【ホンダ CRF1000L アフリカツイン試乗】納期未定!?デカいツアラーバイクがバカ売れの理由
&GP / 2016年8月25日 18時30分
【ホンダ CRF1000L アフリカツイン試乗】納期未定!?デカいツアラーバイクがバカ売れの理由
ホンダのバイクで会心のヒット作となっている「CRF1000L アフリカツイン」。
いまもバカ売れ中で、納期は未定、なのだとか!? こんなにデカいツアラーバイクが、なぜ人気なのか? 乗ってみると答えは簡単。走る楽しみもビッグなのでした!
■ワクワクさせられたRC213V-Sの誕生
潮目が変わった…。そう感じたのは、ホンダからレーサーレプリカの「RC213V-S」が市販された時のこと。価格は消費税込みで2190万円。クルマに例えるなら、これ、F1マシンにウインカーを付けて「お待たせしました!」というような代物。レプリカとはいってますが、ほぼ“リアル”レーシングマシン。簡単に乗りこなせるものでもありませんが、市販されたというワクワク感は、ハンパありませんでした。
さかのぼれば2011年のこと。ホンダの開発を担う本田技術研究所の取締役常務執行役員が、以下のような発言をして話題になりました。
「基本的に、乗りにくいものを作ってもしょうがない。ハーレーダビッドソンやBMW、ドカティみたいに、他の人に見せる“盆栽のようなもの”を作るのは、ホンダには無理。だから、少なくとも実用面、乗ってどうのこうのという部分は絶対負けないようにしろ、と社内の皆にはいってます。見せてどうだとか、飾ってどうだとかっていう部分はあきらめても構わないから、走りに関してはきちんとやれ、と」
かなり反響があったので、バイクに興味のある方ならご記憶のことと思います。決してインポートバイクを揶揄するつもりはなかったでしょうし、「乗ってどうか」という部分で勝負するのもアリでしょう。ホンダ独自の新しい突き抜け方に期待したものです。
そして2012年。“ニューミッドコンセプトシリーズ”と銘打って、エンジン、フレーム、足まわりなどを共通化し、ジャンルの異なる兄弟バイク3車種を発売したのです。4輪の世界でも進んでいるモジュール化をバイクの世界でも豪快に決めてみせたわけ。結果、低燃費で扱いやすく、お値段も安い(コスト安い)モデルが誕生しました。
でもね、これには正直、お茶を吹き出しそうになりました。16歳でバイク乗り始めるずっと前から、憧れの存在だったホンダのバイク。そんな同社がやりたかったことって、これなのか? そもそも、大型バイクを実用性で選ぶライダーって誰なんだろう? いまや、50ccの「スーパーカブ」だって趣味で選ぶ人がたくさんいるというのに…。
大型バイクは必然性ではなく、エモーションで乗るもの。少々、燃費が悪かろうが、扱いにくかろうが、お値段が高かろうが、ハートビートが高まるモデルを選ぶものですよね。
そんな途方もないガッカリ感を完全に払拭してくれたのが、RC213V-Sだったわけです。買えませんし、売ってもらえませんし、乗りこなせません。でも、いいんです! バイクにはこれくらい夢がないと!!
そして個人的には、RC213V-S以上の衝撃的な事件が! ついに帰ってきたのです。ニッポンのヘリテイジ、アフリカツインが。
■デュアルクラッチトランスミッションで変速は一瞬!
アフリカツインとは、ホンダの、いやニッポンを代表するエンデューロマシン。その起源は、1988年の「XRV650」といわれることが多いのですが、実は1983年の「XLV750R」まで遡らなければなりません。
ホンダ XLV750R
このバイクは、当時の“パリ・ダカ”に参戦するために開発された攻めのバイク。V型エンジンは、各シリンダーに3つのバルブとふたつのスパークプラグが備わり、低重心を狙って、エンジン下部にオイルを溜めるオイルパンがないドライサンプ方式とし、角形断面のアルミフレームをエンジンオイルタンクとして利用していたのです。駆動はドライブシャフト式。ドライブシャフトのハウジングがサスペンションアームを兼ねていました。
いやもう、スペックからして変態…、いや、本当にホンダらいしバイクです。残念ながら、V型エンジンのリア側シリンダーを巧く冷却できず、実戦で実力を発揮するには至りませんでした。
そんなバイクの末裔として甦ったアフリカツインは、エンジンをV型ツインから直列2気筒に変更したものの、新たな“武器”を手に入れてきました(詳細は後述します)。
さて、喜び勇んで体験ライド。とりあえずまたがると、とってもシート位置が高い。身長が174cmのワタシだと、片足のつま先がなんとか着くくらい。実生活で自分の短足を実感することは、普段さほどありませんが、改めて痛感。
ただしこのシート。調整機構が備わっているんです。シートの固定位置がふたつあり、低い方で留めると、シート高が870mmから850mmにダウン。たった20mmですが、ぜんぜん違いますね。かなり楽。
さて、試乗したアフリカツインは、まさかのオートマ。このトランスミッションこそが、アフリカツインの新たな“武器”でした。しかも、ただのオートマではありません。DCTと呼ばれる“デュアルクラッチトランスミッション”。ふたつのクラッチとモーターを使って、自動的にシフトチェンジしてくれるのです。
駆動の伝達ロスがなく、変速に要する時間も一瞬。アクセルを開くと、回転をきれいにつなげながら、涼しげにシフトアップしていきます。例えば、3速で走っていると、すでに2速と4速のギヤがスタンバイしていて、シフトアップもダウンも瞬時に完了…。とてつもなく洗練されています。
何より、この並列2気筒エンジンは、回転の盛り上がりとともにビート感も盛り上がる。この醍醐味は、2気筒ならでは。もはや快感。パワーもトルクもあるけれど、レスポンスが素晴らしく、スロットルレバーを握る気持ちにダイレクトに応えてくれます。ホント最高!
今時のエンデューロマシンらしく、重量バランスもセンターに寄っていて、そのデカさからは想像できないほど軽やか。ライダーに従って素直に車体が反応します。しかも、DCTとは別に、MT仕様も用意されていて、そちらはDCT仕様より重量が10kg軽いので、さらに軽やかに動いてくれると思います。MT原理主義者を自認するワタシでさえ、このDCTは魅力的ゆえ、ちょっと悩ましいところではありますが。
残念ながら、オフロードを走ってみる機会はありませんでしたが(走る気もありませんでしたが)、アフリカツインは久々に、走っていて愉快で、気持ちを高揚させてくれて、移動の手段としても俊足ぶりを発揮してくれました!
最後に、このDCTは、先に紹介したニューミッドコンセプトシリーズ時代に洗練されたものとのこと。さすがホンダ、あの当時もいいモノ創ってたんですね!
<SPECIFICATIONS>
☆CRF1000L アフリカツイン DCTモデル
ボディサイズ:L2335×W930×H1475mm
車重:242kg
最低地上高:250mm
エンジン:998cc 水冷4ストローク 直列2気筒 OHC
トランスミッション:6速DCT
最高出力:92馬力/7500回転
最大トルク:9.7kg-m/6000回転
価格:149万400円
(文/ブンタ、写真/グラブ)
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