【試乗】“駆け抜ける歓び”はバイクも健在!先進的なBMWモトラッドの真価とは?
&GP / 2017年1月21日 9時0分
【試乗】“駆け抜ける歓び”はバイクも健在!先進的なBMWモトラッドの真価とは?
BMWのモトラッド(=バイク)と聞いて、どんなことをイメージされるでしょうか?
左右に張り出した水平対向の“ボクサー”エンジン”? どこまでも走って行けるくらい快適そうなツーリングモデル? 誰ですか? 「オジサンが乗ってそうなバイク」なんていってるのは。
確かに、私も恥ずかしながら、昔はそう思ってました。でも、そんなイメージはすでに過去のもの。今のBMWは、結構ヤンチャな走りができるバイクまで、幅広いラインナップを展開しています。そんなBMWの最新ラインナップの中から、いくつかの主要モデルをテストライディングする機会に恵まれましたので、その模様をお届けしたいと思います。
■並列4気筒を積んだスーパースポーツ「S1000RR」
水平対向2気筒エンジン、というイメージが強いBMWのモトラッドですが、並列の4気筒エンジンを搭載したモデルも高性能なんです。その代表といえるのが、1000ccエンジンを搭載するスーパースポーツ「S1000RR」。
2009年に初代モデルが発売され、同カテゴリーを得意とする日本のメーカーを相手に、レースシーンでも日本車に割って入る実績を残しています。ちなみに現行モデルは、3世代目に当たります。
このモデルの特徴は、199馬力の最高出力を誇る並列4気筒エンジンだけではありません。そのパワーを余すところなく路面に伝えるために搭載された“ダイナミック・トラクション・コントロール(DTC)”や、電子制御のセミアクティブサスペンション“DDC”、それに、バンク角を検知して効き方を制御するABSなど、最新の電子制御技術を総動員している点がこのマシンの真骨頂です。
ライディングポジションは、スーパースポーツマシンらしく、レースへの参戦も意識した前傾姿勢。低く垂れたクリップオンハンドルも気分を盛り上げます。試乗車はオプションの、スロベニア共和国・アクラポビッチ社製のマフラーを装着しているので、排気音も迫力あるものでした。
電子制御の塊、というようなマシンであるにも関わらず、クラッチはワイヤー式。でも、現代のマシンにしてはちょっと重めのクラッチをつないで走り出すと、変速操作はクラッチを握らずにできてしまいます。シフトレバーを操作すると、自動的に点火を間引いて変速可能にする“シフトアシストPro”が装備されているためです。
スロットルも、100%電子制御のドライブ・バイ・ワイヤ式。前述したDTCと相まって、ラフなスロットル操作をしても路面のグリップやギヤの段数、バンク角などを計算し、最適なトラクションを路面に伝えてくれます。
手元の操作で、エンジン特性だけでなく、DTCやDDC、それに、ABSなどの効き方までを簡単に変更できる“ライディングモード”も搭載。「レイン」「スポーツ」「レース」の3種類に加え、サーキットでは「スリック」と「ユーザー」のモードも選べます。
試乗したのは公道だったので、正直なところ、一番おとなしいはずの「レイン」でも十分過ぎるほどの性能。1速でもアクセルを全開にするのは躊躇してしまうほどのパワーです。そして、その程度のスロットル開度でも、4000回転を過ぎた辺りから排気音が変わり、ちょっと身の危険を感じるほどの勢いで車体を加速させてくれます。
コーナーでのビタッと路面に貼り付いているかのような安定感。ちょっとやそっとの荷重移動ではバンクしてくれないほどの安定感ですが、そのバンク角でもいつの間にか向きが変わってコーナーを抜けてくれます。フルバンクさせようと思ったら、サーキットに持っていかないと無理ですね。でも、このバイクでフルバンクが必要な速度って、どのくらいなんでしょう? 思わず考え込んでしまうほどの安定感です。
そして、一番感心させられたのがブレーキ。ブレンボのラジアルマウントキャリパーをダブルで装着していますが、効きが良いのはもちろん、低速でもとってもコントロールがしやすいのです。指を1本引っ掛けておくだけで、フロントタイヤがどれくらい路面に押し付けられているのかまで伝わってくるような感覚です。ブレーキだけでなく、サスペンションや車体とのバランスまでしっかり作り込まれているのが感じられます。
しかも、バンク角まで計算して効き方を調整してくれるABSが搭載されているので、バンク中にフルブレーキしても転ぶことはないそうです(実際に試してみる勇気はありませんでしたが…)。このブレーキだけでも、218万円という価格の理由が分かるような気がしました。
■ヤンチャなストリートファイター「S1000R」
続いて試乗したのは、同じく1000ccの4気筒エンジンをアルミ製フレームに搭載する「S1000R」。
基本的に、S1000RRと同じエンジンをベースにしていますが、こちらは最高出力が156馬力(日本仕様)に抑えられ、カウルを取り払ってアップライトなハンドルを装備した“ストリートファイター”と呼ばれるジャンルのマシンです。
上半身が起きたライディングポジションは視界が良く、やや幅のあるバーハンドルも抑えが効くので街中でも扱いやすそうですが、S1000RR譲りの加速はなかなか過激的。大きめにアクセルを開けると、目がついていかないくらいの加速を味わえるので、ワイドオープンにするには覚悟が必要です。
ライディングモードは「レイン」と「ロード」に加え、オプションで「ダイナミック」と「ダイナミック プロ」を選ぶこともできますが、このふたつのモードを必要とするのは、それなりに腕に覚えがあるライダーでしょう。
