「エシカル」を通じて家庭科の新しい可能性を
Japan In-depth / 2021年9月5日 21時0分
生徒に対して行ったアンケートでは「今まで植物にあまり興味がなかったけど、葉の色を良く見るようになった」、「今まで化学は教科の中のものとして捉えていたけれど、『生活の科学』の授業で教科の外までイメージを広げることができた」などという声が聞かれた。
葭内さんは「苦手、得意に関係なく科学への興味・関心が広がったり、同じ授業を行っても、生徒一人一人が違う学びや気づきを得ることができる」と、家庭科と科学を融合させた授業に手ごたえを感じている。
■「ウェルビーイング」を目指して
様々な手法で新しい教育の形を追求する葭内さんだが、その教育が目指すものとは何か。葭内さんは「ウェルビーイング」を挙げた。
ウェルビーイング(well-being)とは、肉体的・精神的、そして社会的にも満たされた状態を意味する言葉で、同じ幸福を意味する「ハピネス(happiness)」よりも持続的な充足感を表す。世界38か国で構成されるOECD(経済協力開発機構)は、個人と集団のウェルビーイングに向けた学習の枠組み「OECD ラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030」を公表するなど、ウェルビーイングの実現のためには教育の充実が不可欠と考えられている。
そんな中、家庭科は次世代の教育に求められる要素を兼ね備えていると葭内さんは語る。
「今は「認知能力」と言われる従来型の学習能力だけではなく、コミュニケーション能力やクリティカル・シンキング、クリエイティビティ、何かにじっくり取り組む力、などの「非認知能力」がより幸せに繋がり、必要と言われています。生きること全てに関わる家庭科はそこにフィットすると思います。」
社会が複雑化するなか、特定の分野だけの知識で物事を捉えるのは困難になりつつある。生活に関わる全てを見つめることで、優れたコミュニケーション能力と科学的な視点を養い、持続可能な社会のリーダーとなる人を育てる。それが、家庭科教育の最前線だ。
お茶の水女子大学附属高等学校では、11/20(土)に、教育関係者向けに、第25回公開教育研究会をオンラインで開催する。本インタビューで紹介したSSH家庭科「生活の科学」の授業の公開や、上野千鶴子東京大学名誉教授による講演「女性リーダーは何を変えるか?」も配信される。詳細はお茶の水女子大学附属高等学校HPをご覧いただきたい。
トップ写真:国立大学法人お茶の水女子大学附属高校で家庭科を担当する葭内ありさ教諭 ⒸJapan In-depth編集部
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