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【インサイトナウ編集長対談】常に「今」の課題に対応しながら、コンサルタントとして世の中に価値あるものを提供する/INSIGHT NOW! 編集部

INSIGHT NOW! / 2022年9月6日 9時0分

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INSIGHT NOW! 編集部 / インサイトナウ株式会社

お相手:パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長 日沖 博道様
聞き手:猪口真

コンサルタントは成長の機会

猪口  今日は、若い方々の人気が高まっているコンサルタントとしての働き方のヒントになるようなお話をお聞きできたらと思っています。
日沖さんはコンサルタントとしてだけではなく、通常の事業会社でもキャリアを積まれていますね。

日沖  私のようにコンサルティング会社と事業会社の間を往復する人間は、昔はあまりいませんでした。今の人は、私のようなキャリアも珍しくないと思ってくれるかもしれませんが、同年代や先輩からは「日沖は何を考えているんだ」とよく言われました。コンサルティング会社間の渡り歩きは昔も今もありますが、事業会社とコンサル会社を行ったり来たりするようなやり方は理解できないということだったのでしょうね。

猪口 先日、openworkという口コミサイトに、東大・京大の学生が選ぶ就職注目企業ランキングがあったのですが、野村総研、アクセンチュア、PwCコンサルティング、デロイト トーマツ コンサルティングなどのコンサルティング会社が上位を占めていました。優秀な学生に人気だということですよね。

日沖 最近、コンサルティング会社はすごい人気ですよね。我々の時代では考えられなかったことです。給料が高く、ビジネスの知識、経験が貯まるということで注目されているのでしょうね。業界の地位が上がったという意味では本当に喜ばしいことです。

コンサルティング会社で新卒かそれに近いような人たちを採るとき、我々は「ここでの1年が普通の事業会社の3年にあたる。あなたは成長できる。その代わり、かなりしんどい」と言っていました。コンサルティング会社はどこもしんどいものです。長時間労働でしかも密度が濃い。「これをいつまでにやっておきなさい」の要求水準が、普通の事業会社の3倍から5倍はきついという印象です。

猪口 昔、僕があるコンサルティング会社に打ち合わせに行ったとき、呼ばれたのが夜10時でした。皆さん普通にミーティングルームに煌々と灯りをつけて、打ち合わせをしていました。

日沖 それが普通でした。なぜそんな時間帯になるかというと、昼間はお客さんとのプロジェクトの打ち合わせや調査などで満杯だからです。時間調整をして、幹部やマネージャークラスが複数人取れる時間帯は、20時、21時以降になってしまいます。最近は働き方改革で少しは良くなったと思いますが。

特に大手のコンサルティング会社は、若い人が長時間働いて出した成果に高いチャージをして稼ぐのが基本のビジネスモデルです。時間チャージで請求額を決める方式だと、時間を削ると自分たちの売り上げが下がるというジレンマがあるので、どうしても労働時間が増えてしまう傾向にあるようです。

猪口 コンサルティング会社に就職したい学生が増えている状況についてどう思いますか。

日沖 業界としては良いことだと思います。しっかりしたコンサルティング会社は、研修やビジネスの基本教育が充実しています。我々の時代でもコンサルティング会社が高く評価されたのは、そういったところがしっかりしていたからです。新卒が入って3年ぐらいみっちり修行して他へ行くというパターンは、当人たちにとってもメリットです。若くて体力があるので仕事が厳しくても乗り切れるし、伸び代があるので、集中した期間で能力が大きく引き出されます。真っ当に頭を使い、真っ当な稼ぎ方をするのであれば何も問題ないでしょう。

でももろ手を挙げてどんな会社でもOKと言っている訳ではありません。ブラック業界だった頃の思考のままで変わらない幹部が主流のファームなら絶対的に避けるべき。先輩人脈などを活用して内部事情をできる限り知った上で飛び込む必要があります。

コンサルティング会社と事業会社を交互にやるのが一番楽しい

猪口 自分の意志で選び、自分の糧にして、自分で次の仕事を考えるようになればいいということですね。ただし、コンサルティング会社で能力を発揮して、偉大なコンサルタントになる方もいれば、その後、事業会社に移ったり、自分で事業を立ち上げたりする人もいます。

日沖 コンサルタントとしてのキャリアには二通りあると思います。コンサルティング会社で自分の技量を磨き、コンサルタントとして上り詰めていく生き方がひとつ。マネージャーとなり、部下を育成しながらクライアントとの関係性をより強めることができれば、さらに上に行くことができます。

もう一つは、優秀で出世もできるけど、あえて外に出る。ベンチャーや事業会社など、外部で違うところに行って、身に着けたスキル・ノウハウを使って、事業会社の立場で事業を大きくしていく。そういったところで手腕を発揮する人もいます。どちらのタイプも基本的に求められる能力はそれほど変わりません。

