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岡崎慎司は「背伸びしない」 デメリットをメリットに変えた“光”を見出す力【コラム】

FOOTBALL ZONE / 2024年5月22日 18時30分

■なぜマインツでトゥヘル監督のサッカーにハマったか

 元日本代表FW岡崎慎司は今年2月26日に今季限りでの現役引退を発表し、5月18日に現役ラストマッチを終えた。さまざまな凄さを持った選手だったが、その1つに解釈力と実践力が備わっていたことが挙げられる。マインツ時代、トーマス・トゥヘル監督が指揮するチームのサッカーに上手くハマっていた。

「守備が洗練されてるから、やりたいことが分かりやすい。逆サイドを見ても、俺と同じで中を絞りながらサイドに追いやれてる。前にプレッシングかけて(ボール)取れる時が一番いいんで。監督にも下がるばかりじゃなくて、前にプレッシングかけに行ってくれって言われています」

 岡崎はやりやすいと話していたが、トーマス・トゥヘル監督にしても岡崎は伝わりやすいと感じていたはずだ。戦術的な話は受け止め方の解釈が違うと噛み合わなくなる。分かったつもりでも空間や状況の把握能力に差があれば、その時々で異なる準備をし出すことにもなる。

 例えば、「センターバック(CB)がボールを持ったらワンサイドを切りながら、弧の動きをするようにプレスをかけ、サイドバック(SB)やウイングバック(WB)にパスが出るように仕向けよう」「1人がボールを持ったCBにプレスをかけたら、もう1人のFWかトップ下の選手はセンターにいる相手MFへのパスコースは切らないといけない」「相手にボールが渡りそうな時に即座に飛び込んでプレスをかけられる距離感を保ってほしい」みたいな戦術アプローチがある。

 それこそグラスルーツの現場でも普通に指導される内容だが、本当に指導者がイメージする通りの動きができる選手は意外と少ない。「分かったか?」と聞くと、「分かった」と答える。でも何度も同じミスをしているから、繰り返し説明しようとしても「その話はもう聞いた。分かってるよ」という反応を示す選手もいる。

 もちろん優れた指導者というのはそうした場合に、異なるアプローチで修正したり、自分の意図を明確に伝えて実践してもらえるようにできる能力を持っているが、とはいえ、そうした“回り道”をせずに選手に伝わるのであれば、それに越したことはない。

■岡崎の守備アプローチは「本当に上手い」

 岡崎は守備での立ち位置やボールを持った選手へのアプローチが本当に上手い。ドイツ語で相手マークから離れるためには「影から出ろ!」という表現を使うのだが、岡崎は相手選手を巧みに「影」の中へと入れてしまう。それも危険なところへのパスコースを消すだけではなく、相手が違うアクションに転じた時にも、すぐ次の動きへ移行できるような位置取りをする。そこにいるだけでうしろの選手が本当に助かる動きだ。

「やれることをやらなきゃ。背伸びしてもダメ。やれることをやったうえでどれだけ引き出しを増やして行けるかだと思う。原点回帰じゃないけど、勝つために自分がチームに足りないことを補えるっていうのが自分のポイントだと思う。生き残って行くために。自分の色を出していくっていう意味では、周りのフォローをしつつもシンプルな形でチャレンジし続ける。この続けるってことが大事だと思う」

 昔、岡崎がそんな話をしてくれたことがあった。自分の特徴を生かし切るために考える力が岡崎にはあったのだろう。デメリットをデメリットのままにせず、むしろメリットにするためのやり方を思いつく。身体のサイズにしてもそうだ。世界レベルでは身長190センチでも素早く動けるセンターフォワード(CF)はそれなりにいる。

「何もなかったらハンデではある。でも何で勝負するかってところだけ明確にあれば背が小さくても大丈夫。得意なものが突出してたら、ハンデじゃなくむしろプラスになったりする。動きの質とか考えてやれてるんで、俺は得したことがいっぱいあると思う」

 苦しい状況も視点を変えたらポジティブに解釈ができるし、その解釈を信じ込めるだけの取り組みをし続けていく。どれだけ深い霧の中に放り込まれても、岡崎はそれを振り払い、光を見つけてきた。人生における取り組みとしても、大きなヒントがそこにはあるのではないだろうか。(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

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