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鏡の向こう側の視点/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2016年8月12日 18時45分

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野町 直弘 / 株式会社アジルアソシエイツ

自分の経験話とか、あまり書いたことがないのですが、夏休みの方も多いと思いますので。お気軽に読んでください。

私の社会人生活のスタートはある自動車会社の原価管理部というところでした。
原価管理部には大きく分けて原価企画チームと総合原価管理(予実管理)チームの2つのチームがあり、私は原価企画チームに属していました。

原価企画チームは新製品の原価企画だけでなく様々な車の営業見積(お客様に提出する見積書の作成)をやっているチームです。自動車会社では手間の問題もあり、全ての車種について原価企画を推進しているわけではありません。しかし、当然ながら量産後に立ち上がった派生車や様々な要因から出てくる仕様変更、設計変更による新規車種の見積りなど日々新車の営業見積をする必要性があります。最終的には販売価格は営業や企画部門が決定しますが、その元となる原価見積りを専門にやっているのが原価企画チームの一つの役割になっているのです。

基本的に原価企画チームに配属された新人は、まずは派生車種や日々の営業見積業務を担当しながら、原価や管理会計について学び、同時に新製品原価企画の担当をします。
一方で総合原価管理チームは主に工場原価の予実管理と日々の合理化推進を担当するチームです。

ですから総合原価管理チームは主に工場や生産管理部門とのやり取りが多くなります。一方で私が配属された原価企画チームは営業とその先にいる顧客の購買部門、それから自社の購買部門とのやり取りが多いのです。(もちろん営業見積や原価企画をやっているので開発部門や工場とのやり取りもありますが。。)

ですから私の社会人初めての仕事は購買部門とのコンタクトがとても多かった。ここでは色々なことを学びました。なかでも顧客の購買部門の方とのコンタクトは衝撃的なものだったと覚えています。いきなり電話がかかってきて見積の内容について確認させて欲しいと、マシンガントークが始まるのが常日頃です。私も新人であり、ミスもしましたがミスがあると顧客の購買部門の方から、直接人格を否定される位のことを言われたました。

一方自社の購買部門もなかなか言うことを聞いてくれません。営業見積を行うためには部品の見積りがないとできないのです。ですから購買部門に見積依頼をします。購買から期限通りに見積りが出てくることは稀でした。また出てきた見積りもサプライヤから提出されたそのもので何のチェックもしていない、というのが日常です。

そうすると自社の購買部門からもらった見積りの内容を顧客の購買部門の(怖いバイヤー)から突っ込まれないように事前にその内容を確認しようとします。例えば、見積明細を元にこの工程はどういう工程ですか、とか、この工程は必要ですか、とか、図面を見ると材料費が高いようですけど、あっていますか、とか、、このような具合です。

そのうちに自社の購買部門の一部のベテランバイヤーからめちゃくちゃ怒られました。「お前は人に質問する仕方がなっていないと。。」

こんな経験が私の社会人人生の原体験なのです。そう、購買部門の方は怖い、というのが私の原体験でした。

しかし次第に顧客の購買部門の方ともまともに会話できるようになりました。彼は彼で上司に説明すると同じ様に突っ込まれていて、それに答えられるように私に質問しているんだ、ということが次第に分かってきたのです。また彼(元をたどると彼の上司)の突っ込み所とそうでない所が分かるようになり、段々と仕事の進め方や優先順位の付け方も分かってきました。

一方で自社の購買部門の方からも怒られ続けながらも協力してくれる人が増えてきました。
後で聞いた話ですがその頃の私は「何でなんですか」の野町、と呼ばれ購買部門の中でも有名だったそうです。このように怒られ続けながら購買とは逆の立場で仕事をしてきたのがこの頃の私です。この頃学んだ管理会計の知識や予算管理の知識、原価企画の知識は今でもたいへん役にたっています。

そして3年過ぎたある日、突然上司に異動を言われるのでした。購買部門へ異動と。

購買部門へ異動し発注担当にならないと分からないことも多くありました。しかし、逆の立場(サプライヤとして、社内ユーザーとして)購買部門にコンタクトしなければ分からないことも多くあったのです。
このように、「逆の立場になって考える、行動する、理解する」所謂「鏡の向こう側の視点」はとても大切なことだ実感したのが私の社会人最初の経験でした。

最近は営業の方に対して購買部門の人の立場や考え方を逆の立場で話をする機会も増えました。また交渉力研修でも「相手の本来のニーズを知ること」が重要だと、皆さんに教えます。このような「鏡の向こう側の視点」をできる限り大切にすることを最近でも感じていますし、その原点が私の社会人での最初の仕事だと考えています。

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