「不労所得のありがたさに震えました」50歳万年係長、不動産投資を志す…最低限知っておくべき不動産投資の基礎知識とは?【FPが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月26日 11時15分
(画像はイメージです/PIXTA)
不動産投資は「ミドルリスク・ミドルリターン」といわれ、物件の選定さえ外さなければ、それなりに手堅い収益をあげられるといわれています。ここでは、不動産投資の基本について、FP資格も保有する公認会計士・税理士の岸田康雄氏が、初心者にもわかるよう、平易に解説します。
50歳会社員です。会社では万年係長で出世は見込めず、給料も頭打ち、年金も期待できません。新NISAやiDeCoを細々とやっていますが、先は長いです。
しかし先日、遠縁の親族から棚ボタ式に小さな貸し駐車場を相続したことで、不労所得の素晴らしさを実感。月額5万円ですが、口座に振り込まれた金額を見て、思わず震えました。
すでに中高年といわれる年齢ではありますが、これから本格的に不動産投資にトライしたいと思っています。こんな私に、不動産投資とはどのようなものか、基本的なところから教えてください。
50歳会社員 神奈川県川崎市
そもそも「不動産投資」とは?
不動産投資とは、賃貸収益と売却益から利益を得る手法です。個人投資家の場合は賃貸収益が主な目的ですが、その場合も、賃貸経営に係る管理が必要です。
不動産の初期投資の金額は高額です。賃貸収入によってキャッシュフローが得られますが、空室リスクや市況の変動などのリスクもあります。
運用管理の面では、安定したキャッシュフローを維持し、資産価値を保つための賃貸管理が重要です。また、不動産の資産価値は市況によって変動し、流動性は低いですが、インフレ時には価値が上昇する傾向があります。もちろん、不動産投資にもさまざまなリスクがあるため、適切な管理と戦略が必須です。
「J-REIT(不動産投資信託)」とは?
「J-REIT」すなわち「不動産投資信託」とは、投資家から集めた資金で不動産を取得し、その賃貸収入や売却益を投資家に分配する金融商品で、証券取引所に上場されています。投資対象の用途は、オフィス、物流施設、商業施設、住宅、ホテルなどさまざまです。
J-REITは賃貸収入が収益源ですが、個別の不動産投資とは異なり、ポートフォリオを通じてリスク分散が可能です。流動性も高く、比較的低リスクです。また、利益の90%超を分配するなどの要件を満たせば、分配金を税務上の損金として扱うことができるため、投資家は高い分配金を期待することができます。
住宅、オフィス、商業施設など、用途によって不動産投資の特性が異なるため、各セクターの特徴を理解することが重要です。
「土地の有効活用」の3つの方法
土地の有効活用には「土地賃貸」「建物賃貸」「売却」の3つの方法があります。土地・建物の場合は、賃貸経営の面だけでなく、相続税削減効果までも、しっかり検討しなければいけません。
土地の上に建物を建てて賃貸する場合は、収支計画を慎重にチェックし、建築計画の妥当性を評価することが大切です。もしサブリースを行うのであれば、契約内容を慎重にチェックしてください。契約期間中の賃料が一定というわけではなく、一定期間ごとに賃料が下げられるリスクがあるため、注意することです。
土地を賃貸するのであれば、土地の特徴や投資規模、テナント需要などを考慮に入れた事業計画が必要です。とくに、土地の特性や用途地域の確認は、収支計画を立てる上での基礎となります。
また、収支計画を立てる場合、建築工事費や関連費用、税金や諸経費まで含めて計算しなければいけません。長期的な収入と支出を分析し、会計上の損益だけでなく、借入金返済まで考えた長期的な資金収支を検討することが大切です。リスクシナリオを想定し、許容できるリスクのレベルを明確にしておくべきでしょう。
収益不動産の取得
賃貸用の不動産を自ら建築するのではなく、すでに建築されている中古物件を購入することもあります。投資の自由度、投資額、賃料下落や空室リスクへの対応、遵法性の確認が、投資判断の重要な要素となります。
とくに、違法性のリスクを避け、テナントからの安定した賃料収入を確保するためには、物件の選定に注意が必要です。過去の収支実績を確認するとともに、将来の売却可能性を認識することが大切です。
管理面では、法規遵守、境界確認、書類管理の状況を把握します。また、大規模修繕に備えて、長期的に資金を蓄えておくことが必要です。
収益不動産の収支計画では、テナントからの賃料収入、運営経費、大規模修繕の履歴などを詳細に把握し、長期的な資金計画を立てる必要があります。また、売却時には、物件の流動性や資産価値を考慮し、適切なタイミングで売却することが重要です。5年を超えて所有した場合の税金は、譲渡所得に対して約20%です。
不動産投資の利回りは、その物件に対する需要の大きさを反映しています。流動性が高く、資産価値の安定性の高い物件を購入すれば、価格は高く、利回りは低くなります。反対に、流動性が低く、資産価値の安定性に疑問があるような物件を購入すれば、価格は低く、利回りは高くなります。
将来的な売却までを見据えると、利回りが低くなったとしても、流動性が高く資産価値の落ちにくい物件を選定する観点も重要でしょう。
投資判断指標
不動産投資の分析にはNOI、キャップレート、ROI、NPV、IRRなどの計算方法を理解し、これらを正しく利用することが重要です。NOIは純収益、ROIは投資利益率、NPVは正味現在価値、IRRは内部収益率を意味しています。
また、公示地価、固定資産税評価額、路線価格の違いを把握することも不可欠です。
投資判断の際には、様々な指標を使い分けることが求められます。物件自体の収益性、資金調達や借入返済を考慮した収益性、時間価値を考慮した指標などがあります。
例えば、表面利回りと実質利回りは物件の収益性を示しています。表面利回りとは、年間収入の投資金額に対する割合です。実質利回りとは、年間収入から、管理費・修繕費・公租公課・損害保険料などの運営経費を差し引いた純収益の物件価格に対する割合で、NOI利回り、キャップレートなどとも呼ばれます。
一方、ROIやCCRは資金調達を考慮した指標です。CCRとは、投資した自己資金に対する年間キャッシュフローの割合です。年間キャッシュフローとは、純利益から借入金返済額を差し引いた税引前の剰余金のことです。
そして、NPVやIRRは投資の時間価値を評価する指標です。
不動産の価値を評価するには、公示地価や固定資産税評価額、路線価格などの公的な指標を参考とすることが有用です。ただし、これらの指標は時価との乖離や遅行性があるため、それらを補正して価値を評価しなければなりません。
不動産ファイナンス
不動産投資では、銀行借入れによって資金調達することが一般的です。これによってレバレッジ効果を得ることができます。レバレッジ効果とは、物件の収益率が借入金利を上回るのであれば、投資額に対する借入金の割合を増やすことによって、自己資金に対する利回りを高めることができることをいいます。借入比率を示すLTVや、純収益が返済総額の何倍になるかを示すDSCR、借入償還余裕率は重要な指標です。
融資を受ける際には、利率や借入期間を考慮しなければいけません。一方の金融機関は、不動産の収益性と担保価値を評価し、融資の可否を決定します。
岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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