[文谷数重]【仏同時テロ:仏は空爆で利益を得られるのか?】~報復より原発テロを警戒せよ~
Japan In-depth / 2015年11月18日 7時0分
パリでのテロに対応して、フランスはISISへの空爆を大規模化させた。テロ2日後から15日、16日と従来を超える規模の空爆を実施しているという。
空爆をしなければ政府は倒れる。フランスの国民感情は沸騰している。テロ組織に対して何らかの対応をしなければ、政府は無作為を問われ、指導部は倒れる。悪い言い方をすれば、空爆は国民感情に迎合した合わせた報復である。
だが、フランスは空爆で利益を得ることができるだろうか?
フランスは何の利益も得られない。それで反アサド勢力が勝利するわけではない。アサド政権がフランスに転ぶわけでもない。もちろん、ISISは崩壊させられない。
■ 攻撃は効果を期待できない
実際にフランスの軍事力は限定されており、シリア問題でも状況を動かすことはできない。
これは空爆規模からも明白である。大規模化とはいうものの、15日の投入戦力は12機であり、投下した爆弾は20発だけ、16日も10機16発にとどまる。
今後、仏空母が到着しても状況は全く変わらない。威信財として作ったギリギリサイズなので、攻撃力はたいしたものではない。仮に投弾規模を3倍にできても、1日50-60発であり米空軍爆撃機の1機分でしかない。
実際に米国はそれ以上の大規模空爆を行っているが、内戦を変えるほどの成果は上げていない。それ以下のフランスによる空爆では、戦局には何の影響も与えられない。
そして、フランスは空爆以上の介入はできない。
陸上戦力の投入は全く考えられない。まず、フランスはシリアに単独介入する力はない。空爆で協力している米国も、ようやくイラクから足抜けした状況である。利益のないシリアに陸上戦力を送る頭はない。そして、その他の西側諸国は空爆すらやりたがらない。
武器供与の大規模化にも意味はない。前々からフランスは反ISIS・反アサド勢力に武器を渡していると言われているが、効果のほどは現状が示すとおりである。量的に増やしても劇的な効果は期待できないし、効果を及ぼすほどの高性能兵器は渡せない。あとで別目的、例えばテロに使われることが怖い。これは、13日に承認したシリア国民連合相手でも同じである。
■ フェードアウトしかない
この状況で、フランスにとって正しい選択肢はなんだろうか?
それはタイミングを見てのフェードアウトである。
空爆を続けても効果も利益も期待できない。下手をすれば「機体故障等で脱出したパイロットの救出」といった新しい面倒が生まれる。ある意味でメリットもないのに、リスクを犯すために金を使うようなものだ。
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