圧倒的に「日本好き」な台湾 「対日世論調査」の読み解き方
Japan In-depth / 2016年7月26日 18時0分
野嶋剛(ジャーナリスト)
「野嶋剛のアジアウォッチ」
台湾でこのほど対日世論調査が発表され、「あなたの最も好きな国はどこですか」という質問に対して、過去最高の56%の人が「日本」と答えたことが明らかになった。このことをもって「台湾はやっぱり親日的」という形での報道・コメントが広がった。それはそれで別に間違いではないけれど、もうちょっと掘り下げて、今回の調査結果を読み解いてもいいかもしれない。
この調査は日本の対台湾窓口である「交流協会」が随時行っているもので、過去には2008年、09年、11年、12年、そして今回が5回目となる。「日本を最も好き」と答えた人は、08年は38%、09年は52%、11年には41%、12年には43%となり、今回は56%だった。こうして見ると、今回の数値がかなり高かったのは確かだが、09年にも50%を超えており、今回だけが有意に飛び抜けて高い、ということは言えないだろう。
日本以外では、2位は中国(6%)、3位は米国(5%)、4位はシンガポール(2%)だった。いささか意外なのは、米国に対する好感度が台湾ではそこまで高くなく、中国と同じぐらい、という事実である。好感度としては、日本の一人勝ち状態であると言っていい。
米国は、台湾にとって、世界で唯一軍備を売ってくれる国で、安全保障上の最大の後ろ盾となっている。この点は日本と同じだ。しかしながら、日本の親米感情に比べれば、台湾の親米感情がそれほど強くないことは、かねてから興味深い現象だと思っていたが、今回の調査結果の数値を見ると、想像以上にその傾向ははっきりしており、今後詳しく分析してみたいところだ。
台湾の人々が日本を好きでいてくれるということについて、それほどの意外性はないが、面白かったのは、年齢層別の対日感情の揺れだった。もともと、台湾の対日認識においては、高齢・中年世代の対日感情は若い世代ほど圧倒的な好感度を示すものではなかった。それは、中国から戦後渡ってきた外省人の第一、第二世代や、戦後の国民党一党専制時代(50年代から80年代まで)にいわゆる「中国化教育」を受けた世代の存在が影響していたと見られた。
実際、08年の調査では40歳以上の三世代がいずれも「日本が最も好き」と答えた人は3割以下だったの比べ、40歳以下の二世代は5割前後が「日本が最も好き」であると回答しており、世代間の格差は明らかだった。日本では、李登輝元総統に象徴される、日本語教育を受けた高齢世代の対日感情がいちばん良好だと思われがちだが、この調査では必ずしもそうした結果にはなっていない。
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