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愛情が故の親の「励まし」がなぜ逆効果なのか?【「不登校」「ひきこもり」を考える】

日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年5月11日 9時26分

【「不登校」「ひきこもり」を考える】#12

 自らの本音を押し殺し、“いい子”を装って一次感情を健全に感じる術を知らずに大きくなっていく過程で、一次感情に向き合わず回避ばかり続けていると、とにかく逆境に打たれ弱くなります。

 失恋や受験で第一志望に落ちたといったつらい挫折でも、等身大でがっかりして一次感情で落胆し深く悲しみを感じきれば、心のモードが切り替わり、“過去”の苦い思い出としては残っても、次の現実と向き合えるのが健康な感情のメカニズムです。

 しかし、以前にお話しした事例のAさんの親のように、つらい体験をした直後に「何をメソメソしていじけているの」などとハッパをかけ、悲しみを感じて受け止めることを遮るやり方は、繊細な子ほど感情不全を強めてしまいます。もちろん、親としては「お子さんの悲しむ姿を見たくない」「息子には強くあってほしい」という愛情が故なのだと思います。

 実際に、それで「なにくそ!」と雑草魂が湧き上がる強いお子さんがいるのも事実です。一方で、繊細な子ほど落ち込んで悲しむという自然な一次感情を感じることを許されないために、そのしわ寄せとして生じた二次感情が「膨れ上がった挫折感や恐怖体験」として脳のノイズとして記憶に深くかつ長く刻み込まれてしまいます。この膨れ上がった「恐怖感」は、次に何かにチャレンジが必要な時に、向き合うべき等身大のリスクと正対する勇気をくじき、この繰り返しで困難に立ち向かう力がいつまでもつかないまま、自分を偽る言い訳や取り繕い、困難を逃げ回る器用さだけがうまくなるのです。

 逃げ切れない現実に“白旗を挙げる”という結果のひとつが、まさに不登校やひきこもりとも言えるのです。(つづく)

▽最上悠(もがみ・ゆう)精神科医、医学博士。うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。

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