SDVで「ニッポン出遅れ」論が意味すること
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月22日 7時12分
日本の自動車メーカーはSDVに出遅れた、本当か
「EV出遅れ」「OTA出遅れ」「自動運転出遅れ」「水平分業出遅れ」などなどに続き、このところ静かなブームとなりつつあるのが、日本の「SDV出遅れ」論だ。何としてでもニッポン出遅れの材料を探し続けるその熱意には感服至極である。
要するに、SDVに出遅れた日本の自動車メーカーが、絶望的な窮地に陥(おちい)ると言わんばかりのことを記事にする媒体が現れて、新たなトレンドになりそうな気配がしているのだ。その一連の流れが筆者的には全く腑(ふ)に落ちないのである。
そもそも今までと比べてSDV出遅れ論がちょっと弱いのは、破壊的イノベーションとの結びつきが直感的にイメージしにくいという点にある。EV出遅れの時はスマホとガラケーをうまいこと当てはめて説明してきたわけだが、今回は話が難しすぎてそうそう簡単にはいかない。
しかも、そのSDVができるとクルマはどう進化するのかをきちんと定義して説明できる人がいない。なんとなく「SDVという未知の破壊的イノベーションがやってくるので対応しないとヤバい」という雰囲気優先の筋書きだ。SDVによって、価値あるユーザー体験として何がどう変わるのかがさっぱり分からない。それを具体的に伝える記事に出会ったことがないにもかかわらず、この世の終わりとばかりに警鐘を鳴らすところに大きな違和感がある。
●SDVって一体何だ?
まずはSDVって一体何だという話だ。SDVとは“Software Defined Vehicle”のことで、直訳すれば“ソフトウエアによって定義される自動車”という意味になる。これはまあどこにでも書いてある。検索さえできれば誰でもたどり着ける情報だ。
意訳するとどうなのかといえば、「これからはソフトウエアこそが大事で、ハードウエアの意味が失われる」というような言い方が多い。
これはちょっと微妙な説明で、どういう読み解きをするか次第の話になってくる。仮に「これまではソフトウエアを軽視し過ぎており、ハードしか競争領域と見なしてこなかった。これからは相対的にソフトウエアの重要度が上がる」という理解なら、その通りだと思う。
ただ、ハードの重要性が失われたという話だとすれば、それは違う。2年くらい前には、あの慎重居士のトヨタでさえ「ソフトウエアファースト」と言い出して、筆者はその技術発表会の質疑応答で異を唱えたことがある。「ソフトが重要になったからといってハードがどうでもよくなるわけじゃない。誤解を招く言い方だ」と。そのせいなのか、もともと内部でも疑義が持たれていたかは定かではないが、トヨタはソフトウエアファーストという言い方を取り下げた。
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