15年前の大量殺人から何をくみ取るべきだったのか 障害者施設殺傷事件
Japan In-depth / 2016年7月31日 0時26分
宅間元死刑囚は南組からテラスを通り、東隣の2年西組の児童を襲った。クラスは席替えを終えたばかりだった。担任が通報のため教室を離れた後も凶行は続いた。
「娘は廊下に出ようとしたところで刺され、60メートル先の事務室前まで逃げました。廊下伝いの壁には、ハケで掃いたような血の跡も残っていました。血痕を府警にDNA鑑定していただいて、その様子がようやく分かったのは、事件から3カ月後でした」(2年西組女児の両親)。二つの血染めの小さな手形が残された事務室近くのコンクリートの床は、遺族の要望でその場所だけ切り出された。
西組を出た宅間元死刑囚は廊下を通り、さらに東隣の2年東組に入った。担任にイスで抵抗され教室を出たが、そこでも児童を次々と切り付けた。
テラスに出て、西へ走り出した宅間元死刑囚は、タックルした教諭を刺して重傷を負わせ、なお西へ向かい、音楽の授業から帰ってきていた1年南組の児童を見つけた。
「息子は(宅間元死刑囚と)鉢合わせになって逃げようとしたが、机などがあって逃げられず刺されたようです。壁に背中をすりつけて倒れました」(1年南組男児の母)
宅間元死刑囚は、この教室で、必死に追いすがった教員たちに取り押さえられた。10分足らずの犯行で、8人の児童が殺害され、15人が重軽傷を負った。
宅間元死刑囚は、事件後の精神鑑定で当時の心境について「国家の命令で戦争しているような感じ。自分が悪いんと違うて。戦争は国の命令やから、冷静に皆戦ってるでしょう。ああいう。びびってもせえへん。何となく終わりやなあと」(「宅間守精神鑑定書 精神医療と刑事司法のはざまで」より)と、語ったという。
担当した弁護士によると、接見時には「本当に申し訳ない気持ちがある」と語ったこともあったというが、公判では行為は認めても、罪は認めようとせず、数々の暴言を吐き散らし、最後まで謝罪しなかった。事件から3年3カ月後、死刑が執行された。
そんな事件から、我々は何をくみ取るべきだったのだろうか。付属池田小事件を受け、17年には重大な他害行為を行った精神疾患の患者を対象に、心神喪失者等医療観察法が作られた。
宅間元死刑囚が事件前、精神疾患を装って何度も「罪」を免れていたことを受けた法整備だった。同法に基づく医療観察制度では、精神疾患のために刑事責任を問われなかった患者の入退院を、医師の判断だけに委ねるのではなく、裁判官と精神科医が合議で決める。
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