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錦織圭は相性のいい8月の全米オープンを見据え、時代の急な流れとも戦っている

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年5月11日 10時0分

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フリッツ(左)と錦織=2023年アトランタ・オープン(C)共同通信社

【スポーツ時々放談】

 例年より早い初夏の訪れ、ヨーロッパではテニスシーズン真っ盛りだ。全仏オープンの開幕が迫ったが、ダニエル太郎が面白いことを言っていた。

「サーブを1本だけにして4ゲーム先取(現行は6ゲーム)とかにした方が質が上がり時間もセーブできる……」

 プロスポーツは試合時間の短縮に躍起で、男子ツアーはダブルスの試合中の選手の着席を禁ずる新ルールを導入した。審判台下のベンチはもともと荷物を置くためで、B・J・キングは自分たちの時代のウィンブルドンにはベンチもなかったと書いている。時代は変わるものだ。

 80年代、全仏は人気がなかった。球速を減じるクレーコートは長いラリーが続き、テレビの間尺に合わなかった。スピーディーなサーブ&ボレーが人気で、その代表がマッケンローだ。90年代にその流れが変わった。衛星放送の発達で時間枠が拡大し、冷戦崩壊でクレー巧者の東欧勢が参入した……いまネットが新たな改革を迫り、当然、プレーも変わってきている。

 ダニエルがサーブを1本だけにと呟いたのは、単に時間節約ではない。サーブが2本あれば、1本目にリスキーな爆弾サーブを打ち込めるから試合が単調になりかねなかった。ところが、メドベージェフを筆頭にしたシナー、アルカラスらのポスト・フェデラーはセカンドサーブが格段に向上し、サーブ1本でも大差なさそう……トップ100で活躍するダニエルの実感であり、錦織圭の戦いでもある。

 膝の故障の回復が遅れる34歳は今季、3月に1試合プレーしただけで、エントリーしながら棄権というもどかしい状況が続いている。

 昨秋、悔いが残ることがひとつあると話していた。1年8カ月ぶりに出場した6月の下部大会で優勝。1カ月後のツアー復帰戦、アトランタの準々決勝で、それまで3戦全勝だったテイラー・フリッツ(26歳=当時世界9位)にストレートで負けた。フリッツは196センチの長身からエース7本を奪い、ファーストサーブのポイント率86%、セカンドも76%。完敗だった。錦織は無理をしたのではないかと振り返り、再び休養に入った。ブランクの重み、時代の流れ──。

 個人競技のテニスに引退という言葉は馴染まない。デ杯監督も務めた往年の選手は「7回引退した」と言われ、ボルグは26歳で“引退”、2度“復帰”している。錦織は全仏も無理はしないだろう。コートだけが戦場ではない。相性のいい8月の全米を見据え、時代の流れと戦っている。晴れ姿をいつまでも待ちたい。

(武田薫/スポーツライター)

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