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くどうれいんの友人用盛岡案内 〜スポット編〜 #11喫茶パァクのホットケーキ

Hanako.tokyo / 2024年2月29日 18時0分

くどうれいんの友人用盛岡案内 〜スポット編〜 #11喫茶パァクのホットケーキ

岩手県盛岡市在住の作家のくどうれいんさんが、プライベートで友人を案内したい盛岡のお気に入りスポットと、手土産を交互に紹介します。

岩手の冬は長い。わたしは冬が好きだ。
雪で真っ白になる街並みや、なにを喋っても白く濁る息、薪ストーブの匂い。冬って、こころがツンとして、常に少しだけ緊張した感じがするのも好きだ。
それに、冬はパァクのホットケーキがある。

〈喫茶パァク〉は櫻山神社のすぐちかくにある、昭和44年創業の喫茶店だ。櫻山神社の鳥居のすぐ近くにあって、お店の前を通るだけでもとても落ち着く。
店先に「ホットケーキ始めました」が貼りだされると、本当の冬がはじまったぞ、という感じがする。なぜなら〈喫茶パァク〉のホットケーキは冬限定だから。お店の方に「ホットケーキはいつからいつまでですか」と訊ねると「きっちり決まってるわけじゃないの、さむくなってから、あったかくなるまでかなあ」「桜があるころまではいつもやるかなあ、みんなが(あったかくなってきたなあ)って思い始めると、注文もすくなくなるしね」とにこやかに教えてくださった。

「パァクのホットケーキはじまってたよ」が「冬だね」という意味になる。え、もうはじまったの、そっか、食べに行かなきゃ。もう食べたよ。この冬にパァクのホットケーキを食べたかどうかが、盛岡の友人たちとの会話の中で、冬の挨拶のようになっている。

「Park」というお店のロゴのおしゃれさにときめく。「公園のようにみんなの憩いの場になればと思って」付けた店名とのこと。模様入りのタイル、ふかふかの椅子、やかんの乗ったあたたかいストーブ、かわいらしい照明と、喫茶店に来る喜びを詰め込んだような店内。その歴史の中でどれだけたくさんの人たちの憩いの場になってきたのだろう、とありがたい気持ちになる。

パァクの手書きのメニューはいつも魅力的で、ホットケーキを食べようと思っていてもついつい「カントリートースト」や「アルペン物語」に目が行ってしまう。食事もおやつもどれもおいしく、見た目も品があってかわいらしいのでとっても悩む。けれどきょうのお目当てはホットケーキだ。「お時間かかりますがよろしいですか?」もちろん。

ホットケーキが提供されるまで、しあわせな待ち時間がある。ひとりならば、読書に集中し始めたころ。だれかと来ていれば、談笑してちょうど話に花が咲いたころ。甘い匂いがして運ばれてくる。

なんて完璧な佇まいなんだろう。
まんまるくて分厚いホットケーキが二枚。うれしさに胸がぎゅっとなるような「ホットケーキ色」の茶色。てっぺんにのせられた四角いバターまで合わせて、絵に描いたようなホットケーキだと思う。冬の寒さに、あったかいホットケーキの、そのむわむわとした蒸気がうれしい。

添えられたはちみつをゆっくりと、たっぷりと掛ける。

はちみつがもったりと光の筋になってバターへと降り注ぐのを、にこにこしながら最後まで見届ける。この、ゆっくりと冬の時間が流れるしあわせを味わうために、みんなホットケーキを注文するんじゃないだろうか。

ナイフとフォークで一口サイズにして、たっぷりとバターとはちみつをつけていただく。じゅわ、と口いっぱいに甘さがひろがって「んー」と声が出る。わたしは大抵だれかとふたりで来て、ホットケーキをひとつ頼んで半分こする。「おいしいね」「おいしい」。口数が少し減って、おいしさに集中しながらぺろっと食べきる。

コーヒーを頼むとついて来る生クリームを拝借してホットケーキにつけたり、

わたしはレモンシュプールという、きゅっと酸っぱいレモンジュースの上にバニラアイスののった飲み物も好きなのだけれど、そのアイスをホットケーキにのせたりして食べきるのもうれしい。

ホットケーキは、あずき入りとそうでないものを選ぶことが出来る。わたしは甘いものをそんなにたっぷりは食べられないのでいつもあずきなしを選ぶのだけれど、あずきもおいしいのでおすすめ。

ホットケーキとホットケーキの間に、あんこがたっぷり!バターとの相性だってもちろん抜群。

「今年もパァクのホットケーキを食べた」という事実が、わたしの冬に輝く。
「ナポリタン」や「カントリートースト」「パウンドケーキ」。ホットケーキ以外のメニューもどれも魅力的なので、盛岡に来たならぜひ立ち寄ってみてほしい。

さっくりふわふわのくるみのパウンドケーキと、アイスコーヒーのかかったバニラアイスとドリンクがセットになった「パァクセット」もおすすめ。

喫茶パァク

住所:岩手県盛岡市内丸4-6
営業時間:9:30~18:00
定休日:日曜、第1・第3木曜(ほか、不定休あり)
電話番号:019-651-4584

くどうれいん

作家。1994年生まれ。著書にエッセイ集『わたしを空腹にしないほうがいい』(BOOKNERD)、『虎のたましい人魚の涙』(講談社)、絵本『あんまりすてきだったから』(ほるぷ出版)など。初の中編小説『氷柱の声』で第165回芥川賞候補に。現在講談社『群像』にてエッセイ「日日是目分量」連載中。最新刊に『桃を煮るひと』(ミシマ社)がある。

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