[大原ケイ]【銃乱射事件の影で高まる銃規制への動き】~米・TV生中継射殺事件~
Japan In-depth / 2015年8月29日 18時0分
8月26日、バージニア州で地元のテレビ局による朝のニュース番組のインタビューを生中継していたレポーターとカメラマンが射殺されるという、むごたらしい事件が起こった。
衝撃的な映像とは裏腹に、事件のあらましはありきたりの話だ。TVジャーナリストを目指していた男がいた。いくつかの地方局でレポーターの仕事をし、バージニア州のWDBJというローカル局に就職した。だが、本人の攻撃的な性格が災いして同僚に疎まれていくのを「自分が黒人であるがゆえの人種差別」だと思い込み、解雇された後も鬱憤を募らせていった。そしてある日、自分を差別していたと思い込んでいた元同僚たちに一方的な復讐を果たし、その後、自殺した。
朝のニュース番組中に起こったできごとで、その一部始終が地元で放映されていたこと、また犯人本人も現場で生中継に入るのを確認し、銃を女性レポーターに向けるところまでの映像を記録し、SNSにアップロードしていたこともあり、ショッキングな現場を目にした者も多かった。事件直後、スタジオにカメラが切り替わった時、アナウンサーが何が起きたのかわからないほど驚いた様子でポカンと口を開けていた表情が忘れられない。
この手の事件が起きる度に、全米が嘆き、死者を悼み、現場には花が手向けられ、皆が沈痛な表情で「こんなことがあってはならない」「何とかしなければいけない」と語るのだが、それでも何も変わらず、また次の乱射事件が起きるのがアメリカの銃社会の現実だ。
それはまさしく、被害者の父親がインタビューでマスコミを通じ、宣言したことでもある。「来週になれば、娘の死はニュースではなくなる。だが私は一生忘れない。狂った人の手に銃が渡らないよう、世間に訴え、議員をせっつき、法律を変えていくことで娘に報いていく」と。
各州によっても銃規制法の厳しさは異なるが、精神に問題を抱えた人が銃を買う際にbackground checkと呼ばれる資格審査を行うべき、という意見は全米で既に90%を上回っていることが統計で裏付けられている。だが現実的にはそういう銃規制法があっても徹底されておらず、loopholeという抜け穴がいくらでもある。もちろんすべて全米ライフル協会(NRA)が、政治家に多額の献金をし、ワシントンにロビイストを送り込み、わざとそうしているのである。こういった悲惨な事件が起きる度に、自衛のためにと銃を買う人がまた増え、儲かるのだから。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
南部連合の将軍の名前、学校名に復活 米バージニア州
AFPBB News / 2024年5月11日 17時0分
-
米銃乱射事件から25年で哀悼 バイデン氏「痛み消えない」
共同通信 / 2024年4月20日 22時40分
-
「被害者の気持ちを考えてもなお、死刑には反対」米国の検事がそう語る真意は…「復讐に基づいてはならない」 今改めて考えたい「死刑」
47NEWS / 2024年4月15日 10時0分
-
豪州の刃物襲撃、女性標的か 40歳男、銃に関心も
共同通信 / 2024年4月14日 16時58分
-
O・J・シンプソン76歳で死去 スター選手か元妻殺人犯か、息子のSNSにも複雑コメントが殺到
ねとらぼ / 2024年4月12日 18時37分
ランキング
-
1日本人女性「出稼ぎ売春」か=ソウルで経営者検挙―韓国警察
時事通信 / 2024年5月11日 15時25分
-
2「指の爪で戦う」と強気のイスラエル、一方でラファ侵攻規模縮小協議か…米の警告無視では困難との見方
読売新聞 / 2024年5月11日 6時47分
-
3ロシア バスが急カーブの後 橋の欄干なぎ倒し川に…7人死亡
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月11日 9時28分
-
4ウクライナ北東部「突破の試み」=ロシア軍が攻撃強化、1キロ侵入
時事通信 / 2024年5月10日 23時31分
-
5韓国で日本国籍の男3人を逮捕 女性に性的暴行を加えた疑い
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月11日 20時53分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください