進化を迫られるカンボジアの職業訓練校ーJICA
Global News Asia / 2016年11月30日 10時0分
2016年11月21日、JICAカンボジア事務所が発行する「カンボジアだよりNo63」に『若い力を「金の卵」に高まる産業人材のニーズ、職業訓練校に熱い視線』と題する記事が掲載された。
(記事)●ASEAN技能競技会で初メダル・初入賞!
9月下旬、マレーシアのクアラルンプールで「第11回 東南アジア諸国連合(ASEAN)技能競技会」が開かれました。メカトロニクス、電気 工事、ITソフト、溶接、木工から、美容やレストランサービスまで、幅広い分野にわたる25種目の技能を競う大会です。 この大会で、今回初めて、カンボジアの代表が銅メダルを含む上位入賞を果たしました。銅メダルを獲得したのは「産業オートメーション」という 競技に出場したチームです。また、電気工事、料理、レストラン給仕でも入賞者が出ました。 全参加者はブルネイを除く9か国からの276人。カンボジアの選手団は、労働職業訓練省傘下や私立の職業訓練校、技術大学から参加した13人 で、参加国の中で最も少なかったのですが、初メダル獲得、初入賞の快挙を成し遂げました。
●第2次職業訓練ブーム
今、経済成長とともに急速にニーズが高まっている産業人材の育成。なかでもカンボジアに最も不足しているのは、 ものづくりの現場で製品管理や生産ライン監督などを担う「テクニシャン」だといいます。高度な 専門性で開発を担うエンジニアと、一般労働者との間に位置する人たちであり、カンボジアの工業が、現在の労働集約型産業からより付加価値の高い、多様化・高度化した産業へと進化するのに欠かせない存在です。競技会で技術を競うのは、そういったテクニシャンの卵たちなのです。「カンボジアには今、第2次職業訓練校ブームがおきています」。JICAが2015年から実施している職業訓練の質を高めるためのプロジェクトで、チーフアドバイザーを務める奥村英輝さんは指摘します。内戦終結後の復興期に、収入に直結する技術を身につけてもらうため、職業訓練所の設立が相次ぎました。カンボジアの職業訓練は、国民の貧困対策が主な目的だったともいえます。しかし今、 職業訓練校が注目されているのは、産業人材の育成が主な目的であり、それを強く求めているのは産業界です。ともに「急務」であることは同じですが、求められる内容は大きく変化しています。
●電気分野に絞り込む
ところがカンボジアの職業訓練校は、即戦力となったり、生産現場のコアとなる人材を産業界に送り出すには多くの改善が必要な状態にあります。国内には公立で39の職業訓練校があります。しかし統一的なカリキュラムはなく、教員のレベルもまちまち。技術習得に必要な実習施設も十分といえません。 そこでJICAの「産業界のニーズに応えるための職業訓練の質向上プロジェクト」は、2020年までの4年半で、実践的な技術を身に着けた「テクニシャン」を産業界に送り出すための標準カリキュラムの作成、教員の指導などに取り組んでいます。 特徴的なのは、プロジェクトの対象を「電気分野」に絞ったことです。製造業の操業を滞りなく進め、それを本格化するために、また、建設ブームのカンボジアでは電気系統のテクニシャンへのニーズが高いことなどが、電気分野の技術・技能を伸ばしていくことが必要であるとの考えです。 奥村さんは「日系企業を含め産業界のニーズを的 確にとらえて対象を絞り込むことで、具体的な成 果を出したい」と話します。 「ものづくりはその国を強くする。それを支え るのは内製化された技術の伝承であり、人材育成 だ」。カンボジアの職業訓練校は、進化を迫られています。
【編集 : YA】
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