仮面ライダー鎧武と芸術論。なのだ。
インフォシーク / 2014年3月18日 17時30分
なんと、連載101回目なのである!
ということは、先週の記事が記念すべき100回目である! この連載を始めたとき、もしも100回までいったら、そのときはお祭り騒ぎだ!大騒ぎの記事にしてやるぜ! …と企んでいたのだが、すっかり忘れていつもどおり書いてしまったのだ。
…であるからして、101回目は大騒ぎなのだ! と書きたいのであるのが、いつもどおりなのである。まぁ、なんだっていいのである。
ずいぶんと昔だが、広告の仕事をし始めたとき、大きなことに気がついた。
「広告は、芸術ではないのだなぁ!」
基本的に、広告に自己表現は無い。クライアントの目的のために尽力するのである。
というわけで、私はある意味楽しみながらも、ある意味わりきる気持ちも抱えながら仕事に邁進していたわけだが、そもそもじゃあ芸術はどうなのか、と考えていくと、芸術というのもかなり曖昧なのである。
例えば絵というものは、自分にとって素晴らしいものに出会うと、圧倒的に衝撃的! となるわけだけども、売れ始めた人の中には以来同じような絵をたくさん書いていくこともあり、それは技法やそもそもの発想がスゴイわけだが、中にはなんだかやはり商業なのだなぁ、と考えたりすることもあるのだ。中にはね。
お芝居も、大きな劇場で行われるものの中には、非常にわかりやすくてエンターテインメントなものがあって、こ、こんなの芸術なのか!? ただの商業じゃねぇか! と純粋芸術青年だった若い頃はイライラした。にも関わらず、いざ自分が社会に属して必死に働き出すと、くたびれた自分の心と体は、むしろそういう単純明快なものを求め、見たくなるものなのである。
下手に芸術を学ぶと、インディーズ的純粋的マニアック的芸術が好きになりがちなのだが、それが正しいというわけでもないのだ。まぁ要するに、なんだっていいのである。
ずっとずっと以前に驚いたのは、松田優作が出演したハリウッド映画「ブラックレイン」に、2パターンのクライマックスが用意されていた、ということを知ったときだった。
悪者のボス的存在である松田優作は、刑事であるマイケル・ダグラスや高倉健に追われ、マイケル・ダグラスの目の前で同僚刑事のアンディ・ガルシアを殺したりしながら、最後にマイケル・ダグラスと泥まみれの大格闘を行う。
クライマックスは、見事逮捕した松田優作を真ん中にマイケル・ダグラスと高倉健が両脇を固め、旧ドリカム状態で警察署を歩くのである。
これは、実は松田優作がマイケル・ダグラスに殺されたバージョンも存在したらしい。ある書籍に記してあった。しかし完成後に覆面試写会にて上映したとき、アンケートでは圧倒的に殺さないバージョンが支持され、そちらに決まったという。
驚愕した。芸術がマーケティングするなんて…。これも、芸術純粋青年だった頃の感想である。
あくまで私の意見だが、ブラックレインのラストは殺してしまった方が面白かった。大体多数決の意見というのは、非常に危ないのである。必ず、安定志向、バランス感覚志向が入ってくる。ビジネスにおいてそれは良かったとしても、表現においてはなんとも微妙だ。
と、まぁ、こう考えていくと、芸術だってやっぱり曖昧なのである。
春に上映される仮面ライダー映画が、今、子供たちの間で話題になっている。昭和仮面ライダー(1号~)と平成仮面ライダー(クウガ~)が映画の中で激突するのだが、どちらが勝つのか、そのクライマックスを、アンケートをとって多数決で決めちゃうね! というのである。
仮面ライダー映画は子供のお祭りのようなものなので、この試み自体に反対というわけではない。が、それはどこかで、仮面ライダー映画は商業でエンターテインメントだからな、という意識が働くからである。きっと平成仮面ライダーが勝ったバージョンも、昭和仮面ライダーが勝ったバージョンも、いつか見られるのだろう、それなら比較できて楽しみだ、と安心しているのだ。
しかしこれが、多数決で決まったものしか永久的に見られない、となると、私はやっぱり反対なのだ。多数決がもたらすものは、社会的にも個人的にも人権的にもイジメ的にも未来的にも、そして芸術的にも、かなり危ないのだ。それくらいならば、作り手が描きたかったものが見たい。
私の絵が、ベルギーのある学校の特別授業で使用されたことがある。訳のわからん私の絵を見て、感じたままに発言する子供たちは、大笑いしながらも、ディスカッションの末に、「自分が感じたまま、自由に表現すればいい、お花が魚になっちゃっても、全然、構わない、それを見る人がどう感じるかも自由。何でもあり、何でも好きにやっていいんじゃない?」という結論を出したと聞いて、いたく感動した。
広告、エンターテイメント、芸術、なんだっていいし、その間にグレーがあったっていい。だが、実に人生においては、なんだっていいから、自分だけの純粋な芸術を発見し、とことん感じ考える体験があった方が絶対にいい。その人の話や生き方に、味わいが出てくるし、目に見えるものだけを信じなくなる。そもそも、そこには愛があるのである。
1973年1月生まれ。芸術家。ライター。MC。芸術活動のかたわら、仲間と協力してゆるゆる映画応援サイト「ガッケンターサイト」、フリーペーパー「ガッケンターニュース」、映画監督や俳優もゲスト出演する「ガッケンターTV」(インターネット)を展開。
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