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欧州社会党、欧州委のニコラ・シュミット委員を次期委員長候補に選出、選挙公約も採択(EU)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年4月3日 0時15分

欧州社会党(PES、注)は3月2日、6月の欧州議会選挙に向けた党大会をローマで開催した。PESを主体とする中道左派、社会・民主主義進歩連盟(S&D)グループの次期欧州委員会委員長候補に、欧州委のニコラ・シュミット委員(雇用・社会権担当)を選出した(プレスリリース)。「筆頭候補者プロセス」(2024年3月15日記事参照)の一環。現地報道によると、S&Dは欧州議会選で第2会派を維持するとみられるが、極右の躍進が予想される中、支持は伸び悩んでいる。シュミット委員は、知名度の低さが課題とされており、次期委員長に任命される可能性は低いとみられる。

PESは同日、欧州議会選に向けた選挙公約も採択した。物価上昇に対応した賃金の値上げや、EU域内各地で抗議活動が続く農業生産者への配慮などを盛り込んだ。第1の公約は、質の高い雇用の確保だ。就労貧困層や男女間の賃金格差の解消、労働時間の削減のほか、人工知能(AI)の規制などに取り組む。最低賃金指令(2022年10月12日記事参照)、賃金透明化指令(2022年12月22日記事参照)が既に成立し、AI規則案(2023年12月13日記事参照)も成立が見込まれていることから、これらの実施にも注力するとみられる。

注目される環境政策に関しては、環境対策と社会正義は関連しているとし、「社会グリーン・ディール」を掲げる。関連法案がおおむね成立し、選挙後は実施段階に移る欧州グリーン・ディールに関し、一部の有力政治家から規制強化の「一時停止」を求める声があがっているが、選挙公約は「停止はあってはならない」とした。2040年目標案(2024年2月14日記事参照)の達成を含め、再生可能エネルギーやエネルギー効率改善への継続的な投資を強調する。その上で、グリーンへの移行において誰も取り残さないとし、一般家庭や中小企業を含めた社会全体への安価で安定したエネルギー供給を目指す。

産業政策においては、公共投資に基づくグリーン・デジタル分野での雇用創出だけでなく、EUの主権を強化する必要があるとして「メード・イン・ヨーロッパ」戦略の策定を求めた。今後の公共投資の在り方については、複数の加盟国が共同実施する「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」の推進や投資向けEU予算の増強を支持する。背景には、国家補助規制の緩和により公共投資における加盟国間格差が広がっていること(2023年12月15日付地域・分析レポート参照)への危機感があるとみられる。また、2025年から実施予定の財政規律改革法案(2024年2月21日記事参照)を念頭に緊縮財政にも反対する。

(注)欧州社会党(PES)は、EU加盟国、英国、ノルウェーの中道左派・社会民主主義政党から構成される欧州レベルの政党グループ。欧州議会においては、S&Dグループとして活動する。

(吉沼啓介)

(EU)

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