猪口 事業会社に行くというのは、僕も似たような経験がありますが、非常に楽しかったですね。自分のところのプロダクトを自分でできるので、ビジネスが大きくなるのが手に取るように分かります。コンサルタント側は、当たろうが当たるまいが、ソリューションへの対価は変わらないので、そういう意味では、事業の成果が目に見えてわかるのがとても楽しかったです。

日沖 そうでしょうね。しかも、それを自分たちの意思でやることができる。これが事業会社の醍醐味です。ですから、コンサルティング会社と事業会社を交互にやるのが一番楽しいのです。

猪口 そのようなジャッジメントを学生たちは持っているでしょうか。コンサルティングの立場と事業会社の立場はどう違うのか、というような。

日沖 正確に理解しているということまでは難しいでしょうね。学生からするとコンサルティング業界を志望する理由には二つあって、「給料が高く、仕事のレベルが高いので、成長できると言われている」ということが大きい。もう一つは、コンサルティング会社出身のベンチャー経営者が大勢いるからです。いずれ自分もそういう立場になりたいという、キャリアのルートの一つになっています。ですから、やる気があればあるほど、野心があればあるほど、しんどくても我慢できます。

猪口 それはそれですごく健全ですよね。自分の将来のために今頑張る、という判断はとても良いと思います。しかし、ベンチャー起業家になりたい人、野心に燃えたような人たちが、今は減っているような気がします。

日沖 若い人たちの志向が多様化しているのだと思います。やる気があって肉食系、野心の塊のような人が昔はある程度の割合いたのですが、組織内での出世を考えているのが大半で、それは今ではむしろ一部です。しかし今、ベンチャー的な会社をやりたい、社会も変えたいという人たちがけっこういます。健全な野心家で、自分のためというよりもう少し志が高い人たちです。この二つを足したら、昔の野心に燃えた若者の比率に近くなるはずです。

でも多くの若者はより堅実、かつ保守的になっています。我々の時代はいきあたりばったり、「とにかくやってみて失敗したらそのとき考えればいい、若いから何とかなる」というような計画的ではない人が、「頭のよい」人のなかにもかなりいました。

それに対して、今の「頭のよい」人たちは失敗したら怖いので、確実なルート、かつそれほどリスクを冒さなくても行ける範囲を計画的に考えます。この割合が少し増えすぎている気がしますね。私は、正直、もう少し野心家ないしは非計画的になってもいいんじゃないかと思いますね。

最終的には、コンサルティング会社を設立し、起業

猪口 コンサルティング会社パスファインダーズを立ち上げたのは何歳のときですか。

日沖 54歳のときで、今年の5月で創立10年になりました。

猪口 コンサルティング会社と事業会社の間を行ったり来たりしながら、それぞれでの学びを活かして、両方の能力を見つけながら、最後はやっぱり自分でコンサルティング会社をやりたい、というところでしょうか。

日沖 一つは、自分が得意なこと。もう一つは、自分がやったことが世の中的に受け入れられて、ありがとうと言ってくれること。この二つがマッチするところに落ち着いたのだと思います。何十年も言われるがままに、もしくはたまたま直面したことに手を出してきましたが、ぐるっと回って「けっきょくここだね」という感じです。1年目は大変でしたが、ありがたいことに、2年目以降は大手企業でリピートしていただいたり、他にも紹介が続いたりしてきました。

猪口 コンサルティング会社を経営していくときの戦略はどのように決めたのですか。

日沖 今のメインは、新規事業開発のお手伝いと新規事業の建て直しです。実は会社を立ち上げたときは、3本柱を考えていました。1本目の柱は「新規事業」です。私はBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)とBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)でそれなりに仕事をしてきたので、「業務改革」が2本目の柱です。3本目の柱が「アジア進出」です。

2本目の柱の業務改革は、大手のコンサルティング会社にいたときに結構やっていましたし、本も出して読んでいただいていたので、そこそこ需要があるだろうと思いました。実際に引き合いもあったのですが、小さな会社でできることは限られていました。今も継続していますが、それほど本数が稼げないし、人手が必要です。うちのような小さな会社ができるのは司令塔の役だけで、手足になって動いてくれるのは他の会社です。3本目の「アジア進出」は私のアジア人脈を活用できたのですが、物理的な移動が大きな制約ですし、大した本数は出ませんでした。そういった訳で最初の数年間は、新規事業のコンサルティングをごく短期間で回す、ということを繰り返していました。結局、最初の戦略とだいぶ違ってきました。

猪口 新規事業の立ち上げは皆がやりたいことですが、簡単ではありません。しかもだいたいが失敗に終わると思うのですが、そこを柱にされているということは、相当のノウハウをお持ちなんですね。

