若い女性の中高年盗撮、SNS投稿で訴訟の可能性も!?
JIJICO / 2015年8月1日 18時0分
若い女性の中高年盗撮、SNS投稿で訴訟の可能性も!?
人間誰もが「肖像権」という権利を有している
最近、若い女性が仲間と嘲笑するという目的で中高年の男性をスマホなどで撮影し、自身のSNSやブログなどに掲載するというケースが増えてきているようです。個人的にこういった投稿などを見た経験はありませんが、例えば電車で座っている際に、向かいに座って熟睡している頭髪の薄い男性を盗撮し、ツイッターなどに「ハゲ、キモい!笑」などと投稿されているようです。一見して気持ちのいい行為では無いことは明らかですが、こういった投稿はもちろん違法な行為です。
以前の記事(http://jijico.mbp-japan.com/2014/10/12/articles12693.html)でも書きましたが、人間誰もが「肖像権」という権利を有しています。正当な理由もないのに他人から無断で自分の容姿を撮影されることやその写真を許可なくインターネット上に掲載されることは、肖像権侵害になる可能性が高いといえます。言うまでもありませんが、「頭髪が薄いこと」は「正当な理由」にはなりません。
この肖像権侵害に対しては、民事上の損害賠償の対象になります。つまり、裁判を起こされると撮影者(投稿者)は敗訴するということになります。
刑事責任を問われるリスクも含んでいる
また、こうした投稿は民事上の問題にとどまらず、刑事責任を問われるリスクも含んでいます。投稿の内容にもよりますが、他人を盗撮してSNS等のインターネットに写真を載せて嘲笑するような行為は、刑法上の侮辱罪(刑法231条)、場合によっては名誉毀損罪(刑法230条1項)が成立する余地はあります。
「その程度のことで警察が動かないのでは」という見方もありますが、客観的に犯罪が成立している状況があるのであれば、警察は動くべきだと個人的には考えます。しかし、民事においても刑事においても最も難しい問題は、「盗撮された本人が気づかないことが多い」ということだと思います。本人が気づいていない以上、民事裁判を提起することもできませんし、もし侮辱罪等が成立する余地があったとしても、告訴ができませんので刑事裁判は行えません(侮辱罪や名誉毀損罪は「親告罪」といって、被害者が告訴をしなければ公訴提起ができないことになっています)。結局のところ、法律上の責任を追及されるケースは稀だと言わざるを得ません。
各人のモラルの問題である
結局、こういった問題は法律云々という話もさることながら、それ以前に各人のモラルの問題であると思います。知らない人から知らないうちに無断で、しかも嘲笑する目的で写真を撮られて傷つかない人はいません。「自分がされたらどう思うか?」といった問いかけを行えば、こういったつまらない行為は無くなるはずです。きれいごとだと思われるかもしれませんが、私は本気でそう思います。
また、こうした投稿を見て投稿者と一緒になって面白がっている人も同じです。ただ、大多数の人は投稿を見た場合、投稿者自身の人格を疑うのではないでしょうか。投稿を行っている人は、投稿するたびに「自分で自分の名誉を毀損している」ということに早く気づいて欲しいと思います。
(河野 晃/弁護士)
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