[岩田太郎] 【「道連れ大量殺人」過去の事例浮上】~ジャーマンウィングス機墜落事件~
Japan In-depth / 2015年3月27日 18時0分
フランス南東部のアルプス山中で3月24日に墜落したドイツ格安航空会社ジャーマンウィングス9525便は、米連邦航空局(FAA)に操縦士資格を認証されたアンドレアス・ルビッツ副操縦士(享年28)がトイレから戻ってきた機長をA320型機のコックピットから意図的に締め出す一方、高度を徐々に下げて高速で山に激突させ、乳児や高校生を含む149人の乗客・乗員を道連れにした「大量殺人事件」(米ニュースサイト『クォーツ』のジェイク・フラナガン記者)と判明した。
衝撃を受けた米国では「同様の事件は米国機でも起こり得るか」「過去に操縦士が異常行動で航空機を墜落させた同様の事件の教訓は何か」が議論されている。政治評論サイト『ザ・ヒル』は、「米航空会社では、このような事件は起こらない」とする業界関係者の声を伝えている。米航空乗員組合(ALPA)は声明で、「米国の航空法規では、コックピット内で操縦士が一人になることを禁じており、今回のような事件は防げた」と主張した。片方の操縦士が席を立つ際は、客室にいる別の乗員(予備のパイロットやフライトアテンダント)がコックピット内に入室する手順だ。
こうしたなか、米国メディアでは1999年10月31日に発生し、米国人100人を含む乗客・乗員217人全員が死亡したロサンゼルス発ニューヨーク経由カイロ行のエジプト航空990便の墜落事件がクローズアップされている。
この事件では、ボーイング767型機の同便がマサチューセッツ州ナンタケット島沖から南東約100キロメートルの大西洋上を巡航高度で飛行中、モハマド・ハバシ機長(享年57)がトイレに立った隙にガメエル・エル=バトウティ副操縦士(享年59)が突然両方のエンジンを切り、機体後部の昇降舵を目いっぱい上げることで水平線からの仰角40度という急激な機首下げを行った。
同機は、37秒間に高度10000メートルから5700メートルまで落下・加速し、音速無重力状態に陥った。この間、エル=バトウティ副操縦士は「我は、神に依り頼めり」と11回も唱えながら、機内を漂い何とか客室から戻ったハバシ機長と機のコントロールを奪い合う。副操縦士側の昇降舵は「機首下げ」で上を向き、機長側では「機首上げ」で下を向く「ねじれ状態」だ。
この時点で、先にエンジンが切られた影響で機は全電源を失い、ブラックボックスや操縦室内のディスプレイまで停止した。地上レーダー解析ではその後2分間、機長の「機首上げ」が効き、いったん高度4900メートルから再上昇して7300メートルまで達した。一方、無理な降下による機体への負荷で外壁や左エンジンが脱落し、上昇から急降下に転じて海面に激突した。
この事件は、日ごろからセクハラや同僚との衝突で素行の悪かったエル=バトウティ副操縦士が、定年前に機長に昇格できず、ハバシ機長からも問題行動に注意を受けていたことから、人生に対し自暴自棄に陥って起こしたとされる。操縦士が対人関係などで問題を抱え、航空機を意図的に墜落させた事例は他にも数件知られる。次回はそれらを検証し、有効な対策案を考えてみたい。
(【絶望を防ぐ対人関係性の修復が有効か】~ジャーマンウィング機墜落事件~に続く。このシリーズ全2回。 )
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