投資信託の“悪いイメージ”は銀行のせい!?…じつは「資産の安全な保管方法」といえる理由
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月1日 12時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
退職金が振り込まれた途端はじまる、銀行員からの「投資信託」勧誘。その必死さから「投資信託って、怪しいんじゃないの?」と疑っている人もいるかもしれません。しかし、じつは「資産を比較的安全に保管できる方法だともいえる」と、経済評論家の山崎元氏はいいます。投資信託の仕組みとメリットをみていきましょう。※山崎元氏は2024年1月1日に逝去されました。衷心より哀悼の誠を申し上げます。
「投資信託」は、いろんな会社の“詰め合わせパック”
【登場人物】 ・山崎先生(山崎 元)……経済評論家。東京大学経済学部を卒業後、三菱商事に入社し、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券など、合計13社で金融関係の仕事を経験。
金融業界の“裏の裏”まで熟知し、経済評論家となったあともテレビや雑誌、YouTubeなど多くのメディアで活躍。切れ味の鋭い発言を連発している。お金のことをなんでも知っていて説明もわかりやすいが、ちょっとクセが強い。
・大橋(大橋 弘祐)……大手通信会社から、37歳で一念発起し作家・編集者に転職。お金の知識はなく、経済のニュースを聞いてもよくわからない“ド素人”。給料が上がらず税負担が増えるいま、将来に不安を抱え「お金を増やしたい!」と思っている。
「投資信託」って、怪しくないの?
大橋:先生、「銀行で投資信託は買わないほうがいい」って言ってましたよね……。
山崎先生:うん。言ったよ。
大橋:(開き直った……)。
山崎先生:「銀行に買うべきものはない」と言っただけで、投資信託の全てがダメというわけじゃない。ネット証券で売っている投資信託の中にはいいものもある。
大橋:……。投資信託ってプロにお金を預けて、自分の代わりに運用してもらうやつですよね。
山崎先生:そう。ファンドとも呼ぶ。わかりやすく言うと「詰め合わせ」だね。株に限って言うと、ひとつの袋の中にいろんな会社の株が入ってる詰め合わせパックだと考えればいい(図表1)。株をひとつ一つ買わずにすむ。
5,000種類以上ある投資信託の99%は“検討に値しない”
大橋:「信託」って言葉があやしくないですか? 信じて託すって、ものすごくダマされそうなイメージがあるんですよ。実際、前の会社を辞めて退職金が振り込まれたら、すぐ、銀行の人から携帯に「投資信託やりませんか」って電話かかってきましたもん。そうやって必死に営業かけられると、騙されそうな気がするんですよ。
山崎先生:たしかに、投資信託でも保険でもマンションでも、売る側が熱心に売ってくるものは、ほぼ100%自分たちが儲かるから売ろうとしている。銀行も客のためになるやつじゃなくて、自分たちが手数料を稼げるものを売ろうとする。それで投資信託の悪いイメージが形成されていく。
大橋:ですよね……。
山崎先生:投資信託って日本だけでも5,000種類以上あるらしいけど、おそらく99%は検討にも値しないゴミなんだよ。でもその中にごく少数だけいいやつもあるの。
大橋:(ゴミってひどいな……)そんないいのがあるんですか。
投資信託は「分散投資」と「海外への投資」が可能
山崎先生:あるよ。じゃあ、投資信託のメリットを順番に説明しようか。
まず、最大のメリットは、分散して投資できることだね。例えばソフトバンク1社の株だけを買うと、ソフトバンクの株が大きく下落したときに、思いっきり影響を受ける。
でも、投資信託は「詰め合わせ」だから、袋の中にはトヨタもセブンイレブンもパナソニックもみずほ銀行も入っている。どれかが下がっても、全体でみたら影響が減らせるというのが分散投資の基本的な考え方。「卵は同じカゴに盛るな」っていう使い古されたことわざがある(図表2)。
大橋:それ聞いたことあります。
山崎先生:分散投資をしておけば、大きく増やす可能性も減るけど、大きく減らす可能性が減るから、君みたいに安全に運用したい人に合っている。でも、これを自分でやると大変でしょう。何社も株を買わなきゃいけないから、お金も労力もかかる。それを、投資信託を運営している会社が、みんなからお金を集めてまとめてやってくれる。
大橋:なんだか、少しいいシステムに聞こえてきました。
山崎先生:あと、投資信託のいいところは気軽に海外にも投資できるってこと。
大橋:海外ですか?
山崎先生:日本の株式市場なんて世界の株式市場の1割にも満たない。世界にはアメリカという世界最大の投資先もあるし、インドやブラジルにも投資先はある。でも、海外の株式に投資するには、すごく手間が掛かる。しかし、これも運用会社がまとめてやってくれるの。
大橋:だまされる可能性ってないんですか。投資信託の中身を入れ替えて、本当は増えてるのに、「減りました」と報告されるなんてことは……。
山崎先生:それはまずない。運用の内容は顧客に詳しく開示しなければいけないと法律で決まっているし、運用されている資産自体は、銀行や証券会社など販売しているところでも、運用を指示する運用会社でもなくて、信託銀行という別の場所で保管されているから、ごまかしはやりにくい(図表3)。
資産がゼロになるリスクはないの?
大橋:じゃあ投資信託を買って、そのあとに証券会社がつぶれたりして、「あなたの投資信託はなくなりました」「信じて託したのに……」ってことはないんですか?
山崎先生:それもない。投資信託は買ったところ(銀行や証券会社)がつぶれても、さっき話したように資産は信託銀行で管理されているから大丈夫なんだ。実際、1997年に山一證券が自主廃業を発表して、その時、わたしは山一證券に勤務していたんだけど、顧客から預かっていた資産は無事だったよ。
大橋:じゃあ、その信託銀行っていうところが潰れる可能性はないんですか。
山崎先生:もちろんある。でも、客から集めた資産は、会社のお金と別で管理するよう法律で決められているから、信託銀行が潰れたとしても不正がなければ大丈夫だよ。投資信託っていうのは資産を比較的安全に保管できる方法だともいえる。
まとめ
・投資信託はプロに運用してもらえる株の詰め合わせ。
・分散投資ができて、海外にも投資できる。
・投資した資金は信託銀行で管理されていて比較的安全である。
山崎 元 経済評論家
大橋 弘祐 作家/編集者
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