柔道交流は米「トモダチ作戦」へのお礼
Japan In-depth / 2016年9月22日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」
首都ワシントン近郊のアメリカ海軍士官学校で日本柔道のトップクラスの現役選手が3週間近く同校柔道部の学生たちをみっちりと指導した。日米友好とともに、とくに東日本大震災での米軍の救援活動「トモダチ作戦」へのお礼だともいう。
東海大学柔道部OBの熊代佑輔選手が8月末から首都から40キロほどのメリーランド州アナポリス市にある海軍士官学校で指導を始めた。熊代選手といえば全日本の選抜体重別大会や各種国際大会の100キロ級で優勝してきた一流柔道家で、東海大学柔道部助監督でもあるが、なお現役での活躍を続けている。今回の派遣は柔道国際普及団体「柔道教育ソリダリティー」(山下泰裕理事長)によって実施された。
海軍士官学校と柔道教育ソリダリティーとの交流は2010年に同じ東海大学出身の元世界チャンピオンの井上康生氏の来訪から本格的に始まった。翌2011年からは「トモダチ作戦へのお礼」の意味をもこめるとして毎年、続けられてきた。
2011年3月11日の東日本大震災ではアメリカは海軍部隊を中心に大規模な災害救援活動「トモダチ作戦」を実施した。日本側だけでは苦労した仙台空港の緊急復旧など被災地のあちこちで米軍部隊でしかできない救済活動を多彩に繰り広げた。
アメリカの海軍士官学校は4年制で、卒業生たちは海軍か海兵隊の将校として任官する。トモダチ作戦にも多数の海軍士官学校卒業生が加わった。このため柔道教育ソリダリティーでは2011年以降は海軍士官学校での柔道指導に「トモダチ作戦へのお礼」の意味をこめるようになった。
その後、海軍士官学校の柔道部は柔道教育ソリダリティーから塚田真希、大川康隆、片渕一真、藤井岳、奥村達郎などという大学柔道や全日本での一線級の選手たちをそれぞれ数週間ずつ迎えて、指導や稽古を受けてきた。
今回の熊代選手の来訪では柔道部員の男女の士官候補学生たち20人ほどが集まり、挨拶を交わしてから、まずは熊代選手に順番に練習試合を挑んだ。屈強な学生たちが元気よく同選手に取り組んで、勢いよく攻撃をかけるが、同選手は内股、大外刈と、豪快な技で次々に投げていく。その技量に学生たちは歓声をあげる。最初の5人が終わると、なかの数人が「もう一度」と再挑戦を求めて、熊代選手に立ち向かっていく意欲をみせた。
2日目からは熊代選手は技の基本や練習の効率的な方法を示し、自由練習の乱取りをも重ねていった。その後も寝技の戦い方や試合の進め方、組手の扱い方など実地に示すと、将来は米軍士官になる男女たちは目を輝かせ、体を果敢に動かして、熱中していった。3週間近くの指導の最後の日、熊代選手はまた部員全員との練習試合をしたが、学生たちの進歩は初日とくらべて歴然としていた。
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