に招集を拒否し、出場辞退することになったのだ。
森保監督は「『IW』以外では海外のクラブはやはり自チーム優先で、なかなか選手の派遣には応じてもらえないが、グローバルスタンダードの中でこれは当たり前」だと言いつつ、それでもJクラブは理解して選手の招集に応じてくれていることに感謝を述べた。
そして、東京五輪前の2020年のU-23アジアカップにも海外組は1人(食野亮太郎:当時ハーツ/スコットランド)しか招集できなかったと振り返りつつ、「これが現実なんで」とつぶやいた。
森保監督は海外視察に出かけた時、日本代表選手の所属するクラブの監督や関係者に会って招集に応じた礼などを伝え、次回の招集をスムーズに運ぶように気を遣っている。さらに移籍の噂がある選手、移籍したばかりの選手は招集しないなど、選手やクラブに最大限の配慮もしている。
その森保監督が「現実なんで」と言うのは、表に出てこない招集の苦悩があるということなのだろう。「『IW』外での試合の時、招集できないのを認知していただいて、(メンバー発表記者会見で言う)『その時のベスト』というところを分かっていただけるようになれば」とも漏らした。
日本代表であってもこういう事態に直面する。ということは、「IW」に大会が組まれていない五輪に海外クラブ所属の選手はほぼ招集できないということだ。Jクラブは協力的と言っても、五輪期間中にもリーグ戦は開催される。そのため選べる人数は1クラブ2人までになりそうだ。華やかな代表チームや国際大会の裏で、こういう「現実」があるのが垣間見られた。(森雅史 / Masafumi Mori)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
日本代表パリ五輪メンバー18人予想 オーバーエイジはDF&ボランチに割け【前園真聖コラム】
FOOTBALL ZONE / 2024年5月9日 7時30分
-
「チームとしての成果」アジア王者として帰国の大岩剛監督、パリ五輪に向けOA枠に言及「今はフラット」、ラージグループ作成へ「しっかり見極める」
超ワールドサッカー / 2024年5月5日 8時15分
-
「使わないことも」 大岩監督、パリ五輪のOA枠採用は明言せず「今はフラットな状態」
FOOTBALL ZONE / 2024年5月5日 7時50分
-
U-23日本代表はパリ五輪まで迅速準備へ! 6月に海外遠征予定、壮行試合は無し、久保招集は「クラブがNoならNo」
ゲキサカ / 2024年5月1日 6時44分
-
6月のW杯2次予選も主力中心のメンバー選考へ! 欧州視察終えた森保監督「可能な限り試していきたいが…」
ゲキサカ / 2024年4月30日 21時40分
ランキング
-
1元なでしこ鮫島彩 今季限り現役引退「最高に幸せなサッカー人生でした!」 11年W杯優勝で国民栄誉賞
スポニチアネックス / 2024年5月23日 17時44分
-
2大谷翔平の5倍「エグすぎだろ」 イチローの圧倒的「509」にネット衝撃「偉大さ再認識」
Full-Count / 2024年5月23日 8時21分
-
3大谷出場試合を人気K-POPアイドルが訪問 フォロワー驚異の378万人…山本由伸と写真撮影
Full-Count / 2024年5月23日 9時33分
-
4今永昇太 MLB選出の先発投手ランキング1位に 識者「懐疑的→納得→完全に受け入れ」と評価急上昇
スポニチアネックス / 2024年5月23日 15時26分
-
5大谷翔平、ロサンゼルスの高級住宅地に12億円超の豪邸購入…地元紙報道 本拠地から約20分
スポーツ報知 / 2024年5月23日 7時14分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください