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物流2024年問題で叫ばれる「多重下請撤廃」 それでも“水屋”がなくならないワケ

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月3日 5時45分

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運送業界の「多重下請構造」がなくならないワケ

 「中小運送事業者を含めたトラック業界全体として2次下請までと制限すべき」――。

 3月22日、全日本トラック協会は「多重下請構造のあり方に関する提言」と題した文書を公表し、このような提言をした。

 2024年はトラックドライバーを対象とした時間外労働の上限規制がスタートして、物流・運送業界の「2024年問題」がいよいよ本格化していく。その前に、低賃金労働や輸送に対する無責任さの温床になっているとの指摘が多い「多重下請構造」について、業界としてメスを入れた形だ。この提言の中で注目すべきは「水屋」への規制にまで言及している点だろう。

「いわゆる水屋は、全てではないものの、輸送に関しての無責任さ、明確な運行指示のない単なる横流しを行う実態があるため、何らかの規制をすべきである。多くの車両情報を持つ水屋が、実運送事業者の採算を度外視した車両の確保を行うことについては問題がある」(全日本トラック協会「多重下請構造のあり方に関する提言」より)

 「水屋」とは荷主と契約を結び、貨物を預かって自社以外の輸送業者を利用する利用運送事業者の俗称だ。トラックすら持たずに仲介だけ行うのは「専業水屋」と呼ばれる。そう聞くと「ピンハネ」という言葉が頭に浮かぶ人も多いだろうが、仕事のないドライバーや営業力のない零細運送会社に代わって仕事を取ってきてくれることから「運送業界を陰で支えている」と擁護する人も少なくない。

 そんな賛否両論ある「水屋」まで「規制すべき」と言い出すことで、業界団体としてトラックドライバーの賃上げや待遇改善に「本気」だということを広くアピールしたいのかもしれない。

 ただ、そんな真剣な思いに水を差すようで大変恐縮だが、「制限すべき」なんてヌルいことを言っているうちは、日本の「多重下請構造」をなくすことはできないだろう。

●意味のない法改正

 例えば、政府は「多重下請」の弊害を是正するとして、元請け業者に取引管理簿の作成を義務付けるというが、管理簿をつくったらピンハネがなくなるわけではない。「抜け道」はいくらでもある。つまり、米国のように法律で再委託を禁止するなどしない限り、中小零細の運送会社はあの手この手で「多重下請」を水面下でこっそりと続けていくのだ。

 なぜそんなことが言えるのかというと、歴史の教訓だ。

 実は日本では明治時代からさまざまな業界で「多重下請構造」が問題になっていた。時に末端の人々の命が奪われるような悲劇も起きて、そのたびに「多重下請を制限すべき」という声が盛り上がっていた。

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