ゆとり世代が知らない”昭和”バイト物語 vol.04「万引き犯人役」
ガジェット通信 / 2016年7月23日 10時15分
話にきくところによれば、ベテランの刑事や警察官が最も手を焼くのは、思想犯などの確信犯と、万引きなどの常習犯だそうですな。
特に、万引き犯の場合は、犯罪者本人の窃盗癖(クレプトマニア)と呼ばれる精神疾患にも起因しているケースが多くて、一概にモラルや社会常識などに訴えても、ほとんど効果がないそうです。
つまり、またしばらくすると、ストレス解消などの目的から犯罪に手を染めてしまうことも珍しくないそうですから、まあ、ホンマに病気ですわな。
本人が病気の場合、家族などの協力により、強制入院などの治療が行なわれたりもするそうですが、それはあくまでも本人サイドの問題であり、特に、身内の恥を隠蔽したいという親族の思いに基づく結果に過ぎないのでしょう。
しかし、スーパーや大型店など、店舗を営業する側としては、そうした個人の対応を待っている余裕もないわけで、日々の営業の中で、如何に被害を食い止めるか、そこに大変に
苦労するわけですな。
最近は、万引きGメンと呼ばれる特殊任務を命じられた保安掛が店内を巡視して、彼らの独特の勘を武器に、挙動不審者の行動を監視したりしています。また、常習性のある客が来店すると、隠語のアナウンスで店内に放送し、各売り場への注意を促したりします。
さらには、店内の各所に監視カメラを配置して死角を無くして、決定的瞬間を証拠テープに収めることに努めています。
とはいえ、このような消極的な予防法、つまり、万引き犯が犯罪を犯すのを待って、
それを証拠に警察に突き出すといった防止法には限界があります。
なぜなら、そのような状況で捉まえられた万引き犯の多くは、その場で開き直ったり、
表面的には反省の色を浮かべながらも、平気でまた、再犯を繰り返すという傾向にあるからです。
つまり、彼らにとっては、見つかったり、捕まったこと自体が、「運が悪かった」
としか、受け止められない精神構造にあり、万一、見つからない場合は、「成功体験」として、また次の犯行へと駆り立てるモチベーションになる精神的満足を得るからです。
そうした連中に対して、店側から積極的に犯行抑止を働きかける方策が一つあります。
これは、同じく、万引きの常習に悩むアメリカのスーパーが始めた手法で、それにより、一定の効果を挙げたという報告を耳にした関西の某スーパーの経営者が、実際に自社の店舗に導入した手法なのです。
その万引き防御策とは、「囮逮捕」です。いわば、「見せしめ」ですな。
つまり、万引き犯役のアルバイトを雇って、来店客が大勢見守る中で、派手に逮捕劇を演じて、「万引きすれば、どのような目に遭わされるか!」を衆目に披露するというパフォーマンスを行なうわけです。
以下は、実際に私が犯人役を演じた時の体験談です。
その寸劇は、万引きが多発する時間帯を狙って、ランダムに行なわれました。
万引き犯を演じるアルバイトには、ほとんどプロと言ってもいい、常習の万引き犯の目から見ても、自分と同じ犯人と思い込んでしまうほどの演技力が要求されます。
また、この場合、捉まえる方にも同じレベルの演技力や訴求力、それに何より、こちらには、常習犯を震え上がらせるだけの迫力が求められます。
これがわざとらしくならないようにするのが、一番大変でした。
一方、捕まえる側もプロの保安員ではなく、アルバイトを雇うこともありました。
その場合は、捕まえる側を、店の従業員ではなく、たまたま居合わせた客や私服の刑事、地域の生活補導員といった設定にするわけです。その理由は、、いくら万引犯へのみせしめとはいえ、店側としては、あまり厳しい姿勢をアピールし過ぎると、怖いイメージを一般の客にも植え付けてしまうという懸念が働く場合です。
衆目が見守る中、万引き犯として捕まったアルバイトは、素顔を晒して、泣きながら、
事務室へと連行されます。これが、女性がやると、かなりの迫力があります。
ただ、それを見ている側の中には、知り合いがいないとも限りませんので、アルバイトとはいえ、ハードな仕事には違いないと思います。
基本的に同じ店では二度と演じられませんので、日当はそれなりに良かったのですが、
あまり、多くの回数は稼げませんでした。
今でも、店内で派手な万引き逮捕の騒動が起きると、「アルバイトなのかな?」という目で見てしまいます。
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(執筆者: マーヴェリック) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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