食べていないのに〈血糖値が上がる〉のはなぜ?最近の高校生が学んでいる「血糖濃度が上がる仕組み・下がる仕組み」【大人の教養】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月5日 7時30分
(※写真はイメージです/PIXTA)
糖尿病の話題でよく聞く「血糖値」とは、血糖濃度を測定した値のことです。血糖値もとい「血糖濃度」が上がったり下がったりするのは、なぜなのか。また、どのような場面で変動するのか。これらの知識は、実は高校生物で解説されています。伊藤和修氏の著書『大人の教養 面白いほどわかる生物』(KADOKAWA)より一部を抜粋し、見ていきましょう。現在の高校生物の教科書に準拠した内容ですので、教養にしては少々詳しすぎる部分もありますが、やこしいと感じる部分はサラっと読み飛ばしてしまってOKです。
<前回記事> 【※大人の教養】真面目な話、なぜ〈排せつ物〉は茶色なのか…?答えは“生物の授業”に隠れていた
そもそも「血糖濃度」とは?
残念! 血糖濃度は「血液中のグルコースの濃度」です。グルコース以外の糖が溶けていても血糖としてはカウントされません! ヒトの血糖濃度は、食事によって上昇したり、運動によって低下したりしますが、0.1%(≒1mg/mL)になるように調節されています。
血糖濃度は、図表1のように調節されているんですよ。
食事などによって血糖濃度が上昇すると、視床下部がこれを感知し、副交感神経によってすい臓のランゲルハンス島のB細胞を刺激します。すると、ここからインスリンが分泌されます。
すばらしい! そのとおりですね♪ じつは、図表1からもわかると思うけれど、ランゲルハンス島のB細胞自身も血糖濃度の上昇を直接感知して、インスリンを分泌することができます。
インスリンは肝臓や筋肉に作用し、ここでのグリコーゲンの合成を促進します。また、さまざまな細胞に対して作用し、標的細胞によるグルコースの取り込みや消費を促進します。
グリコーゲンというのはグルコースがたくさん繋がった物質です(図表2)。肝臓や筋肉の細胞内でグリコーゲンをどんどんつくれば、グルコースがどんどん取り込まれて、血糖濃度は低下します!
逆に激しい運動などで血糖濃度が低下すると、視床下部が感知して交感神経を通じて副腎髄質(ふくじんずいしつ)からアドレナリンが分泌されます。アドレナリンは肝臓に作用してグリコーゲンを分解してグルコースをつくらせ、血糖濃度を上昇させます。また、交感神経の刺激によってすい臓のランゲルハンス島のA細胞からグルカゴンが分泌されます。グルカゴンもアドレナリンと同様にグリコーゲンの分解を促進します。また、ランゲルハンス島のA細胞自身が血糖濃度の低下を感知してグルカゴンを分泌することもできます。
血糖濃度の低下は命にかかわります! 血糖濃度の低下に対する応答はまだありますよ!!
ホルモンを分泌させ、その結果、副腎皮質(ふくじんひしつ)から糖質コルチコイドが分泌されます。糖質コルチコイドはさまざまな組織の細胞に対して作用し、タンパク質からグルコースを合成させ、血糖濃度を上昇させます。
糖質コルチコイドは強いストレスが加わったときにも分泌されることが知られています。強いストレスが継続的に加わると、血糖濃度が高くなってしまいます。会議やテストが迫ってくると、血糖濃度が高くなる傾向にあるんですね。
血糖濃度の高い状態が続くと…どうなる?
糖尿病は、血糖濃度が高い状態が続く病気です。糖尿病の原因はさまざまですが、ランゲルハンス島のB細胞が破壊され、インスリンが分泌できなくなることが原因の糖尿病をⅠ型糖尿病といいます。そして、これ以外の原因による糖尿病をⅡ型糖尿病といいます。Ⅱ型糖尿病には、B細胞の破壊とは別の原因でインスリンが分泌できない場合や、標的細胞がインスリンに反応できない場合などさまざまな原因があります。
生活習慣病として扱われる糖尿病はⅡ型糖尿病です。日本人の糖尿病患者の多くはⅡ型糖尿病で、食事や運動などの生活習慣の見直しを必要とする場合が多いですね。
血糖濃度が高くなると腎臓で原尿中のすべてのグルコースを再吸収しきれなくなり、尿中にグルコースが排出されます。これを糖尿病といいます。血糖濃度が高い状態が続くと腎臓に負担がかかるだけでなく、動脈硬化が起こり、心筋梗塞(しんきんこうそく)や脳梗塞のリスクが高まることがわかっています。
さて、問題です! 図表4のグラフは健康な人と糖尿病の患者のAさんとBさんの食事前後の血糖濃度とインスリン濃度の変化のグラフです。AさんとBさんのどちらかがⅠ型糖尿病、他方がⅡ型糖尿病です。さぁ、Ⅱ型糖尿病なのはどちらでしょうか?
伊藤 和修(いとう・ひとむ) 駿台予備学校 生物科専任講師 京都大学農学部卒(専門は植物遺伝学)。派手な服を身にまとい、ノリノリで行われる授業では、“「わかりやすさ」と「おもしろさ」の両立”をモットーに、体系的な板書と丁寧な説明に加え、小道具(ときに大道具)を用いて視覚的なインパクトも追求。 著書は『大学入学共通テスト 生物の点数が面白いほどとれる本』『大学入学共通テスト 生物基礎の点数が面白いほどとれる本』『大学入試 ゼロからはじめる 生物計算問題の解き方』『直前30日で9割とれる 伊藤和修の 共通テスト生物基礎』(以上、KADOKAWA)、『生物の良問問題集[生物基礎・生物] 新装版』(旺文社)など多数。
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