65歳「月収40万円」のサラリーマン〈年金停止〉に憤り「繰下げ受給」を選択も、70歳でまさかの〈年金減額〉に「何かの間違いでは?」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月18日 10時15分
いまや「定年後も働く」がスタンダードなスタイル。高齢者にはどんどん働いてもらって、人手不足を解消しよう! という国の目論見も見え隠れしています。しかしそこで問題になるのが年金制度。どうも納得できないことが多いようです。みていきましょう。
定年を迎えても「働き続ける」が、いまどきのスタイル
厚生労働省『令和4年就労条件総合調査』によると、定年制を定めている企業は94.4%。そのうち、一律定年制を定めている企業は96.9%。つまり全企業の91%が、一律定年制を導入しています。
では何歳が定年かというと、最多は「60歳」で72.3%、続いて「65歳」が21.1%。つまり、60歳をひとつの区切りにする企業は全体の66%ほど、65歳を区切りとしている企業は全体の20%弱というのが現状です。
定年制を導入する一方で、定年後に再雇用などで同じ会社で働き続けらえる制度を導入する企業も増えています。そのようななか、一律定年制を定めている企業のうち、最高雇用年齢を定めている企業は55.1%。そのなかで「65歳」とするのが64.7%、「66歳以上」とするのが31.7%でした。
とはいえ、70歳まで働けるよう整備することが企業の努力義務となっている昨今、希望すれば結構な年齢まで現役でいられる世の中になりつつあります。
また定年後の働き方で考えたいのが雇用形態。同じ会社で働くには、再雇用で契約社員や嘱託社員に転換というケースが多いですが、あくまでも正社員にこだわりたい、という人も少なくないようです。
厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』で、60代の正社員と非正規社員の給与を比較すると、月収で10万円弱、年収で110万~130万円程度の差が生じます。「働く以上、しっかりとした対価をもらいたい」という人であれば、非正規社員よりは正社員、といったところでしょうか。
【60代サラリーマン「正社員と非正規社員」の給与比較】
■60~64歳
正社員:37.2万円(39.6万円)/571.5万円
非正規社員:28.5万円(30.4万円)/434.4万円
■65~69歳
正社員:33.1万円(34.8万円)/468.2万円
非正規社員:25.4万円(27.0万円)/355.2万円
※数値左より、月収(手当て込みの月支給額)/賞与や手当てなどを含んだ年収
稼いでも年金停止に「ばかばかしい」…「繰下げ受給」で年金増額に喜んでいたが
定年後も働くことが珍しくなくなった昨今。気をつけたいのは、70歳未満で厚生年金保険に加入した場合、または70歳以上で厚生年金保険の適用事業所で働いている場合、老齢厚生年金の額と給与や賞与の額に応じて、年金の一部または全額が支給停止となる「在職老齢年金」。
令和6年度の支給停止調整額は50万円。たとえば、65歳で受け取る年金は老齢厚生年金は月13万円、月収(総報酬月額相当額)が60代後半の平均値である40万円だったとしましょう。在職老齢年金による調整後の年金支給額は「13万円-(13万円+40万円∸50万円)÷2」。つまり、月11.5万円の支給となります。
――働きながら年金を受け取るだけで、年金停止って……たまったもんじゃないな
少々、憤りを感じるのも仕方がありません。そこで生活していくために十分な収入があるなら、「年金の繰下げ」を選択するのもひとつの手。これは老齢基礎/厚生年金を、65歳で受け取らずに66歳以後75歳までの間で繰り下げて増額した年金を受け取ることができる制度。1ヵ月受給を遅らせるごとに0.7%、年金が増えていき、仮に70歳まで繰り下げたら42%増となります。
――老齢基礎年金が月6.8万円だから「月9.65万円」
――老齢厚生年金が月13万円だから「月18.46万円」
――合わせて「月28.11万円」。すごくお得じゃないか!
誰もがそう思うでしょう。しかし、上の計算には、少々間違いがあります。
――老齢基礎年金が月6.8万円だから「月9.65万円」
これは合っています。続いて厚生年金。
――老齢厚生年金は、支給停止額を除いて計算するから「月16.33万円」
――合わせて「25.98万円」
これが正解。月2万円強、減額されるイメージです。「え、老齢厚生年金をもらっていないのに、支給停止を前提に計算するの? 何かの間違いではないのですか?」と、多くの人が疑問に思うかもしれませんが、そういう制度なので仕方がありません。
在職老齢年金制度で、年金減額となったのは、21年度末、65歳以上で49万人。働く受給権者の17%にあたります。働き損にならないように調整する人も多く、人手不足が叫ばれているなか、高齢者に働いてほしいのか、働いてほしくないのか、ちぐはぐな制度設計になっています。岸田首相は、制度の縮小や廃止を含めて、議論を進めていく必要があると述べています。
[参考資料]
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