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次期国連事務総長選 元ポルトガル首相か第三者か

Japan In-depth / 2016年9月30日 18時0分

次期国連事務総長選 元ポルトガル首相か第三者か

植木安弘(上智大学総合グローバル学部教授)


「植木安弘のグローバルイシュー考察」


次期国連事務総長を推薦する権限を持つ安全保障理事会(安保理)で、9月26日に第5回目の仮投票が行われ、アントニオ・グテレス元ポルトガル首相がトップの座を保ったが、2ヵ国が「奨励しない」票を投じ、この票に拒否権を持つロシアが入っているかどうかが焦点となってきた。


また、ブルガリアが押していたイリーナ・ボコヴァ現ユネスコ事務局長が低迷したため、ブルガリアは、ボコヴァの代わりに、現在EU委員を務めているクリスタリーナ・ジョージエヴァ女史を推薦する動きを見せている。ロシアが、東欧からの事務総長選出を主張していることから、西欧出身のグテレス氏を支持しない可能性があるからである。また、ジョージエヴァは女性ということもある。


この日の仮投票で、グテレス氏はこれまでと同じ12ヵ国の「奨励する」票を獲得し、1ヵ国が「意見なし」であった。7月末に行われた最初の仮投票から第一位を保っている。第2位には、セルビアのヴュク・イェレミッチ外相が8(奨励する)-6(奨励しない)-1(意見なし)でつけており、第3位には、スロヴァキアのミロスラフ・ライチャック外相が8(奨励する)-7(奨励しない)でつけているが、安保理決議の採択には最低9票が必要なことから、このままいくと、二人とも当選圏に達しないことになる。


この三人の後に、スロベニア元大統領のダニロ・トゥルク氏とアルゼンチン外相で元国連事務総長官房を務めたスザナ・マルコーラ女史が並び、ボコヴァ女史は第6位、元ニュージーランド首相で現UNDP事務局長のヘレン・クラーク女史と元マケドニア(FYROM)外相のスルジャン・ケリム氏、さらに、元モルドヴァ外相のナタリア・ゲルマン女史と続く。当初12人いた候補者は、現在9人となっている。


ロシアは、10月に安保理議長となる。この間に、事務総長選出を終えたいとしているが、グテレス氏に支持が集まる中で、拒否権を行使し、東欧出身の事務総長に固執すると、米国がロシアの押す候補に対して、同様に拒否権を行使して葬ってしまう可能性が高くなってくる。10月5日に予定されている次の仮投票では、常任理事国と非常任理事国との間で、別な色の投票用紙が使われ、区別される。ロシアの本意が試されるので、注目されている。


ジョージエヴァ女史については、EU委員であるが、EU諸国では評判が良いとのことで、ドイツのアンゲラ・メルケル首相がロシアのプーチン大統領との電話会談で、ジョージエヴァ女史を強く推したいという話が外交筋で伝わっている。しかし、ジョージエヴァ女史が全面に出てきた場合には、今回の選出プロセスで行われた国連総会での所信表明や一般市民を交えたタウンホールなどを無視することにもなりかねず、同じようなプロセスが行われるのか、それとも、仮投票への中途参加となるのか、まだ明確にはなっていない。また、多くの支持票を集めているグテレス氏を無視することもなり、ロシアの横暴が批判される可能性もある。


拒否権を持つ常任理事国の中国、英国、フランスは、すでに、シニア・ポストの獲得という条件闘争に入っている感もある。特に中国は、PKOのポストを狙っているとの噂が流れており、過去20年にわたってPKO局長の座を占め、アフリカの国連PKOを自国のアフリカ外交に巧に利用してきたフランスとのポスト争いが注目される。英国は政務局のポストを取り返したいところであろう。


日本は、現在非常任理事国として次期事務総長選に関わっているが、どのような事務総長を望んでいるのか、また、どのようなシニア・ポストを狙っているのか。日本の国連外交にとっても、より戦略的にアプローチする必要があるのではないだろうか。


トップ画像:photo Hossein Zohrevand/António Guterres in Tehran を加工

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