車体の剛性感は、S1000RRほどではないですが、コーナーでの安定感は健在。路面に吸い付くようなグリップ感は、初めて乗っても安心できるものです。シャープなデザインと過激な加速はヤンチャなマシンを予感させますが、意外とツーリングなどでも活躍してくれそうなモデルです。
■どこまでも走って行けそうな「R 1200 GS アドベンチャー」
BMWのイメージリーダー的なマシン「R 1200 GS アドベンチャー」にも試乗しました。横に張り出したエンジンはBMWのモトラッドを象徴する水平対向の2気筒。オプションの“パニアケース”も装備し、どこまでも走って行けそうなアドベンチャーマシンです。
排気量1200ccのエンジンは、基本構造こそ伝統的な水平対向ですが、水冷式のDOHCという現代的なスペックを与えられ、最高出力は125馬力を発揮。両側に張り出したシリンダーヘッドを保護するためのガードが装備されていたり、ガソリンタンクが30リットルの大容量であったりするところに、このマシンが“冒険”へ旅立つための道具であることが感じられます。
サスペンションは、フロントがテレレバー、リアがパラレバーという、どちらもBMW独自の方式を採用。ブレーキング時のノーズダイブを抑えるメリットがあり、オフロード走行に対応したストロークの長いサスペンションでも、前後のピッチングモーションが少なく済むシステムです。
実際に乗るまでは、サイズの大きさと260kgという車重(ガソリン満タン時)にちょっとビビっていましたが、シートに跨ってみると、意外なほど足つきは良好です。
そして、操作の軽いクラッチをつないで走り始めると、そのサイズも重さも全く気にならないくらい乗りやすい! 排気量があるので加速は鋭いですが、過激さはなく、すべての操作に対する反応がジェントルなので、いつまでも乗っていたくなるというか、乗っていても驚くほど疲れません。その快適さは、バイクというよりクルマに乗ってる感覚に近いかも。
ブレーキは、ブレンボのダブルディスクが装着されていますが、オフロードでロックさせないためにジワーっと効くようなセッティングが施されているので、安心して握ることができます。
■空冷ボクサーエンジンのフィーリングが気持ちいい「R nine T」
最後に乗ったのは、トラディショナルな空油冷の水平対向2気筒エンジンを搭載した「R nine T」。デザインもクラシカルですが、倒立式のサスペンションやABSなど、装備は最新のものを搭載した“ネオレトロ”なんて呼ばれるジャンルのマシンです。
今回試乗した中で一番楽しかったのは、実はこのマシン。まず良かったのがエンジンのフィーリングです。1169ccの空冷エンジンは、火を入れた瞬間から大排気量の2気筒らしい鼓動感が伝わってきます。
そして、それは走り出してからも同様。エンジンの中で起きた爆発が地面を蹴ってバイクを前に進ませてくれているかのような、厚いトルク感がなんとも気持ち良いです。この感覚は、同じ水平対向のボクサーエンジンでも、水冷式を積むR 1200 GSではあまり感じられなかったもの。最高出力は110馬力と控えめですが、視覚的にも特徴的なエンジンが、走りの個性になっています。
もうひとつの楽しさの源泉は、その軽い操作性。車重は222kg(満タン時)と決して軽量な方ではありませんが、押して歩くだけでもその操作感の軽さは感じられます。ABS以外に電子制御を搭載しないシンプルな装備や、動きの良いサスペンションが貢献しているようです。フロントには、一般的なテレスコピック式の倒立フォークが、リアにはシャフトドライブと相性の良いパラレバー式のサスペンションを装備しています。
その軽さは、走り出してからももちろん感じられます。エンジンはトルク感は強いものの、レスポンスは過剰な鋭さはなく、アクセルを開けやすいセッティング。でも、アクセルを開ければ車体は素早く加速してくれます。
そして、コーナーでの倒し込みといった操作も、とても軽快で気持ち良いもの。サスペンションの固さや車体の剛性がちょうどいい塩梅なので、軽い操作で車体がバンクしてくれます。頑張ってスピードを出さなくても思いのままに寝かせられるので、峠道はもちろん、交差点を曲がることすら楽しく感じられるのがR nine Tの最大の魅力でしょう。
付け加えるならば、シンプルな造形ゆえにカスタマイズがしやすいのも、このマシンの魅力。特に、シート以降のリアフレームは脱着が可能なので、手軽に交換することができます。試乗したマシンには、カフェレーサーを思わせるシングルシートと、アクラポビッチ社製のマフラーが装着されていました。
■アクションライディングもこなす「F800R」
今回、試乗することは叶わなかったものの、以前乗った時に非常に印象が良かったのが「F800R」というマシン。こちらは、並列の2気筒エンジンを搭載したモデルですが、車体も軽量で意のままに操れる感覚が印象に残っています。
と、思っていたら、試乗会の際に行われたアクションライディングのパフォーマンスで使用されていました! 確かに、軽い車体と必要にして十分なパワー、そして、アクセルで意のままに引き出せるトルク感は、ウイリーやパワースライドといったアクションライドをするのに最適な特性かもしれません。
最後に、その迫力あるライディングパフォーマンスの写真をご覧ください。BMWのバイクでは、こんなこともできるんだ! という良い手本かと思います。
1.ほぼ直角に近いようなウイリーから、そのまま両手を離したり
2.その状態のままグルグル回ってしまったり
3.両手を離したままコーナーリングも
4.ウイリーしたまま足を離したり
5.ふたり乗りでも両手放し!
6.ふたり乗りでウイリーも
7.最後はバーンアウトさせながらグルグル回る
(文/増谷茂樹 写真/岡野朋之)
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