アフガンのタリバン政権と中国
Japan In-depth / 2021年8月25日 23時0分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・アフガン、ガニ政権が崩壊しタリバン政権が復活。
・バイデン大統領は、米軍の撤退を予定通り実行するだろう。
・中国はアフガンに接近、しかし、米ソと同じ轍を踏む可能性も。
今年(2021年)4月15日、「バイデン大統領」は9月11日までに、アフガンから米軍を撤退させると宣言した。そして、在留米軍の撤収後、タリバン勢力が一気に勢力を盛り返した(ちなみに、パキスタンがタリバンを育てたと言っても過言ではない。パキスタンの首都イスラマバードの神学校で、一部のタリバンは学んでいる)。
8月15日、首都カブールのガニ政権が崩壊して、タリバンが実権を掌握した(1996年にタリバン政権は誕生している。だが、2001年の「9・11」後、米軍と有志連合の攻撃<アフガニスタン戦争>を受け、いったん瓦解した)。
この状況下、「バイデン大統領」は、国内外からの批判を受け、米軍のアフガンからの撤退を先延ばしする意向を示した。だが、いずれにせよ、近く米軍の同国からの完全撤退は予定通り行われるだろう。タリバン政権は欣喜雀躍しているに違いない。
さて、なぜガニ大統領を首班とする反タリバン勢力(いわゆる「北部同盟」)政権は、いとも簡単に崩壊したのか。中東情勢に詳しい登利谷正人氏はNHKのインタビューに対し、次のように答えている。
「崩壊した政権は反タリバンの軍閥が寄り集まる形で成立したもので、汚職や腐敗がはびこり、多額の援助が入っても一部の人たちが独占するような状態というのが続いていた。さらに内部の権力闘争も続いていた」ので、政権が機能不全に陥ったと考えられる。
他方、「タリバンとは何者か?なぜ復活したのか?アフガン政権崩壊の裏で何が起きたのか」(『Buzz Feed Japan』)は、以下のように分析した。
タリバンは「(1)保守的で厳格なイスラム解釈(を行い)、(2)もめ事があれば長老とイスラム法学者が協議して物事を決める、(かつ)伝統的かつ家父長制的で男性優位なパシュトゥン人農村社会の秩序と価値観を維持している」。
無論、タリバンの思想は日本や欧米をはじめとする現代的な価値観、例えば、1)個人の意思の尊重、2)信教の自由、3)男女平等とは、相容れないだろう。けれども、タリバンは、アフガンの一般民衆には受け入れられているのかもしれない。
実は、故・中村哲医師は2001年、以下のように語っていた(〈再録〉『日経ビジネス』<故・中村哲医師が語ったアフガン「恐怖政治は虚、真の支援を」>2019年12月4日付)。
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