米USTR、メキシコ鉱山の労働問題巡るUSMCAパネル裁定結果を公表、米国の主張を退ける(米国、メキシコ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月16日 15時15分
米国通商代表部(USTR)は5月13日、メキシコのサン・マルティン鉱山における労働権侵害の疑いを巡る、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づく労働紛争解決パネルの最終裁定を公表した。パネルは、米国側の訴えを事実上退けた。USMCAに基づく労働紛争解決パネルが裁定を下すのは今回が初めて。
USTRは2023年6月、メキシコの鉱山開発最大手グルーポ・メヒコが同国サカテカス州に所有するサン・マルティン鉱山における労働権侵害の疑いを巡って、USMCAが定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に基づいてメキシコ政府に事実確認を要請した(2023年6月19日記事参照)。これに対しメキシコ政府は、問題とされた労働権侵害がUSMCAの発効(2020年7月1日)以前に行われたことなどを理由にRRMの対象外と判断した(2023年8月2日記事参照)。USTRはメキシコ政府の判断に同意せず、RRMに基づくパネルの設置およびパネルによる検証を求めていた(2023年8月23日記事参照)。パネルは2024年2月に検証を実施し、公聴会を開催した。
USTRの発表によると、パネルは、問題とされた労働権侵害の検証を行う権限を持たないとして米国側の訴えを事実上退けた。RRMは、労働権侵害がメキシコの労働法に抵触しているかどうかを基準とする一方で、今回問題とされた労働権侵害が発生したのはメキシコの旧労働法の対象となる可能性が高いことを理由としている。他方で、一部のパネリストは、使用者であるグルーポ・メヒコと、当該鉱山の労働者を代表しない労働組合との間で、違法な団体交渉が行われたと推定されるとして、労働者の結社の自由と団体交渉権に及ぼす悪影響について懸念を表明するなど、米国側の主張を一部認めたとしている。
USTRのキャサリン・タイ代表は声明で、「グルーポ・メヒコがサン・マルティン鉱山の労働者の結社の自由と団体交渉権を侵害し続けることを事実上容認する今回のパネル決定は、驚きで失望だ」と非難。その上で、「バイデン政権は、USMCAの下で利用可能なあらゆる手段を用いて、サン・マルティン鉱山の問題の是正を求め、国内外の労働者に実質的で具体的な利益を提供し続けることを確約する」と述べ、今回の裁定結果にかかわらず、労働者の権利向上に取り組む姿勢を強調している。
なお、タイ代表は財務長官に対し、留保していたサン・マルティン鉱山からの製品の輸入の最終的な税関での精算を再開するよう指示している。
(葛西泰介)
(米国、メキシコ)
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