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パートナーが産後うつに──上場金融ベンチャーCEOが語る、スタートアップ経営と家庭の両立

ITmedia NEWS / 2024年5月9日 7時45分

 こうした林CEOの社長像の在り方は、結果的にプライベートのピンチを社員に共有するタイミングを遅らせたという。自分の体調面のことを社内にあまり明かさずに、なんとか仕事と家庭を両立しようとしていたのだ。

 「いつも『明るくあれが社長たる者の姿だ』と言ってるのに、自分がめちゃくちゃ暗いとか弱音を吐くのはダサいなと思って。それを理由に逃げたみたいに思われたくなかった」

●CFOの一言が状況を変えた

 とはいえ冒頭でも述べたように、林CEOが直面したのは自分だけの力では解決し切れない問題だった。状況が変わる転機になったのは、大学の後輩でもあったCFOの伊藤祐一郎氏だ。林CEOの状況をなんとなく察していた伊藤氏は「ちゃんとポジションをはっきりさせたほうがいいんじゃないですか」と林CEOに伝えたという。

 「正直、僕は最初、伊藤の言葉を聞き入れられませんでした。でも、あえてズバッと言ってくれたことが本当にありがたかった。今思えば、伊藤の言葉で、ようやく自分の状況と向き合うことができたんだと思います。あの時、伊藤が勇気を出して一言言ってくれなかったら、僕はずるずると無理を重ねて、もしかしたら仕事でも取り返しのつかないことになっていたかもしれない」

 これを機に、林CEOは社員全員に自分の状況を話すことを決意した。

 「『みんな、ごめん。俺、今こういう状態で、役員報酬もカットするつもり。正直、仕事はあんまりできないと思う。ぶっちゃけ、午前中は早く出社できないし、夕方もミーティングには出られない。本当にどうしようもない時は言ってくれ』。こんな感じで、自分の状況を包み隠さず話したんです」

 事実上、時短勤務になることをオフィシャルに宣言したことで、みんながようやく動ける状態になった。これでチームとしての方向性がようやく定まり、林CEOの不在中も、メンバーがそれぞれ自発的にリーダーシップを取ってくれるようになった。

“組織づくり”をいつやるか 見極めが重要

 これは、健康や家族についての向き合い方であるとともに、組織づくりについての話でもある。社長は何でもできる全知全能の存在であるべきだということのほかに、しっかりとした組織を作ってしまうとスタートアップの強みが失われるというのも、林CEOの信念だという。

 「僕は、まだ小さいのに、部門ができていて秘書がいたりする会社を見ると、ダメだと思っちゃいます。『会社らしくしたい』とか、そういう考えは絶対良くない。なぜかというと、スピード以外に大企業に勝てる要素が何もないからです。技術力だけで大企業に勝つなんてまずできない。大企業が意思決定に2~3週間かかることを、スタートアップは社長の判断ですぐにアクションに移せる。そこにしか価値がない」

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