辞職ドミノが続く富山市議会 政務活動費問題はなぜなくならない
JIJICO / 2016年10月19日 15時0分
辞職ドミノが続く富山市議会 政務活動費問題はなぜなくならない
富山で政務活動費の不正受給が次々と発覚
富山市議会で政務活動費の不正受給が発覚して議員が次々と辞職する異常事態となっています。
定数40人のうち、これまで自民党会派10人、民進党系会派2人の計12人が辞職し、11月6日に補選が行われることに。
ただ、まだ辞職には至っていないものの不正を認めている議員も数人います。
実際のところ、当選したての新人議員4人も関与していたり、先輩議員から教えてもらったという話も出ていることから、会派内で申し送られていた可能性があり、今後マスコミや市民が関係資料を情報公開で入手して検討している中でさらに発覚する可能性があります。
なお、これまで逮捕された議員はおらず、捜査状況は不明ですが、10月6日には、富山市が最初に発覚した元議長とこれに協力していた元議員を有印私文書偽造の罪で告発しました。
速やかに告発することを優先し詐欺罪は見送ったということです。
発覚の経緯と実情
何故富山県でこのようなことが起こったのか。
そもそもは、6月に富山市議会がそれまで月額60万円であった報酬を70万円に増額する条例改正案を提案し、これに市民が猛反発する中で強行採決したことで、市民・マスコミが反発しました。
そして、議員の政務活動費の支出報告書や領収書を情報公開請求してチェックを始めました。
ちょうど7月に富山県議会の副議長が領収書を偽造して高額な書籍を買ったことにして政活費460万円を不正に受け取ったことがマスコミの調査で明らかになり、富山市議に対しても厳しいチェック(ほぼ全件裏取り)が行われ、自民党会派会長の不正が発覚し、その後も調査が進むなかで芋づる式に不正が発覚してきたものです。
不正の背景
この背景としては、一旦支払われて余ったら返還する前渡し後清算方式だったため返還を免れたいという議員の使い切り願望がありました。
そして、支出報告書の記載が不十分で、チェックも十分行われていないという会派による管理手続きの緩さもあります。
また、市議会の基準では市政報告会のための資料の印刷代や1人500円までのお茶・お菓子代が認められており、実質は後援会集会なのに「市政報告会」と銘打てば政務活動費による支出が認められ等の支出基準の緩さが、議員の感覚を麻痺させたこともあると考えられます。
法律では、自治体の事務に関する調査研究のための費用とされているのに(地方自治法100条)、充てることができる経費の範囲を条例で定めることができるため、自らに甘い基準としたのです。
しかし、新人候補と現職議員を比較すると、税金で現職に大きな補助を与えることになり、選挙の公正・公平を害することになりかねません。
富山だけの問題なのか?再発防止策は?
これらの事情は全国で共通しており、実際に徳島県、奈良県でも同様の事件が発覚しています。
今後富山市で行われたような市民・報道機関による領収書の裏取り調査が行われると全国に飛び火する可能性は高いと見られます。
このような不正を防ぐためにはどうしたらいいでしょうか?
行われている行為は一般企業での経費の不正や脱税と極めて似ています。
したがって、まず、手続きを適正化することです。
誘惑に駆られやすい前払後返還清算方式を後払い方式に改める、調査報告書に調査・研究の目的事務、関連性、成果に対する評価等具体的な記載がある場合にだけ支出することが考えられます。
これらにより不必要な視察旅行などの調査費用の減少も期待できます。
また、支出基準を厳格にすることです。
後援会活動と境目が曖昧な政務報告会や政務報告書・議員ニュースの印刷・郵送代を認めない、酒代が混入したり、実質的には後援会の集会であるような個人開催の政務報告会の費用も認めなくすることが必要です。
さらに、精算時のチェックを厳格化し、その責任体制を明確化する必要があります。
そして、支出報告書、領収書、帳簿類をネット上で公開し、有権者が誰でも、いつでも、どこでも監視できるようにすべきです。
同一の領収書のコピーと原本で2度請求した事例もありましたので、このようなことをチェックし易くするために、検索、並べ替えのできるデータで有権者に提供する方法も有効です。
(青島 明生/弁護士)
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