ペヤング、批判集まる初期対応より根深い問題の本質
JIJICO / 2014年12月22日 12時0分
ペヤング、批判集まる初期対応より根深い問題の本質
「まるか食品」の製品にゴキブリが混入している画像が拡散
「ペヤングカップ焼きそば」を製造販売している「まるか食品」の製品にゴキブリが混入している画像がTwitterに投稿されて拡散。この事態を受けて、「まるか食品」は時間をおかずに「製造工程上、考えられない」というコメントを発表しました。
私も、最初テレビで画像を見たときには、麺に絡まるようにゴキブリが入っている様子が映っていたため、小細工を施した愉快犯の可能性も疑いましたが、その後の調査で「まるか食品」の当初発表とは相違し、ゴキブリがインスタント麺の製造工程で行われる加熱処理をされた状態だったことも判明。製造工程での混入の可能性を否定できないということが指摘されるに至りました。
実態把握が不十分な段階で「責任逃れ」と取られる発表はタブー
この事件に対する評価は、いずれも「まるか食品」に厳しいものですが、とりわけ、十分な調査もしない段階で「製造工程上、考えられない」という責任回避のコメントを、後で言い直しのきかない断定的な形で発表してしまったことは危機管理上、非常にまずかったといえます。企業不祥事において、初期の実態把握が不十分な段階では「責任逃れ」と取られる発表を行うことはタブーだったのです。おそらく、このコメントを発表した担当者は、何とか急いで幕引きを図りたいという気持ちだけで行動したのでしょうが、結果は全くの逆効果でした。
そのうえ、投稿した消費者に対して、Twitterに投稿した写真を「お互いのために下げてほしい」と迫って削除させようとしたことも、投稿者が投稿したことで一般に知られてしまいました。最初の投稿写真を削除しても映像が複製されて拡散するというSNSの仕組みを理解しない無知を前提とした誤った対応をしたことで、結局、画像は残ったままで会社側の不誠実な対応までさらされるということになり、さらに評価を落とすという、企業からしてみれば最悪の事態を招いてしまいました。
さらに、当初の商品回収が「当日同じラインで製造された製品」と極めて限定的だったことから批判が大きくなり、結果として販売済み商品の自主回収の範囲は広がりました。加えて、「まるか食品」の全商品について販売休止に追い込まれ,販売再開のめどさえ立たないという状況に陥っています。
初期対応の違いは、販売停止に対する効果としてはあまり差がない
これまで、「まるか食品」に対する批判はその初期対応のまずさに集中しているように思いますが、現在の販売休止の事態を考えると、私は、もっと根の深いところに問題があったのではないかと考えます。つまり、今ここに至っては、「まるか食品」の販売再開は、少なくとも「製造工程に虫が混入する可能性はほとんどない」といえるくらいまで検証されなければ難しいでしょうが、そのためには相当程度の時間とコストを費やす必要があると思われるからです。
食品に関する不祥事があったときには、原因の究明と再発防止策が策定されるまで営業が再開できないという例は少なくありませんでした。ネット上で流れている「まるか食品」の工場の写真から推察する限り、この製造ラインを根本的に虫が混入しない体制につくり替えるのは容易なことではなく、その間、商品を出荷できないのは経営上、深刻なダメージとなります。
また、たとえ本件で「まるか食品」がいかに適切な対応をしたとしても、製造工程で虫が混入するような工場であったという事実は変わりませんので、初期対応の如何にかかわらず、この点を改善しない限り、販売再開が難しいということも変わらないのではないかと考えます。つまり、「まるか食品」の初期対応は、ブランドの毀損を深めたいという意味ではかなりまずかったかもしれませんが、販売停止に対する効果としてはあまり差がなかったと思われるのです。
最大の問題点は、品質向上や工場の刷新に対する努力を怠ったこと
本来であれば、業績が好調なうちに今回のような虫の混入を防げる工場にリニューアルするなどの設備投資をしておくべきだったでしょう。「まるか食品」の最大の問題点は、トップブランドに胡坐をかいて、品質向上や工場の刷新に対する努力を怠ったことにあったのだと考えています。「まるか食品」はこのような事件をカバーするためのリコール保険にも入っていなかったということですから、消費者が求める食の安全に対して、最小限のコストで対応しようという会社の姿勢が透けて見えます。消費者からの信頼も揺らいでしまい,この事件を契機に経営が大きく傾く可能性は否定できません。
現状は、ゴキブリ一匹で会社が倒産してしまう可能性まで取りざたされていますが、SNSが普及した現代では、これまでであれば表に出なかったような不祥事でも、あっという間に世間に広がってしまいます。その意味では、他人から後ろ指を指されない事業の在り方を追求する姿勢が、これまで以上に求められることになるのでしょう。
(舛田 雅彦/弁護士)
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