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長嶋茂雄の三振のように。仮面ライダーウィザード。

インフォシーク / 2013年5月14日 17時30分

なんとも言えないビジュアルのラスボス、ワイズマン。最終回が近くなってきて、これから出番が増えそうである。

若い頃、道頓堀に飛び込んでしまった。

決して真似してほしくないので、こういうところに書くべきか悩んだが、20年前の話なのでご容赦いただきたい。と言ってもたいした話ではなくて、友人のKの発案で飛び込んだ。そのときはビアガーデンの帰り道で、ひっかけ橋(グリコのネオンで有名な橋)を通ると橋の上で誰かが芸をしていた。友人Kはその芸がいたく気にくわなかったらしい。私のところへやってきて、こうつぶやいた。

「アイツよりオモロイことしようや」

じゃあ飛びこむか、と2人でまるで芸のないアイディアを出して、仲間合計4名で飛びこんだ。一番に飛び込んだのはなぜか私で、こういうときフツーは発案者から飛び込むのかと思ったら、したたかなKは「こういうことを一番にやるのは、オマエしかおらん! オレらにはできんが、オマエにはできる!」と無責任訳のわからん持ち上げ方をしてきて、「あ、そう?! ではでは…」と私もバカなので喜んで一番に飛び込んでしまった。

仲間たちもついてきて、まぁそれなりに派手な絵になった。そうして岸にあがったときにビックリしたのだ。橋の上からすごい数のやじ馬が私たちを見ていて、歓声をあげていた。

「ん~っと、やっぱり、もう一回、行くべきだよな…」

私たちは、また飛び込んだ。歓声はさらに大きくなって、そのあと橋に戻ると、たくさんの人から握手を求められた。ヒーローである。すでに芸をしていた者は消えていた。

「おおきに! おおきに! おおきに!」

調子づいて握手に応えていた。Kは、

「これが芸やで!」

とくだらないことを叫んでいた。アホである。

と、ある手が私の手をギッチリ握手して離さない。なんちゅう熱烈な奴やと思って姿を見たら、警察だった。

そのまま私たちは引きずられるように連れて行かれてしまった…

なんとも恥ずかしい話である。後日談によると、私たちの姿はテレビの「警察ドキュメント24時」的な番組で全国に流れたという噂もある。当事者の私たちは誰もその番組を見ていないので、あくまで聞いた話だ。

正直、命に関わることであるし、風紀的にも大問題なので絶対に真似してほしくないのだが、この件はさておき、思いっきりやってみるということは何かしら人の心を動かす大事な要素ではないか、ということは思う。なぜそんなことを思ったのかというと、いつもの流れだが、5月12日に放映された仮面ライダーウィザード第35話を見たからである。

仮面ライダーウィザード第35話には、「こ、これは仮面ライダーウィザードのスタッフのみなさん、思いきりましたね!」という設定があった。

滝川空という、怪人だけど人の心を持つ男が登場しているのだが、彼は第34話で怪人が襲うべき女性をなぜか突然救ったのだった。ここで視聴者のほとんどは、「あぁ、彼の心にも人としての優しさやこだわりが残っていたのだな、だから救ったのだな、アイツ、いい奴だな」と思ったはずである。私もそう思っていた。

ところが第35話で、なぜ彼が女性を救ったのかが明らかになって驚愕した。人の心が残っているから救ったのは間違いないのだが…なんと彼の人間の心は猟奇的連続殺人者であったのだ。つまり彼は、女性を見たときにいつものように怪人として襲うのではなく、人間として猟奇的に襲ってしまいたい…という欲望が生まれ、あとから猟奇的に襲えるようにひとまず他の怪人の襲撃から救っておいただけなのである。

最低である。エゴの塊で、あまりにも屈折している。もしや怪人よりもよっぽど悪い奴なのではないか。

これはスゴイ設定だ。昭和の頃の特撮番組にはこういう怪奇的な設定がまだあったようにも思うが(ウルトラマンタロウの首がすっとんだり…)、過保護な社会で生まれた平成の仮面ライダーとしてはすこぶる珍しい。

「スタッフの方々、思いきったことをしたな!」と心から感心した。私はこういう作り手の思いきり方はけっこう賛成なのである。

仕事でも遊びでも勉強でも、人はどうしても「上手くやろう」と思ってしまう。これはきっと、「みんな一緒に」とか「勉強できる人、最高」的な社会環境の影響なのかもしれない。残念ながら、私もその癖がある。

しかしはっきり言うが、上手くやったものなど、たいして誰も感動しないのだ。

ただ、「上手いね」と言われるだけだ。そんなものに本当は価値など何も無い。

人の心を動かすのならば、思いっきりやるべきなのだ。長嶋茂雄の三振のように。岡本太朗の芸術のように。子どもがハチャメチャに遊ぶように。

仮面ライダーウィザード、8月の最終話に向かってさらに面白くなってきている。見てみてはどうだろう?

【バックナンバー】仮面ライダー徒然草はこちら

ガッケンター
1973年1月生まれ。芸術家。ライター。芸術活動のかたわら、仲間と協力してゆるゆる映画応援サイト「ガッケンターサイト」の運営や、映画監督や俳優もゲスト出演する「ガッケンターTV」(インターネット)の製作をしている。

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