日沖 失敗するパターンはよく私も見ているし、経験もしています。そのため、やってはいけないことがすぐに分かるのです。まさにそれをやっているケースが多いので、これはダメ、これもダメとすぐに分かりますが、問題は「これをやればいい」という大正解が分からないことです。何にでも当てはまる普遍的な正解なんてありません。個別に市場の状況を見きわめて、打ち手(仮説)を考え、その仮説検証をやってみる。仮説と検証の繰り返しです。それが正解かどうかはしばらくやってみないと分かりません。

これができるお客さんとできないお客さんがいます。理屈が分かっても、検証をやる余裕がない会社もあります。仮説の検証をする余裕がないと本来は新規事業は怖くてできません。それまでさんざん無駄遣いをしてきたクライアントに、その単なる繰り返しはさせたくありません。1本の検証点に絞ってしばらく検証することを、複数やればさらに確率は上がります。複数本の検証を平行でやって、本命に絞っていきます。辛抱強くこの検証を繰り返すことが必要になるので、結局ある程度大きな企業が有利になってしまいますね。

コンサルタントとしてappreciateされる

猪口 行き当たりばったりとおっしゃいますが、そこは、あえて自分から選んだというより、結果的にそれをやっていたということでしょうか。

日沖 まさにそうです。学生の頃はまったくこんなキャリア経路は考えていませんでした。

猪口 コンサルタントと言っても、多種多様なコンサルタントとしてのスタイルがあると思います。日沖さんの場合、どのようなプロセスで、自分なりのスタイルを見つけていかれましたか。

日沖 大学を卒業した後、松下電送という会社に8年いて、最初の5年は営業、残り3年は新規事業の開発とB2Bマーケティングをしていました。この時の経験で、新規事業の開発は面白いけど難しいということを実感したのです。もっと勉強したいと思うようになり、元々将来的にはコンサルタントになろうという思いもあったので、ビジネススクールに行くことにしました。ただ、会社があまりにも居心地良かったので、なかなか離れる気にはなれませんでした。でもビジネスを体系的に学ぶ機会がほしかったし、当時はTOP20以上のビジネススクールに行くとコンサルタントになるチケットにもなりました。それで当時の社長に失望したことを契機に留学をして、いろいろ学んだ上で、帰ってきてコンサルタントになりました。

猪口 そして、自分の得意な分野を見つけていくわけですね。

日沖 それなりに頭がよい人は、自分が得意なもので、しかも付加価値が高いものがいずれ見えてきます。ここが重要です。付加価値が低い仕事をずっとはできません。世の中的に付加価値が高いというのは、給料もいいし、それ以上にappreciateされるということです。この二つがマッチするところがどこなのか考えたとき、私の場合は、それがコンサルタントでした。

でも、それが見えてくるのはすぐではないですよ。いろいろやるうち、得意・不得意がわかってきます。例えば私は事務能力が非常に低いですし、好きでもありません。普通の人が20~30分でできる経費処理を1時間かけてもできません。逆に、例えば会議をファシリテーションするのは得意でした。そういったことを掛け合わせてみたら、コンサルタントに求められている資質が自分に合っているのではないかと思いました。ですから、ADLにいたときは居心地よかったですね。

猪口 居心地が良いというのは、会社の文化もそうですが、自分の仕事への評価ですよね。

日沖 そうです。単純な会社の居心地というより、自分が貢献している、役に立っている、他の人から「いいね」「また頼みますよ」と言ってもらえることが重要です。自分に対して自信にもなるし、それでポジションや給料が上がっていくし、仕事が継続的に取れる、頼まれることになります。自分をappreciateしてもらうことは、ストレスを軽減させる一番の良薬です。むちゃくちゃ忙しいし、むちゃくちゃ時間も使う。だけど、「君が重要なんだ」と言われれば、「でも楽しい」と思えます。これが、若い人にとって一番重要です。長い時間を使って「まあまあだな」と言われるような仕事は、面白くないし、続かないし、ストレスが大きい。どれだけハードルが高くても、成果に対して「よくやったね。これは君じゃないとできないよ」と言ってもらえれば、それまでの苦労は吹き飛びます。若い人にはこのことをぜひ理解・経験してほしいですね。

猪口 本当にそうですね。日沖さんは会社を変わられてきて、54歳で会社を作られて10年です。コンサルタントとしても素晴らしいお仕事をしています。僕が格好いいと思うのは、54歳で起業されたことです。現在ある課題に対して常に挑戦を続けることは、いくつになっても必要なことですね。今日はありがとうございました。


日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。新規事業の開発・推進・見直しを中心としたコンサルティングを提供しています。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashinban/ 『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』がアマゾンのオンデマンド書籍として上梓されました。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。https://www.pathfinders.co.jp/books/

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